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??? 少し先の話

なんとなく急に書きたくなった、ちょっと先の話になります。



一部過激な描写がございます。

苦手な方は観覧注意です。

二体の死体が転がっていた。

辺りは激しい戦闘を物語るように、地形が変わるほど荒廃している。

その場に立つ者が一人、闇の騎兵ドヴォールは肩を大きく上下させ息を荒げていた。


「つったく…クソがッ、なんなんだお前らはよぉ…ペッ」


殆ど血の唾を、死体となりはてたエージに吐き掛け悪態をつく。

先ほどまでのエージ及び、六聖人シエセッタとの連戦を勝利したものの、満身創痍といった様子だった。

宝物庫から無理して持ち出した禁器のおかげで勝てたこと、ドヴォールも理解している。

更にエージの執念ともいえる猛攻に恐怖したことも自覚していた。

禁器の利用したことで自分に降りかかるであろう、死よりも恐ろしい罰と六聖人に勝てたという興奮と、格下に手間取られたという怒りと焦り。

全ての感情がグルグルかきまざる。


あのエージとかいう野郎の死体をグチャグチャにしてやりてぇ。

そうじゃないとこの興奮は収まらない。

しかし、エージは連れて帰るよう命令を受けている。

例え死体になっていたとしても。

その上で、死体の損傷が激しいとなれば、更なるお咎めがあるかもしれない。


「あーーーーー!糞めんどくせぇ!!!」


ガシガシと頭をかいてから、項垂れる。

諦めるよう大きくため息をつくと、少しは頭が覚めた。


「まぁいいさ、勝ったのは俺なんだからよぉ、誰が何と言おうと」


エージの片足を掴むと、ズルズルと引きずりその場を後にしようとする。


こいつはこの場で俺の手で、挽肉にしてやりてぇが、持って帰った後は、もっとやべぇことになるだろう。

実験、実験、実験が待っているはずだ。

死体のほうがましと思えるほどの糞みてぇな実験されるに違いない。


「ギャッハッハッハ、うちのせんせー達は気がくるってるからよぉ、何されっかわからねぇけどよぉ!目ぇつけられた自分を恨むことだなぁ!」


そう吐き捨てたあと、ドヴォールは悪寒と共に足を止めざるをえなくなる。

言い知れぬ恐怖に襲われ、小刻みに震え、全身から汗が噴き出る。


「それは、ダメだよー」


落ち着いた、大人のおっとりとした女性の声。

まさか、そんなまさか。

あるはずがない、だって奴はつい先ほど、自分がこの手にかけたはず。

背後で何者かの動く音。

禁器槍ガンギガガルーガに腹部を貫かれ、胸部に穴の開いたシエセッタが立っていた。


「お前は確かに俺が殺したはず…心臓をこの手で潰した…」


「あらあら、一回死んだくらいで死ねると思ってるなんて、幸せな子ねー」


言葉を発する度、鮮血が滝のように流れている。


「ガンギガガルーガで能力もオーラも封じられているはずなのにどうし…!?」


言い終える前に、ドヴォールは槍で防御の構えを取っていた。


ガンッッ


鈍い音が鳴り、砕け散る黒い槍。

飛び散る槍の破片と共に、ドヴォールは吹き飛ばされていた。

シエセッタが一瞬のうちに距離をつめて、メイスを振りかぶったのだ。


「…?……??」


地面に転がされたドヴォールは薄れる意識と共に、自分の身に起こっていることに戸惑っていた。


「オーラなんてなくてもこの位、簡単なことなのよー?」


シエセッタは腹部に突き刺さった魔槍に手をかけると、ズルっと引き抜いた。


「この槍、ガンギガガルーガって言うんだー、禁器は久しぶりにみたなー」


開いた穴から血と内臓が零れ落ちる。

地面についた内臓を引きずりながら、シエセッタはドヴォールの元へと近づいていく。

ガンギガガルーガを振り上げると、それを振り下ろしドヴォール腰辺りから突き刺す。


「グッ!!」


衝撃と激痛。

そしてオーラを根こそぎ奪い取られる消失感。

肉体強化が強制解除される。


「ゴホッ」


喉を上がってきた血を吐き出す。

全身の虚脱感、自分で喰らってわかる禁器の力は本物。

なのに、奴はものともせず襲ってきた。


「く…そ…死んだはずだろ…化け物め…」


「私は聖職者。生も死も思い通り」


シエセッタはエージの元へと歩み寄っていく。


「エージ君もね、みんなの『指導』中にね、何度も何度も壊れてるの。でもその度に私が直してあげたの」


シエセッタはエージの頬を指で突く。


「このなに簡単に死んじゃうなんて、まだまだ『指導』が必要みたい」

「でも…さっきのエージ君…かっこよかった…、私が死んだことに感情的になって、ボロボロになりながら死ぬまで戦ってくれた」


シエセッタは顔を両手で覆う、その下には恍惚の表情を浮かべている。


「あぁ…可愛かった…可愛い…可愛いなぁエージ君、私のこと好きなのかな?どうしよう聖職者なのに困っちゃう」


身体をくねらせながら悶える。


「やだ…私ったら、そろそろ起こさないとエージ君、生き返らなくなっちゃう」


ハッとして、腕を上げて指を構える。


「でも…、起こしちゃうと…、もう私だけのエージ君じゃなくなっちゃう。エージ君たら良い子だから、みんなに人気なのよね…」


独り語りを始めたシエセッタ、その瞳の焦点はそこにあらず虚空を見ている。


「あの娘も、あの娘も、あの女もあいつも…みんなエージ君に色目を使って…いやらしい、汚らわしい奴等」


そのシエセッタはおっとりとした口調からかけ離れ、声色も重い。


「ならいっそ…このまま死体のままでもいいっかな…死体ならあいつらも近づいてこないだろうし、そうすればずっと二人きりでいられる」


エージの死体を抱きしめるシエセッタ。


「どこか、遠くの誰も、何もいないところでずーっと二人で静かにいられる」


その光景を朦朧とする意識の中でドヴォールは眺めていた。

とんでもない変態だ…、だがしかし、実力は本物だ。

俺じゃ手も足もでない、このままでは禁器まで持ち出したのに任務達成どころか、命もない。

絶望がドヴォールを襲うなか、ふいに視界に何かが映ったかのように見えた。

一閃。

シエセッタの上半身と下半身がお別れする。

長槍を持った長身の男がそこに立っていた。

突如現れたその男によって、シエセッタは切り裂かれた。


「あら…?貴方は」


鮮血と共に宙を舞う上半身の彼女が言う。


「お久しぶりですね…ヴァシンさん」


「あぁ、久しいなシエセッタ」


パチンッ


指を鳴らすと光り輝き、瞬時に上半身と下半身がくっついて開いていた穴までも完全回復するシエセッタ。


「教え子が世話になった」


「えぇ、本当にです。教え子の手綱はしっかり握っておいてもらわないと困りますわ。禁器を持ち出すなんて、ルール違反では?」


「六聖のお前が手を下している、それでお相子ではないか?」


「私の可愛い…いえ、私たちの教え子が禁器によってピンチでしたので致し方なくです」


「わかった、ならこれで手打ちにしてくれないか?」


ザンッ


ヴァシンは自分の槍の一振りで、自らの左腕を切り落とした。


パチンッ


シエセッタが指を鳴らす。

ヴァシンの左腕が地面に付く前に、再びヴァシンの身体とくっついていた。


「要りません、そんなもの。それに、ロウさんに私が怒られます。あの方、貴方との再戦を熱望されてますから。もう結構です、今回の件はお互いなかったことに」


「すまんな、その槍はくれてやるから、売ってその坊主との宿代にでもしてくれ」


「なっ…なんてことを、私は聖職者ですよ!」


シエセッタは顔を真っ赤にして否定したが、その瞬間にヴァシンはドヴォールを脇に抱えると遠ざかっていった。


「もうっ…、変なこと想像してしまったじゃない…あ…」


大事なことを思い出したように、シエセッタは声を漏らすと、再び指を鳴らした。


パチンッ


「ん…」


地面に転がっていたエージの死体だったものがピクりと動く。

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