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森、攻略開始 その1

森の攻略を開始するべく、準備を始めた。

当初の目的である600レベルにはまだまだ程遠いものの、行動を開始したのには理由がある。

まず第一に、食料問題。

冷凍貯蔵庫に蓄えられていた食料が少々心もとなくなってきたのだ。

節約して1ヵ月程。

しかし食事を節約しながらの修行は身体のほうがどんどん貧弱になってしまう。

森を抜ける期間に必要な食料のことも考えると、もうあまり余裕がない。

食料補充を含めた探索を開始するには少し遅すぎた位かもしれない。


第二に、再び成長速度に鈍りが見えていること。

魔物と直接対決をして、倒してそのオーラを得るようになり一時的に成長速度が上がった。

しかし、それを始めた段階でこちらが一回り上のレベル差があった。

格上から得たオーラによる成長幅は大きかったが、その逆は成長幅が狭いのは然り。

もはや、この環境で独自の修行の限界を感じている。


最後に、実戦で得た結果。

現在俺のライフレベルは380だが、森の魔物達が確認している範囲で280から320の間。

レベル差が100から60程度だが、この差が当初想定していたよりも大きいようだ。

繰り返しになってしまうが、以前セレスティが65レべル差を赤ん坊と大人位の差があると言った。

赤ん坊が10人集まっても100人集まっても大人には勝てない。

そこを考慮すると、現在でも余裕の踏破が可能かもしれないし、すくなくとも当初の目的の600レベルが大きな的外れだったと軌道修正せざるを得ない。


勿論、確認できた魔物は屋敷から俺の探知魔法『ソナー』で見つけられたものに限られる。

その為、もっと格上の魔物が居る可能性は十分にある。

だが、もう架空の想定に備えられる期間は過ぎてしまった。

一歩ずつ着実に、森を踏破する準備をする必要がある。


屋敷のある一室、衣装部屋兼武器庫で品定めをしていた。

今まで、転生した時に着ていた布地の何の変哲もない服を上下着ていたが、度重なる修行の中でボロボロになっていた。

流石に森の中を素肌を晒して歩き回るのはまずいだろう、ということで装備を整えたいという次第だ。

クローゼットに並んでいる衣装は数えるほどだった。

冒険用と思える重装、軽装な防具。

農作業等の作業用の作業服。

私服は数着しかなく、派手なものはなく、女性だったにしては飾り気が無い。

その中でとても印象的なのは、俗に言う白衣が一枚。

この世界にもあるんだな白衣、家主は研究者か医者の類だったのだろう。

屋敷にある数々の結界等の便利装置も彼女の発明品なのだろう。

多分とんでもない天才だったのは間違いなく、彼女の発明品が悪の組織に悪用されないように、この森で隠遁していた。

等と浅はかな思いを巡らせた。

軽装な防具を装着すると、少しだけ窮屈であったが着れなくはなかった。

あれだけ身体を鍛えたのに、女性ものの装飾品を身に着けることができたというのはちょっとだけショックだった。

転生前が運動の「う」の字もない、陽の光も浴びない不健康ガリガリもやしがコンプレックスだったというのは無関係。

この転生後の身体付き及び顔立ちは一見すると男とも女とも判断し難い中性的なものだった。

男らしい筋骨隆々が良かったかと聞かれれば、難しいものの憧れがないわけではない。

しかし今は、元家主の装備を流用できるのがありがたい。

この防具、軽装に見えてかなり性能が高い。

防御力もそこそこ高く、オーラ伝達力・回復力増強等バフに加えて防火、耐熱、対状態異常耐性も各種備わっている。

見た目もスタイリッシュでかっこよい。


服装以上に充実しているのが、武器だった。

壁一面に飾られている武器は、種類だけで10種類ある。

剣だけをとってみても短剣、片手剣、両手剣、双剣といった具合に多様にある。

ここの家主だった者は、これらバリエーション豊かな武器の単なるコレクターだったのか?

それともこれら全てを使いこなすウェポンマスターだったのか。

家主不在の現在、その答えはわからない。

武器の存在理由はわからないが、一本一本が相当な業物なのは『アナライズ』でわかった。

攻撃力、耐久性、オーラ伝達力、軽量、付与スキル等々。

だけど、一番驚かされたのが携帯性だ。

これらの武器は、任意で小型化され専用の腰巻…つまりベルトに装着される。

どういうことかというと、お土産物屋で売っている謎の武器のアクセサリーのような姿に変化した状態で持ち運びできるのだ、しかも複数…最大10本程。

使いたいときは手に取り、一定量の魔力を流し込めば元のサイズに戻る。

使い終わったら、ベルトにあてた状態で一定量の魔力を流せば携帯サイズに小さくなる。

ファンタジーでは当たり前の謎技術なのかと思ったら、セレスティ曰くこの世界でも規格外のものとのことだった。

こんな便利なものを用意してくれた元家主には改めて感謝である。

とはいえ、強力な武器達を何十本と携帯できるとは言っても、俺は武器の扱いは素人だ。

付け焼刃で扱っても逆に邪魔なだけだろう。

戦闘は予定通り、魔法行使を主軸に行って行くつもりだ。

魔法使いと言えばやはり杖。

杖には、魔法行使の補助的な効果を持つものが多い。

ここにある杖もそうだ、この世界で他の杖を見たことがなくてもわかる。

威力上昇に魔法行使速度の上昇や、オーラ消耗を抑える効果、魔法の多数ストック等々。

一番気になった杖は、威力向上・消費量減少・発動時間共に10%上昇な上に軽くて丈夫、ある程度の攻撃なら受け止めつつ逆に殴る用途も可能そうだ。

これをメインに、予備として他に2本の杖で合計3本の杖を借りることにした。

後は先々のことを考えて、他の武器種も各1本ずつ拝借する。

超近接戦闘になった場合、短剣を突き刺すくらいは素人でもできるし、斧があれば邪魔な木々を切り倒すことも出来るだろう。

小型化できるので持っていても邪魔にならないし、備えあれば憂いなしともいうしね。


服、武器とは別にもう一つ、白い手袋があったのでこちらもお借りする。

この手袋は、丈夫な上にオーラの伝達と増幅力が高い。

これに、『マジックバリア』の魔法を展開できるようプログラムを付与することができた。

かざしてオーラを込めればすぐさま魔法による防御壁を張ることができる。

咄嗟の事態で身を守る、盾の代わりのようなものだ。


手直しを終えた装備を身にまとう。

装備バフで一回り強くなった。


「家主さんお借りいたします。必ずお返しします」


深々と頭を下げて、部屋の扉を閉めた。


二日分の食料を持って、森探索の初回を開始した。

目的は勿論この森から一番近くの『スターグランド王国』に向かうことだが、実はどちらに向かえばよいかわかってはいなかった。

王国がどちらの方角にあるのかもわからない上に、方角そのものを特定できない。

太陽と月、のようなものは存在するがそれが元居た世界と同じく東から登って西に沈んでいくわけではない。

つまり王国側に向かうも、離れるも一か八かである。

動かなくても詰み、動いても真逆に進んでいたら詰み。

この状況、最初にしては難易度が高すぎる。

が、嘆いていても仕方ない。

もはや進んでいくしかないのだ。


『ソナー』を展開しながら、魔物の位置を確認しつつ発見次第、できるだけ避けながら進む。

避けられない場合のみやむなく応戦。

今も、前方に多数の魔物を発見し、間を抜けることは難しく、遠回りをするには距離もあるということで戦うことにした。

ベルトに携帯している杖を掴み魔力を流す、通常サイズに戻す。

倒さないといけない魔物は4体、それぞれ312レベル、305レベル、298レベル、322レベル。

『マジックランス』

空中に4本の細長いドリル状の魔法を構築する。

それぞれ対象の弱点属性をしている。

同時に発射された魔法の槍は高速回転しながら、木々の間を縫うように高速で飛行していく。

各槍は目標に同時に着弾。

うち3体は狙い通り急所を貫き一瞬で絶命、しかし322レベルの魔物だけは直前で気付き、僅か動き急所を避けていた。

絶命を間逃れたのもつかの間、貫通した槍は空中で回転し再度目標に向かって飛来。

既に死に際の魔物にこれを避ける力は残っておらず、直撃を受けとどめを刺された。


魔物4体分のオーラが英史に吸収されていく。

新しい装備の効果は思った以上だった。

4体もの魔物を遠距離から一方的に倒せる火力を瞬時に出せる上に、消耗は最小限。

このやり方で進んでいけば、森を踏破するのも遠からずかもしれない。

そう思ったのもつかの間。

木々の揺れる音と共に、視界の端で何かが飛び出した。

勿論、それは魔物だった。

鋭い爪を脳天めがけて突き出してくる。

直撃する前に、魔物の爪はとまった魔法の障壁によって。

手袋に付与したバリア発生機能を使って、バリアを発生させたのだ。

バリアを押し破ろうとする魔物の上空からマジックランスが複数本撃ち込まれる。

撃ちぬかれた魔物は抵抗する力を無くし、その場に崩れ落ちる。

魔物のレベルは345、森の魔物の最高レベルを更新する。

しかも、戦闘中も常時発している『ソナー』に感知されない魔物だった。

今度は『ソナー』が反応し危険を知らせる。

咄嗟にバリアを展開させる。

バリアに防がれて眩い閃光が辺りを照らす。

かなりのオーラ量による攻撃だ。

バリアの出力を上げて防ぎきる。

それと同時に敵の位置を把握。

大分先の方に植物型の魔物が、大口を開けてオーラを放っている。

遠距離砲撃型の魔物のようだ。

レベルは355、また最高記録更新だ。

左手でバリアを展開し攻撃を防ぎながら、右手の杖を魔物に向ける。

杖にストックしている魔法の使用選択。

多めにオーラを杖に供給して、発射。

杖の先端から放出されたレーザー光線のような魔法『オーラブラスト』は一直線に魔物へと向かっていく。

レーザー光線に貫かれた魔物は、ボッという音と共に小さく爆発。

還元されたオーラが英史に吸収されていく。


ステルス型の魔物に、遠距離砲撃タイプの魔物。

まだまだいろんなタイプのが居るかもしれない。

これは、森攻略は生易しくないもしれないと思い知らされるには短すぎる時間だった。

ここまでご視聴、本当にありがとうございました。

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