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第13機動部隊 プログレッサー  作者: 藤沢マサト
第一章 終わりの見えぬ戦い
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第6話 スプリンター隊強襲

 5月20日、連合国軍の第7機甲小隊、通称“スプリンター”は、女性のみで構成された部隊である。

リーダーのマリー・フォルトは、快活な性格でメタルユニットの操縦技量もかなりのものである。

それ故に、彼女は他の兵士からも信頼されているのだ。

今回、彼女が指揮を執る作戦では、無人戦闘機“スピルド”の大編隊を囮にして、共和国軍が戦闘機部隊を相手にしている隙に第4補給基地を叩くという大胆不敵なことをするという。


「マリー少尉、今回も成功するといいですね」


不安気な表情の彼女の名は、キャロル・メディス。

彼女はかなりの心配性であり、いつ自分が死ぬか怯えながらいつも戦闘を行っている。

そのため、マリーからはよく励まされることが多い。


「そうね。でも、キャロル……。ビクビクしているようでは出来

ることも上手くいかなくなるわ。

もっと前向きに事を考えなきゃね」

「はい…」

「キャロル准尉、怖いのは分かりますけど、そんな心情では困りますよ」


キャロルの不安そうな表情に呆れる彼女は、リノ・スージィ。彼女は男勝りな性格で、戦闘ではマリーも一目置くほどの活躍を見せたこともある。


「あの、今回は陣形はどうするのです?」


上品そうな面持ちで話すのは、ライナ・パラム。

彼女は戦闘において陣形が最も大事だと考えている。


「陣形は菱型の陣形で行くつもりよ」

「そうですか。了解です」

「ひとまず、今回は無人戦闘機部隊と共和国の連中を戦わせている間に敵の基地を叩くのよ。

何としても成功させないとね……。実行は三日後よ」

「了解!」


こうして、スプリンター隊は作戦に向けて準備を行った。


 

 そして、5月23日。彼女達は共和国軍の第4補給基地へと駒を進めていく。


「スピルドは出撃したかしら?」


マリーは少し不安気な表情であった。


“はい。もう行きましたよ。現在は共和国軍と交戦一歩手前です”


キャロルは無人戦闘機が搭載しているメインカメラの映像を見て、今が攻撃の時だと確信する。


「ならいいわ。さぁ、行くわよ!」

“了解”


スプリンター隊を筆頭とする連合国軍の猛攻撃がついに始まった。

この攻撃に負けじと、共和国軍は必死に応戦する。


「この基地は何としても守ってみせる!」


両軍の兵士たちは機銃を使って攻撃を仕掛ける。

しかし、この戦いでは連合国軍側が圧倒的に有利であった。

それもそのはず、彼女達は自分たちの守りを疎かにすることなく、かなり重装備の状態で立ち向かっていたのだ。


「ビームの雨を浴びるといいわ!」


マリーはビームバズーカを連射し、敵機を次々に撃墜。

このことを受け、共和国軍の兵士の一人は救難信号を出したが、その直後に撃破されてしまった。


「私だって……、私だってマリー少尉みたいに戦って見せる!」


キャロルはビームライフルを用いて敵の動きを見極めて的確に一機ずつ仕留めていく。


「何という事だァ! アァァァッ!」


機体は爆砕し、破片が宙に漂う。


“マリー少尉! 早く基地を破壊しないと……”


焦燥に駆られるライナ。

彼女はどうにか涼し気な表情をしてその焦りを誤魔化す。


「分かっているわ。あと一歩で全滅よ!」

“分かりました……”


マリー達は再び元のフォーメーションになり、残った敵機を一瞬で殲滅した。

これにより、連合国軍は優位に立つ。


 

 一方、第1前線基地では戦死した兵士からの救難信号をキャッチして、偵察部隊は第4補給基地へと向かったが、時すでに遅し。基地はもう荒れ果てた廃墟のようになっていた。


「遅かったか……。もっと早くキャッチしていれば」


偵察兵の一人は、悔し涙を流した。

彼らの命はどうあがいても戻らない。

このことを受け、共和国軍長官ロジオン・ガードランは全ての補給基地及び前線基地の戦力強化を行うことを決意した。

この対策は翌日より決行し、共和国軍総出で基地の防衛施設の改装が行われた。

まず、無人MU含む機動部隊の増員や、AI搭載型砲台の再開発が行われ、今までにない改革となった。


 

 ロバート達も作業に参加し、彼らは兵器の部品組み立て作業に取り組んだ。

「これが自動で動くのか……。面白いねぇ」

カイルは、機械の組み立て作業は慣れていたので易々と組み終えてしまった。その時間は僅か10分程度である。


「早いなぁ、カイル。50個以上のパーツをすぐに組み立てるなんてさ……」


ロバートはその様子を見て思わず感心していた。


「大尉? 早いところ組み終えて下さいよ。パーツはまだかなりあるみたいですけど」

「分かったよ、ヘレン。いやぁ、つい手より口ばかり動かしちゃって……」


その後、ロバート達は黙々と回路を組み立て、20分かけてようやく完成させた。


「よし、これをキャノン砲の中に取り付ける。フランク、溶

接用プロテクターを持って来てくれ」

「いいですよ。はい、これですね……」


フランクは手元にあったプロテクターを差し出し、ロバートはそれを装着した。

この溶接用プロテクターは、厚めのアルミニウム合金で出来ており、当然ながら安全性に関しても万全なものとなっている。


「よし……、皆、ちょっと離れろよ」

「はい……」


三人は恐る恐るロバートの傍を離れて彼を見守った。


「これで繋ぎ止めて…、後は冷やすだけか」


すぐさま作業を終えて、安堵するロバート。


「冷却に関しては作業用ロボットがやるようです」


フランクは手引書を見ながら話す。


「え? じゃあ最初から機械任せにすべきじゃ……」

「いや、これらの作業は機械でも出来ますが、できるだけ人

間にやらせた方が節電になると上官の意向で……」


「そうなのか……。なら、仕方ないけど納得いかないな」


ロバートは不満そうな面持ちであった。



 一方、ストライカー隊は輸送物資の仕分け作業をしていた。コンテナから箱を出して、食料か部品か、それともその他の生活必需品か見分けていた。

彼らが手作業で仕分けているのも節電のためである。


「これは……、食料だな」


ルーガン達は仕分け作業を淡々と行う。


「おい、お前ら。今度はかなりのデカブツだぞ。仕分けるのは大変かもしれんが協力頼むぞ」

「は、はい…」


クローティスは思わず困惑した。そのコンテナの大きさに。


「これは大きいですね……。細かく見るのが難しいでしょうね」


リオもまた、その大きさ故に唖然としていた。


「とりあえず、リオも協力頼むぞ。エリナは普通のコンテナの仕分け作業を続けろ」

「はい、分かりました……」


その後、物資の仕分け作業は1時間弱にも渡ったという。


 

 それから翌々日のこと、スプリンター隊は新たな作戦を練っていた。それは、第4前線基地を襲撃するというものである。この作戦では、ナパームミサイルを使い基地や敵機の破壊を行うが、装備が一種類だけでは心細いと思い、両肩部にショルダーキャノンを装備することとなった。

この兵器は連射性能もよく、使い勝手もいい優れものである。


「これなら楽に敵を倒せそうですね」


キャロルもこの事に関しては安心していた。


「次の作戦も成功させたいものですね……」


リノは軽く頷いた。


「当然よ。でなければやる意味がないじゃない…。

あそこの基地にはイアン少佐が散々苦しんだロードブレイダーMk-Ⅱがいると聞いているわ。何としても撃墜させてやらなきゃ」

「そうですね。これからの事を見据えると、この作戦はターニングポイントになることでしょう」

ライナは胸の前で腕を組む。

「まぁ、少なくとも言ってることは間違いないわね。

さぁ、作戦も決まった所で準備に取りかかりましょう」

「了解!」


こうして、戦闘態勢が整えられることとなった。

彼女たちの思惑通りにいくのだろうか。


 

 さらに翌日、連合国軍の作戦決行の時は来た。

敵軍の接近を察知した共和国軍は、即座に戦闘態勢を整えて戦いに挑む。


「さぁ、どこからでもかかってこい!」


アモンは両手にビームキャノンを持った状態で部下を指揮し、敵機に流星のような光線を撃ち込んだ。これにより、最前面にいた敵の小隊を殲滅。

このまま勢いに乗って敵を全て撃墜できる。

そう思っていた矢先にスプリンター隊が攻めてきた。


「行くわよ、皆!」

“了解!!”


四人は半月状のフォーメーションでアモン達に攻撃を浴びせた。


「ジェノス、マギー、お前たちは守りに徹しろ! 俺とラディムが集中砲撃をする! 任せたぞ」

“分かりました、大佐!”


しかし、先程とは打って変わって連合国軍側が有利になり始め、共和国軍に暗雲が立ち込めた。


「機体が持たない……。アァァァッ!」


アモンの部下の一人が撃墜された。だが、彼の死に涙する暇など無い。それが戦場である。


「何としてもやってやる! ラディム、撃つぞ!」

“はいッ!”


二人の攻撃により、足止めを喰らったスプリンター隊。

このままではまずいと察知したマリーは、リノとライナにアモンとラディムを倒すように指示を出した。


「アタシ達だって……、アタシ達だってここで死ぬわけにはいかないのよ!」

“仰る通りです。私たちも負けてはいられないんですよ!”


二人は、ビームライフルとショルダーキャノンを併用して集中砲火を浴びせた。

この攻撃は思いの外激しく、アモンとラディムは焦燥に駆られた。

最早これは死への片道切符なのではと思ってしまう。

その時であった。一筋の稲妻のような光線が遠方から放たれたのは。


「何事ッ!? キャアァッ!!」


ライナはこの攻撃により左腕が破壊されてしまい、これ以上戦うと危険だと判断したのか、マリー達に撤収することを告げてそのまま去っていった。


「アタシ一人でもやって見せる! 落ちろ!」

彼女は攻撃を休めることは無かった。

しかし、彼女の元にロバートが接近し、集中砲火を浴びせる。


「アモン大佐達は俺が守る! 喰らえェッ!」


ロバートは二門のビームキャノンで光線を放つが、

リノはその攻撃をすぐに回避する。


「一発喰らいな!」


彼女は機銃を使ってビームを撃つ。


「何ィッ! くッ……」


何とか防いだものの、シールドはビームの熱で一部が溶けていた。

これを受け、ロバートは接近戦で切り返すことにした。


「これで……、斬るッ!」


リノの機体右腕部は切断され、撤収を余儀なくされた。


 一方、ストライカー隊は連合国軍の一個小隊を撃破し、プログレッサー隊と合流していた。

カイル、フランク、ヘレンの三人と共にスプリンター隊の取り巻きを次々に撃墜していく。

その最中で、ルーガンはキャロルと一戦交えることとなり、激しい撃ち合いを繰り広げる。


「落ちろッ!」


ルーガンはビームライフルで狙い撃とうとするが、あと一歩というところで避けられるという何ともじれったい状況であった。これを見たエリナは、援護射撃を行う。


“ルーガン少尉、私がお供します!

クローティスとリオは別の部隊と交戦中なので来れないようです。ですから、責めて私一人だけでも力になれれば幸いです”

「ありがとよ、エリナ!」


そして二対一となり、ストライカー隊側が優位に立つ。


「このままじゃ……、やられる!」


キャロルは敵に怯えながらも、こんな態度では部下に示しが付かないと泣きそうになりながら機銃を撃った。


「隙ありッ!」


ルーガンの放った光線はキャロルの機体に直撃し、彼女は死を恐れてか、仕方なく撤収した。


 

 時を同じくして、ロバートとマリーは接近戦を行っており、お互い一歩も譲らない状況下にあった。


「コイツ……、新型だからってェッ!」


マリーの叫びがコクピット内に響く。


「俺も負けちゃあいられないんだよ!」


ロバートの素早い斬撃をマリーはシールドで防ぐ。


“大尉! 俺たちも援護します!”


カイル達三人が駆け付け、ロバートは圧倒的に有利になった。フランクの正確な射撃能力、ヘレンの敵の動作の分析能力、カイルの空間把握能力。

この三人の利点が合わさったことで、その援護射撃は万全なものとなる。


「何て奴なの……。このままじゃ……」

「ミサイル発射!」


ロバートの機体肩部からミサイルが放たれた。

この攻撃でマリーのシールドは破壊される。


「もう防ぎようがないじゃない……。でも負けるわけにはいかないのよ!」

「これで……、斬るッ!」


彼の斬撃により、マリーは機体頭部を切断される。

これにより、彼女は撤収を余儀なくされた。

数分後、連合国軍は完全撤収し、共和国軍は雪辱を果たした。


 戦闘終了後、共和国軍は防衛強化のための基地改装を再開した。

厚い鉄板が作業用ガントレックによって運ばれ、それらは基地の壁として利用される。

作業兵達は汗水流しながら必死に溶接工事を行った。

この行動が報われることを信じて。





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