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第13機動部隊 プログレッサー  作者: 藤沢マサト
第一章 終わりの見えぬ戦い
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第5話 侵入者

 5月1日、この日はジュピトリア共和国の建国記念日であり、ドーム状の住居エリア内では一大パレードが開かれていた。

ロバート達は、マーチを演奏する吹奏楽団と共に行進をし、それを見て国民たちは歓喜していた。


「兵隊さんだ! ママ、僕も大きくなったら兵隊さんになるんだ!」

「そうねぇ、なれたらいいわね」


パレードを見ていた親子は、自分達の住む国を守る軍隊を笑顔で見送った。



 記念パレードが終わり、ロバート達はすっかり疲れた状態で夕食を食べに食堂へと向かった。


「しかし、今日のパレードは疲れましたね……。

何しろ住居区を一周したもんですから、足が棒になりそうなぐらい痛いですよ」


カイルは既に疲弊しきっていた。


「まぁ、仕方ないさ。明日はゆっくり休めるから英気を養おうか。とりあえず今日は早めに寝ようか」


ロバートは比較的前向きに考えようとしている。


「ヘレンとフランクはいいよなぁ。軍用トレーラー運転してただけなんだから」

「いや、そんなに楽じゃないですよ……。肩は凝るし、背中は痛くなって悪いことばかりですよ」

思わず溜息を吐くヘレン。

彼女はかなりストレスが溜まっていそうだった。


「ヘレンもそうなのか…。僕も体が痛むよ」


フランクは眠たそうな表情をしている。

もはや他の事をするための余力は残っていない。

その後、夕食を食べ終わった四人はすぐにシャワーを浴びてからすぐに寝たという。



 翌日、起床時間になってもなかなか起きてこないカイルを起こすため、ロバートが彼の部屋を訪れた。


「おい、カイル! もう起きろよ!」


カイルは扉を開ける。


「なんですか。もう起きてますよ」

「だったらなんで部屋から出てこなかったんだ?」


ロバートは首を傾げる。


「いや、なんか知らないんですけど…、急に地球にいる家族のことを思い出して…、いわゆるホームシックみたいなもんですかね…」


彼は頭の後ろを掻く。


「そうか。そういえば、お前妹がいるとか言ってたよな」

「はい。カレンのことですね。あいつ、ラジオが好きで…、俺が学生の頃はよくラジオを直してくれって言ってきて、何度も修理していくうちに、不思議と機械が好きになっていった…、というか興味を持ち始めたんですよ」


カイルは、どこか切なそうな面持ちであった。

もしかしたらもう会えなくなるのではと、彼は心の内で思うようになっていたのだ。


「それで機械好きになったんだな……、って、俺はお前の思い出話を聞きに来たんじゃないんだ。さあ、朝食を食べにいくぞ」

「はい……」


そして二人は食堂へと向かった。


 その後、二人はヘレンとフランクと合流し、四人で朝食を味わう。


「このライ麦パンうめぇなぁ……」


カイルは、パンをちぎってクリームシチューに少し浸して食べる。


「中尉、なんで今日は起きたのが遅かったんです?」


ヘレンは不思議そうな顔をしていた。


「色々あったんだ。あまりその事は問わないでやってくれよ……」

カイルの事を気遣うロバート。彼は微笑んで見せた。


「分かりました、大尉」

「それにしても、昨日のパレードでもし何者かの襲撃があったら、とんでもない事になっていたでしょう。でも、何事もなく最後までやり遂げられて良かったです」


フランクは、記念パレードの大成功に安堵していた。


「確かにそうですね。私も一般の方々が喜んでいるのを見て嬉しかったです。これから、戦争は激化していく一方でしょうし、何としてもあそこにいた子供達が銃を取るようなことはないように頑張りたいです」

「その意気だぜ、ヘレン! 俺も戦争を早いとこ終わらせて家族に会いたいんだ」


カイルの口は思わず綻んだ。


「そうですよね。自分も故郷に帰りたいです…」


フランクはどこか寂し気に語る。


「お前、確か火星生まれだったよな…。第三次大戦の時は大変だっただろうな…」

「えぇ。オリンピウスでは毎日のように反戦デモが行われては、軍がそのデモ隊を殺害していくのを見て、トラウマになりましたよ。父と母も戦争は嫌いでしたが、大っぴらに口にはしていませんでしたね」

「そうだったのか…。まぁ、これ以上犠牲者が出る前に戦いを終わらせないとな…」


しっかりと強く拳を握るカイル。

その拳には、勇気と決意が握りしめられていた。


 一方、第8前線小隊・通称“レイダー”は第5補給基地襲撃計画を練っていた。今回の作戦では、ビームバズーカを一人一門ずつ用意して集中砲撃を行い、敵を殲滅していくというもの。

さらに、隊長のサロア・クレインは部下と意見交換をして作戦の強化を行った。


「今回は、背中にマウント出来るビームキャノンも装備してみては?」


提案者は、ミルドレッド・ゲイン。

彼は、今までの作戦でも成功の要因となる案を出してきた。

いわゆる天才肌である。


「他に何か案がある者はいないか?」

「はい。自分にいい考えがあります」


次に提案してきたのは、ジャン・パルサー。

彼は、巧妙な罠を仕掛けることが得意で、何人もの敵兵士を騙しては倒してきた。


「自分は、誘導機雷を設置すべきかと…。

あと、シールドは大型で分厚いものがあればそれを使いたいのですが…」

「いいだろう。その考えも悪くないな。まだいるか?」

「自分からも…、一つ…」


挙手をした兵士の名は、ロレント・ソラリス。

彼は遠距離戦に長けており、今までの戦いでも如何なる状況でも土壇場で勝ってみせた。


「何だ? 言ってみろ」

「自分は、敵軍基地に絨毯爆撃を仕掛けたいと思っております。前線部隊から爆撃機を調達し、それを用いて攻撃を浴びせようかと…」

「なるほど。いい考えだ。それと、作戦実行日は5日後だ。

それまでに爆撃部隊に協力要請をしておけ」

「了解です」

「では、まずは絨毯爆撃を行い基地の施設を破壊し、

次に誘導機雷を使って残った敵を誘爆させ、それでも全滅出来なければ、圧倒的火力に物を言わせて敵を潰す…、という作戦だ。異議は無いな?」


サロアは三人の表情を覗うが、誰も異議を唱えなかったので、この内容の作戦を実行することにした。


 そして五日後、作戦実行の日が来た。レイダー隊は第5補給基地を強襲する。


“緊急事態発生、緊急事態発生! 帝国軍の機動部隊が接近! 出撃せよ!”

「アモン大佐、行きましょう…」

「あぁ、仕方あるまい…。早く出るぞ!」


アモン率いるアタッカー隊は、即座に戦闘態勢を整えて出撃した。しかし、敵の攻撃は想像を絶するものであった。


「隊長! ファルコスの編隊が…」

“何だと…!?”


空中から、爆撃機ファルコスの集中爆撃が行われ、基地の施設は瞬く間に破壊されていった。

また、アモンの一部の部下もこの爆撃に巻き込まれて命を落とす。ファルコスに攻撃を仕掛ける前に第5補給基地は跡形もなく破壊され、残った部隊は第4前線基地に向かい、救難信号を出した。


 時を同じくして、第4前線基地にアモンが送った救難信号が届く。このことから、未曾有の事態が起こったと察知した通信兵達は、機動部隊を出撃させた。


「大尉、今回の作戦はどうします?」


カイルは焦燥に駆られながらも、どうにか落ち着こうとした。


“今回はV陣形で掃射を行って、隙が見えたら接近戦に持ち込むという作戦で行こう”

「了解!」


そして、四人は陣形を整えて敵に無数の光線を浴びせ、迫り来る敵を次々に撃墜していった。

この被害を受け、帝国軍はやむなく早々に一時撤退する。



 その後、第4前線基地に到着したアモン達は、上官のエドワードに事情を話した。

今回の絨毯爆撃作戦での被害や、補給基地から身を引かなければならなかったことなどのことについて伝え、エドワードはアタッカー隊を一時的にこの前線基地に迎え入れることを決意する。


「あなたは…、アモン大佐!」

「そういうお前は、噂のエースパイロットのロバートじゃないか…。腕前はピカイチなんだってな。

お前の話は聞いてるよ」


そのことを聞き、ロバートはあまりの嬉しさ故に胸が熱くなった。


「それは嬉しいですね…。でも、大佐…。第5補給基地が全滅したって本当ですか?」

「そうじゃなかったら、ここにはおらんよ。

そうだ! 次の作戦では俺と手を組まねぇか?

いい考えがあるんだよ。上官の許可が通ったらまた知らせるからな」


アモンは自分の守るべき基地を失ったにも関わらず、ロバートに元気そうにサムズアップをして見せた。この明るさは、あくまで装いだけなのだろうか。



 翌日、帝国軍のレイダー隊は敗走した敵兵士達を逃したことを後悔していた。

サロアは、自分の愚かさに嘆いていたのだ。


「基地を破壊しただけで満足するとは…。

俺は何て無能なんだ…。しかも用意した兵器を持て余すとは…。全く情けない」

「サロア中尉、昨日のことをかなり気にしているようですが…」


彼のそばにジャンが近寄る。


「うるさい…、ほっといてくれないか…。


次の作戦案を思いつくまで来ないでくれ」


「は、はい…」


そして、気まずそうにジャンは立ち去った。



 時を同じくして、共和国軍第4前線基地ではアモンがエドワードに対し、自ら練った作戦の案について話していた。結果的にはその案は承認され、微笑みながら会議室を後にしたアモン。

このことをすぐさまロバートに報告した。


「よぉ、ロバート」

「大佐、もしかして案が通ったんですか?」

「おぉ、勘がいいな。その通りだよ。でも、実行できるのは三日後だからな…。

その前に帝国の連中が来たらお陀仏だぜ」


アモンは喜びながらも、ほんの少しだけ不満そうにも見えた。


「とりあえず、作戦内容については明日になったらお前らに教えるつもりだ」

「わかりました」


ロバートは彼に対し敬礼をした。



 さらに翌日、アモンによって前線基地奇襲作戦の全貌が語られる。


「今回の作戦では、この帝国軍の第5前線基地を狙う!

何故ここがターゲットになったかというと、以前我が軍の諜報部隊が調べた結果、ここでは新型機の開発がされているということが分かったからだ。そこでだ! 今回はこの第5前線基地に攻撃を仕掛けてそこの格納庫から新型機の開発データを盗むというわけだ」


それを聞いた部下達は思わずざわついた。

それもそのはず、今回の作戦があまりにも大胆なものであったからだ。


「隊長…、いくらなんでもそれって…」

「まぁ、俺もリスクは高いと十分知った上でこの案を考えた。

だから、今回は出来るだけ重武装で敵に立ち向かうことにしたんだ」

「でも、それで駄目だったら…」

「あぁ、もし失敗したらそれ相応の罰は受けると覚悟してるさ」


アモンは自らの身を投げ捨ててまでこの作戦を遂行しようとしていたのだ。

彼の態度を知り、部下達も覚悟を決めた。


「とりあえず、陣形は半月状で集中砲火を浴びせて、無人戦闘機部隊に空中の敵を仕留めさせるつもりでいる。俺の案に何か付け足したい者はいないか?」


しかし、異議を唱える者は誰一人もおらず、作戦は二日後に行われることとなる。



 そして、5月11日。ついに作戦は決行される時は来たのだ。

共和国軍の各部隊は、既に準備を終えており、いつでも出撃できる状態となっていた。


“アモン大佐! 自分を含めた全員は覚悟はできております!”

「なら大丈夫だな。では、行くとするか!」


延べ約100機にも及ぶ強襲部隊は、帝国軍第5前線基地へと駒を進めるのだった。



 帝国軍は、共和国軍の大部隊がこちらに向かっているのを察知し、すぐさま機動部隊を出撃させた。ついに、決戦の時は来たのだ。


「全員集中砲火開始ィッ!」

“了解!”


共和国軍の猛攻撃が開始された。

この攻撃により、帝国軍の機動部隊は次々に撃墜されていった。

爆風と共に多くの戦士たちが命を散らしていく。

それは、共和国側も例外ではなかった。


“大佐ァァッ!!”


叫びと共に、機体は爆発四散。それは、一瞬の出来事である。

犠牲となった兵士達の思いを一身に受けたかのように、ロバートは激しい攻撃を繰り出す。


「これで…、斬るッ!!」

「あぁっ、そんな…」


グライズは真っ二つにされて一瞬で宇宙の塵となった。


「ビームキャノンを使うか…。フランク、ヘレン、カイル! 援護射撃頼むぞ!」

“任せて下さい!”


三人は後方から光線を放ち、ロバートを狙う敵を撃墜していく。

部下の活躍に負けじと、ロバートも両手に持ったビームキャノンで敵を片付けていった。

しかし、彼のもとに恐るべき敵が近づく。

その正体は、サロアである。


「落ちろ、Mk-Ⅱめェェッ!!」


彼はビームライフルを乱射し、ロバートを倒そうと試みる。


「何て奴だ…」


ここで、思いもよらない事態が発生する。

何と、ジャンが仕掛けた誘導機雷がロバート達の元に接近してきたのだ。


「機雷だと!? 仕方ない…。コイツを片付けるか…」


ロバートが機雷を破壊している隙に、レイダー隊のロレントはスナイパーライフルで光線を放つ。


「落としてやる!」


しかし、その一撃はひらりと避けられてしまう。

もう一発、もう一発と放っていくが、なかなか当たらない。

さらに、ロレントに追い打ちをかけるように、ルーガンに返り討ちに遭った。


「ロバート大尉の邪魔はさせませんよ!」


ロレントは想定外のことに頭が真っ白になる。

気付かぬままに機体右腕部を切断され、そのまま撤収を余儀なくされた。



 一方、ミルドレッドはジャンと共にカイル、フランク、ヘレンの三人と銃撃戦を行っていた。

だが、この戦いではミルドレッド達が有利な状況下にあった。


「俺たちの勝利はもう見えている。死ぬが良い!」


ミルドレッドは光線を放つが、カイルはすぐさまこれを回避する。


「いくら一人一人が強くたって、数には勝てっこないぜ!


フランク、お前は接近戦をして、ヘレンは中距離攻撃で撃墜してやれ!」


“了解!”


そして二人は、ジャンを挟撃する。


「私の攻撃を味わうといいわ!」


ビームライフルを連射するヘレン。彼女の眼は闘志に燃えていた。


「一気に…、斬りかかる!」


フランクの素早い斬撃で機体頭部を破壊されたジャンは、そのまま自軍基地へと敗走。

カイルはビームライフルでミルドレッドを狙い撃とうとするが、なかなか攻撃を直撃させられない。

じれったさを覚えたカイルは、ついに彼に急接近する。


「近づいたほうが確実に倒せる! 喰らえェッ!」


この攻撃は、ミルドレッドの機体胸部に大きな傷を負わせた。

これにより、残るレイダー隊のメンバーはサロアだけとなった。



 時を同じくして、ロバートとサロアは接近戦でお互いに斬りつけ合っていた。

しかし、戦況的にはロバートが有利であった。


「シールドまで破壊されたら…、防ぎようがないが、負けたりなどはしない!!」

「コイツ…、やるな…。指揮官機だけあって強い…」


敵の剣の刃を何とかシールドで受け止めるロバート。

彼の精神は少しずつ削れていった。


「死ねェッ!」

「させるかッ!」


ロバートは、咄嗟にビームキャノンを背面から取り出して渾身の一撃を放った。

これにより、サロアのスケイラスは大破。


「くそぉ! 脱出するか…」


サロアは脱出せざるを得なくなった。


 そして、帝国軍の機体が残り少なくなった時に、アモンの部下の一人であるエストルは敵軍の新型機の部品データを盗み出し、作戦を成功させた。

ようやく、アモンは犠牲になった部下たちの雪辱を果たしたのだ。

こうして、今回の戦いは共和国軍の勝利となった。



 戦いが終わり、ロバートは今まで録画していたボクシングのテレビ中継に熱中していた。


「おぉっ、いいぞいいぞ! アッパーだ! もう少しだ!」

「ロバート大尉、入りますよ」


彼の部屋に、ヘレンが入ろうとしてきた。


「あっ…。 ん? どうしたヘレン…」

「もうすぐ夕食ですよ。食べに行きませんか?」

「そうか。分かった、行こうか」


そして、二人は夕食を食べに食堂へと足を運んだ。








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