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第13機動部隊 プログレッサー  作者: 藤沢マサト
第一章 終わりの見えぬ戦い
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第4話 ストライカー見参

 4月13日、この日には第4前線基地に新たな部隊が転属してきた。

彼らは第14機動部隊といい、通称“ストライカー”とも呼ばれる。

隊長のルーガン・ライジェスと他三名の隊員は、基地の入り口で待っていた上官に対し敬礼をした。


「自分が、第14機動部隊隊長、ルーガン・ライジェスであります! どうぞよろしくお願い致します!」

「よろしく頼むよ、ルーガン」


二人は、しっかりと握手を交わした。

その後、ストライカー隊は上官に連れられて基地内部の広い通路を歩いて行った。


「あいつらが今度転属してきたストライカー隊か」


兵士の一人は、通路を通るルーガン達をまじまじと見つめた。


「若いっていいなぁ。何せまだまだ未来があるんだもの」


熟練兵の一人は今の自分と若い彼らを比べながら自分自身のことを悲観する。


 

 そして、ミーティングルームへと来たストライカー隊はそこにいたプログレッサー隊に挨拶をした。


「はじめまして。自分はルーガン・ライジェスと申します。

階級は少尉です」

「俺はロバート・ライアン。階級は大尉だ。よろしく頼むよ」


ロバートは優しく穏やかな表情をして見せた。


「ルーガン! お前、隊長になってたのか」

「そういうお前は、フランクじゃないか! 士官学校時代以来だな」


フランクは、思わぬ再会に喜ぶ。

二人は、士官学校にいた頃は激しい首席争いをしたライバル同士であったが仲はかなり良い。


「ルーガン隊長、この方と知り合いなんですね」


興味深そうに彼を見つめる女性兵士の名は、エリナ・ディアンヌ。元々はイギリス出身であったが、木星移住計画に惹かれてジュピトリアに住むことを決意し、また、兵士募集のポスターを見たことをきっかけに共和国軍に入隊したのだ。


「もちろんそうだ。そうでなきゃここまで馴れ馴れしい口調になることはないだろう」


ルーガンはふっと笑って見せる。


「私はエリナ・ディアンヌと言います。階級は軍曹です。

どうぞよろしくお願いします」

「こちらこそよろしく」


フランクは敬礼をした。


「俺は……、もとい、自分はクローティス・ナカヤマと申します。よろしくお願いいたします……」


強張った表情の青年、クローティスは幼いころから軍隊に入ることを心に決めており、高校卒業時にジュピトリアへ移住し、その後共和国軍を目指して勉学に励み、ついに夢を掴むこととなった。


「よろしくな。俺はカイル・ロディオス。階級は中尉だ」


カイルは明るい笑顔でクローティスの緊張を和らげようとした。


「私は、リオ・サカハラです。よろしくお願いします」


彼女は元々電子機器について興味を持っていたが、そこから興じてメタルユニットの存在に惹かれてジュピトリアに移住し、軍に入ったのだ。


「こちらこそよろしくね。私はヘレン・スミスよ。よろしく頼むわ」


二人はお互いに微笑みながら、会釈を交わした。その後、プログレッサー隊とストライカー隊は自分たちの趣味や家族についてなど様々な話をしてお互いの親交関係を深めあった。


 

 両部隊がミーティングルームを去ってからも、フランクはルーガンと思い出話をしながら通路を歩いた。


「フランクって昔はここまでクールな奴だったっけ?」

「俺がクールに見える? 冗談言うなよルーガン……」


彼はふっと笑って誤魔化す。


「いや、昔より感情の起伏が無くなってるように見えるな」

「そうか?」


濃緑色の眼を鋭くして首を傾げるフランク。

彼は気づいていないが、知らず知らずのうちに戦いを経て人間らしさというべきか、感情の豊かさが擦り減っていたのだ。


「絶対そうだって。あんまり自分のことを押し殺してるとイエスマンになるだけだぞ」

「分かった。これからはなるべく自分らしさを押し出してみるか」

「じゃあ、また明日な」


ルーガンはフランクと別れて、個室へと向かった。


 

 その日の就寝時、ルーガンは眠れずにいた。

何故なら、自分がこれからも部下を守れるか心配であったからだ。彼は一人談話室で座り込む。

するとそこに、コップに飲料水を入れに来たロバートが通りかかる。


「ん? どうしたんだ? そんな顔して」


ルーガンの顔を覗き込むロバート。

彼は心なしかどこか顔色が悪そうに見えた。


「いや……、ちょっと眠れないもので」

「どうしてなんだ? 俺が相談に乗るからさ。言ってみなよ」


ロバートはにこやかな顔つきで彼を安堵させようとする。


「はい……。実は、自分に自信が持てなくて……。これからも部下を守り抜けるか心配で心配でたまらないんです」

「そうか。確かにルーガンの気持ちは分かる。俺も隊長になったばっかの頃はそうだったよ。でも、自分なら出来ると心に言い聞かせれば自然と自信はつくものさ。それと、早く寝ないと疲れは癒せないぞ。休息も大事だからな」

「分かりました。ありがとうございます」


ルーガンは、表情が穏やかになった。


「俺は大したこと言ってないよ。とりあえず、明日に備えて寝よう」

「はい」


そして、二人は各々の部屋に戻っていった。


 

 翌日、連合国軍のバスター隊は共和国軍への奇襲作戦を計画していた。


「今回の作戦では、第4前線基地を狙うこととなっている。

以前、偵察部隊から得たデータによると第4前線基地は二つ入口があるという。そこでだ。まず、一方の入口に無人機をダミーとして侵入させる。共和国の連中が無人機部隊を相手にしている隙に、我々がもう一方の入口から入り、基地を破壊する」

「なるほど……。しかし、一つ気になることがあるのですが…」


スティーブは眉をひそめた。


「どうした? スティーブ……」

「今回使用する武装は、どうしましょうか」

「武装は従来のもので良いだろうな」

「分かりました」

「他に何か考えがある者はいないか?」


イアンは三人の顔を見渡した。

すると、次に意見を出そうとしたのはベティである。

その時の彼女はどこか自信に満ちた面貌だった。


「はい、私にいい考えがありますわ。

今回の作戦ではより効率よく基地を破壊するために、小型爆弾を各部に取り付けて爆破したいのですが……。可能でしょうか?」

「勿論だ。爆弾のストックはかなりあるから、これで共和国の連中を脅かせる……」


大胆不敵に笑みを浮かべるイアン。

また、彼の表情からは余裕さも見て取れた。


「自分からも、一つ提案してよろしいでしょうか」

「何だ? 言ってみろ」


彼は、興味深々な表情でアッシュの顔を覗う。


「今回の作戦では、ショルダーキャノンを装備してみては?

従来の武装だけでは限界があります」

「言われてみればアッシュの言う通りだな。

出来るだけ作戦の支障にならない程度の重武装で行った方が、より敵を倒しやすくなるだろう」

「とりあえる、他には手榴弾や小型ミサイルランチャーも装備した方が良さそうですね」

アッシュの言葉を聞いて、イアンは軽く頷いた。

「うむ、そうだな。では、作戦の内容もしっかりとした形になったところで、作戦の準備を行うとしよう

作戦実行日は二日後だ」

「了解!」


その時のバスター隊の面々は、勝利を掴むべく、今まで以上の気合に満ちていた。


 

 そして、翌々日のこと。

ついに作戦実行の日が来たのだ。

まず、基地のカタパルトから無人機に改造されたグライズを発進させ、共和国軍を混乱させる。


「大変です! 連合国軍のメタルユニットが第4前線基地に接近しています!」

「そう焦るな……。どうにかやり過ごすんだ」

「はい……」


こうして、第4前線基地配属の部隊は出撃し、囮となった無人機部隊と対峙する。


 

 ストライカー隊はこの基地に転属になって最初の作戦だったが、恐れることなく敢然と立ち向かった。


「来たか…。一斉掃射開始!」

“了解!”


ルーガン達は機銃で敵部隊を狙い撃った。

前方へと真っ先に攻撃を仕掛けてきた連合国軍の無人機部隊はあっさりと次々に撃墜されていく。


 しかし、彼らが無人機部隊と相手をしている隙にバスター隊は手薄になっていた別の入口から侵入し、小型爆弾を気付かれぬように設置する。


「よし…、これでまず一つ……っと」


スティーブは一つずつ爆弾を置いていく。


“スティーブ、油断するなよ”

「分かっています。そのことは前回の戦いで十分思い知りました」

“ならいいけどよ”


アッシュはふっと笑う。

やがて、爆弾の配置区域はみるみるうちに広がるが、このことを察知した者がいた。

その人物は、フランクであった。


“ロバート大尉! 基地の施設に爆弾が……”

「何だと!? なら、処理するしかないな……。

あと、これを置いたのは恐らく連合国軍だな……。

火種を探し出すんだ!」

“火種というと、爆弾を置いた犯人ということですね”

「もちろんそうだ。何としても倒すんだ」


しかし、その矢先に一つ目の爆弾が爆発。

これを受け、ロバートが爆弾の取り外しを行い、フランクが犯人を追うということになった。


 ロバートは、機体の両腕を巧みに扱って取り付けられた爆弾を解除していった。


「これは安全なところに持っていって爆破させるか……」


彼は基地から遠く離れた何も無い場所で爆弾を破壊した。


 

 一方、フランクはバスター隊を筆頭とした連合国軍の奇襲部隊と遭遇し、他の共和国軍の部隊と共に激しい攻防戦を行っていた。


「何て激しい攻撃なんだ……。でも、絶対に負けはしない!」


フランクは必死に機銃で光線を撃ち、応戦する。


「やはり簡単にはやられんようだな……。

ベティ、アッシュ! 手榴弾を投げて敵を一掃するぞ!」

“分かりました”


二人は手榴弾で攻撃し、最も前方にいた共和国軍の部隊を一掃した。

これにより、フランク達は不利になる一方であった。


「いいじゃない…。これでまた砲撃戦に移行するわけね……」

“ベティ、集中砲火を奴らに浴びせてやろうぜ”

「分かったわ」


二人の集中砲火で敵は次々に撃墜され、共和国軍にとっては、戦況は悪化していくばかりである。

また、イアンはショルダーキャノンを乱射し、敵を次々に爆砕していく。


 

 時を同じくして、ロバートはカイルとヘレンに合流し、フランクのいる格納庫が点在するエリアへと向かっていた。

そこにも連合国軍の量産機・アゾムで構成された部隊がおり、彼らと対決した。


「ミサイル発射! 当たってくれよ……」


ロバートの放ったミサイルを喰らい、敵部隊は半分程が撃退された。


「ヘレン、奴らを狙い撃つぞ!」

“了解!”


さらに、カイルとヘレンの巧みな狙撃によって、そこにいた連合国軍の機動部隊は全滅。

そして、ロバートはフランクからの救難信号をキャッチし、即座に戦闘機形態に変形してカイルとヘレン共々その場を後にした。


 

 それから数分後、ロバート達は何とか間に合い、そこにはストライカー隊も合流していた。


「これだけの敵を全滅なんて……、出来っこないですよ……」


クローティスは自信を無くして、敵に怯えていた。


“諦めるな! そんな弱音を吐いたら自分がやられるぞ!”


ロバートは必死に彼を鼓舞した。


「でも、明らかに戦力面では……」

“今ならまだ間に合う! まだどこからでも逆転できるさ。やってみなくちゃ解らないだろ!?”

「ロバート大尉がそういうなら……、やってみます!」


そして、クローティスはルーガンに接近戦でイアン達に挑もうと提案し、攻撃を仕掛ける。

近づいてきた彼らを見て、イアンは嘲笑した。


「愚かな! これで勝てるとでも思っているのか?」


イアンは即座にビームソードを取り出して斬撃を防いだ。


「やられてたまるか! こんな所で……」


クローティスは機体の出力をフルにして、力技でイアンの機体を押し出した。


「何ィ!? 弾き飛ばすとは……」

「まだまだァ!」

次に近づいてきたのはルーガンである。

さらに後方からリオとエリナがすぐさま援護射撃を行う。


“私たちだって負けてはいられませんよ! ねぇ、エリナ”

「勿論よ! 隊長は必ず守ってみせるわ!」


遠方からの攻撃をシールドで防ぎつつ斬撃するイアン。

彼の胸はいつになく高鳴っていた。


「これで一気に……、斬り裂く!!」


ルーガンは勢いをつけてイアンに斬りかかり、機体のシールドを真っ二つにする。


「しまった! シールドが壊れるとは…」


さらに、リオの放った光線を機体肩部に喰らい、イアンは思わず狼狽えた。


「何をォォッ!!」

「一発撃つわよ!」


エリナは機体の左腕部を完全に破壊し、さらにイアンを焦らせる。


「よしッ、ここで……、斬る!!」


ルーガンの素早い動作故に手足が凍り付いたように動かなくなったイアンは、自分の機体頭部を斬られる。


「しまった! メインカメラが……!

アッシュ、ベティ、スティーブ、撤収だ!」

“了解!”


そして、バスター隊は撤収を余儀なくされた。


 

 それから十数分後、連合国軍は全員敗走。

何とか共和国軍は勝利した。

爆弾による被害はエネルギータンク一つだけで済んだが、中には全滅した機動部隊もいた。

翌日、ロバート達は今回の戦いで命を散らした兵士たちを弔った。兵士の中には、親友を失い涙を流す者もいた。


「俺たちは全員無事だったから良かったが、全滅した隊の気持ちになると、胸が苦しいぜ」


カイルは悲し気な面持ちであった。


「その気持ち、よく分かるぞ。

俺がもっと早く来ていたらと思うと……」


ロバートは悔しさと悲しみが混ざったような表情であった。

漆黒の空に輝く星々が、兵士たちを励ますかのように輝く。





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