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第13機動部隊 プログレッサー  作者: 藤沢マサト
第一章 終わりの見えぬ戦い
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第3話 怪しい影の行方

 4月5日のこと。

その日、ロバート達はバーチャル戦闘訓練に明け暮れていた。


「よしッ、いいぞいいぞ。結果はどうだろう?」

“訓練終了。ロバート大尉ノ撃墜数ハ23機デス”

「なかなかやるじゃないですか。次は僕の番ですよ」


この訓練は、空中戦時を想定してシミュレートされたものであり、ロバートも調子が良かったものの、その勢いをさらに上回ったのはフランクであった。


「おぉ、フランク結構やるなぁ……。この隊に入ったばかりの頃よりかなり成長したな……」

カイルはその様子を見て思わず感心していた。

「こんなものか……」

“訓練終了。フランク少尉ノ撃墜数ハ25機デス”


その結果を聞き、3人は思わず驚いた。


「マジか……。俺の記録を抜くとはな……」

「ええ、私も驚いちゃいましたよ。凄いですね……」


ロバートとヘレンは思わず驚嘆した。

フランクの成長ぶりに。


「まさか大尉の記録を抜けるとは思ってもいませんでしたよ」

「次は負けないからな!」


部下の実力を認めつつも、どこか悔し気なロバート。

彼はさらなる鍛錬をすることを決意した。



 その後、カイルは先日のスパイについて、ロバートと話した。


「あっ、ロバート大尉……。この前のスパイの件についてなんですけど……」

「あぁ、あの件か。何か分かったのか?」

「分かったも何も、自分は顔を覚えているので…」

「そういえばそうだったな。名前も分かったのか?」


ロバートは、興味深そうにカイルの事を見つめる。


「はい。彼の名前はゴードン・ワーグナー。間違いありません……。彼だけ隊員番号のデータ表記があからさまにおかしかったんですよ。ですから、次会ったときは問い詰めようかと……」

「そうか。やれるだけのことはやってみるといい。

俺も協力するから、頼んだぞ」

「了解!」


 数時間後、ゴードンは共和国軍の情報収集を完全に終えて、連合国軍基地へと帰還しようと考えていた。

以前一時的に帰ったものの、上官からさらなる共和国軍の機密情報のリークを行うよう命令が出されたため、今回はロードブレイダーMk-Ⅱに次ぐ新たな可変機が開発されるという

情報を一人の整備士から聞き出した。

その一連の計画は、マルチフレームプロジェクトという決戦兵器群の開発を行うというものである。


「へへっ、結構ちょろいもんだな……。まさかあそこまで簡単に口を滑らせてくれるとはな」


大胆不敵に笑うゴードン。後は連合国軍基地に戻って上官に報告を行うのみとなっていた。

だが、そこに二人の人物が来た。その正体は、ロバートとカイルである。


“入るぞ”


二人はゴードンの部屋に入った。


「おや、何です? その顔は」

「君は、ゴードン・ワーグナーといったな」


ロバートは目を鋭くした。


「そうですが……」

「お前が連合国軍のスパイだということが分かったんだ」


カイルはいつになく真剣な眼差しでゴードンを指さす。


「何を言ってるんです……? 

そんなことある訳ないじゃないですか……」

「それがな……、お前をスパイだと裏付ける証拠があるんだよ」


それを聞いて、ゴードンは思わず鳥肌を立てた。


「これがその証拠をまとめた書類だ。お前の所属番号が本来なら俺たちよりも後のはずなのに今は欠

番のJRF032になっている。これが一番の証拠だ。明らかに後から捏造したとわかる」

「だが、それだけで俺をスパイだと決めつけるとは……」

「まだ根拠はある。お前の軍服や階級章の質感が明らかに俺たちが身に付けている物と違い過ぎる。ここまで杜撰な偽装作戦をするとはな……」

「短期間の作戦だからと甘く見てたみたいだな」


この二人に問い詰められたゴードンはついに化けの皮を自ら剥がした。


「ばれたら仕方ない……。その通り。俺はファルスト連合国軍のスパイだ……」


「ようやく認めたか。このことは長官に……」


しかし、その矢先に帝国軍の進軍が確認され、ロバート達は出撃を余儀なくされた。


「くッ……、出撃命令が出たら仕方ない……。そこで待ってろ!」


しかし、ロバートが整備ドックに言った隙にゴードンは即座にホバーバイクを使い連合国軍基地へと向かっていった。


 意気揚々と自軍の基地へと向かうゴードン。

彼は余裕の笑みを浮かべていた。


「馬鹿な奴め! 敵に塩を送るようなことをしてたまるか…。全く、間抜けな連中だ」


だが、その時であった。巨大な影が彼のもとに近づく。


「まさか生身で来るとは……。愚かな! 死ね!」

「しまったッ!! ウワァッ!!」


帝国軍のMUの攻撃により、ゴードンはホバーバイク共々一瞬で灰と化した。



 一方、ロバートは第5補給基地へと向かい、帝国軍と一戦交えていた。

今回はロバートとヘレンが近距離戦を、カイルとフランクが遠距離戦を行い、最終的に合流して集中砲火で敵にトドメを刺すという作戦である。


「よし、掃射するぞ! フランク」

“了解です!”


二人は、ビームライフルで幾多もの光線を放ち、迫りくる敵機を次々に撃墜していった。

さらに追い打ちをかけるように、ロバートとヘレンが接近戦で味方に近づいてきた敵を薙ぎ払っていく。


「てやァァッ!」

「何だとッ!? グワァァァッ!!」


敵は斬り裂かれ、爆発四散した。

周りにたかっていた帝国軍の兵士はこの光景を見て怯み始めたのか、少しずつ数が減っていくのだが、その流れに逆行するようにエルドラド達が共和国軍の部隊に奇襲を仕掛けてきた。



 エルドラド率いるクラッシャー隊は、ビームバズーカや手榴弾を用いて勢い良く凄まじい攻撃を仕掛けていく。

施設は破壊されていき、自衛用無人砲台も抵抗虚しく次々に爆砕する。しかし、それを見かねた共和国軍の機動部隊はこの戦況を乗り越えるべく、残された格納庫からバズーカを引っ張り出して対抗する。


「おいおい、ここまで叩きのめされちゃあこっちだってやり返すしかないな!」


熟練兵の一人であるアモン・ペイジーは自らの持ち合わせている全ての武装をフル活用して

敵に攻撃を挑んだ。


「装備の数で戦いが決まるとは限らんのだよォ!」


セルバードはビームソードを取り出し、強靭的な攻撃力で

アモンに襲い掛かる。


「倒してくれるッ!」


しかし、アモンはビームバズーカで光線を数発放ち、接近してくる前にどうにかセルバードの駆るグライズを後方に追いやった。


「くッ……。やはり接近戦よりも遠距離戦かッ!」


セルバードはビームライフルでアモンに対抗する。

上手く狙い撃とうと照準を合わせるが、その間にまた攻撃を喰らい、機体のコンディションは悪化する一方。


「そんな! この俺としたことが……。何もできずに終わるとは情けない……」


彼はエルドラドに現状を報告し、撤収した。



 時を同じくして、メルダとヴィラーガは他の帝国軍の部隊と共に集中砲火を浴びせ、かなり有利な状態になっていた。


「全く……、弱すぎるにも程があるわ……」

“メルダ、油断は禁物だ……。気をつけろ”


ヴィラーガは冷淡な表情をしていた。


「分かっています」


しかし、そこにプログレッサー隊が到着し、共和国軍の猛攻撃が開始された。


「パワードキャノン、発射!」


ロバートは凄まじい火力にものを言わせ、次々に周辺の敵を撃墜。一部の敵は、これに怯えて敵前逃亡したが、この無様な兵士達を横目にエルドラドが二人と合流。

彼はエネルギータンクを破壊し、後は残った敵を倒すのみとなった。


「さて……。共和国軍の連中がここまで手ごたえがないとは……。この前までの勢いはどうしたんだ?」

「あぁぁッ、嫌だァッ!!」


エルドラドは腕に装備されたワイヤークローで敵機に突き刺し、そのまま無理矢理引き寄せてビームソードで斬り裂いた。

この勢いに乗り、次々に敵を撃墜していくエルドラド。

最早共和国軍に勝ち目は無いのか。誰もがそう思った瞬間であった。

カイルはエルドラドと実力差が開いているにも関わらず、ビームライフルで中距離攻撃を行った。


「ん? 肩のマーキングからしてこの前戦った機体とは違う奴だな……。まぁいい……。撃墜してくれる!」


しかし、彼は先程の戦法でカイルを倒そうと試みるが紙一重で回避され、間合いを取られた上で反撃される。

さらにフランクもそれに加勢し、エルドラドは不利になっていく。


“ロバート大尉! 聞こえますか!?


今のうちにこのスケイラスを撃墜して下さい!”


「了解だ、フランク! さて、奴を倒すとするか……」


エルドラドの元へと少しずつ接近しながらビームキャノンを撃つロバート。

しかし、彼の思う通りにはならず、エルドラドはメルダとヴィラーガをロバートに戦わせるよう仕向けた。


「隊長を倒させはしないわ!」

“メルダ、あまり熱くならないようにな……”

「分かってはいますけど…。ついなっちゃうんですよ……」

“まぁいい…。必ずやあの新型を倒してやろう”


この二人はMk-Ⅱ討伐のために、まずは中距離攻撃を仕掛けて上手くロバートを牽制する。


「二対一で仕掛けるとは……。だが負けたりはしない!」

“大尉、私も加勢します!”

「ヘレン、援護ありがとう。頼むぞ……」


ロバートは画面越しにサムズアップをした。


「さぁ、喰らえェッ!」


二門のビームキャノンが、蒼い彗星のような火を噴く。

この攻撃により、ヴィラーガは機体にダメージを負うが、対抗してビームライフルで光線を放つ。


「やるな……、このグライズ……。もう一発!」


しかし、ロバートヴィラーガの機体に光線を直撃させる。

これにより、ヴィラーガは撤収を余儀なくされた。

 


 ヘレンとメルダに格闘戦で挑み、お互い上手く攻撃を切り返していく。


「何て激しい攻撃……。なかなか強いですね……」


ヘレンは焦燥に駆られるが、それでもどうにかして落ち着こうと試みる。


「落ちなさい!」


メルダが素早くビームソードを縦に振りかざし、ヘレンの機体左腕部を切断する。


「きゃあァァッ! やられるなんて……、

ここでやられるなんて、絶対に嫌よ!」


ついに、ヘレンの猛反撃がここに来て始まった。

彼女は素早い動作でメルダの機体胸部に斬りかかる。


「しまった! 機体の損傷率が50%以上!?

撤収するしかないわね……」


メルダは、渋々基地へと帰還した。



 一方で、エルドラドに二人がかりで挑むカイルとフランクは、隙を生まぬよう近距離と遠距離の二段攻撃でどうにか苦戦させていた。


「俺たちだって、ロバート大尉のように手柄を挙げてみせるぞ!」

“出来るといいんですがね……”

「そんな事言ってると負けるぞ! 早いとこ倒してやろうぜ」


カイルは近距離戦を行い、さらにそこからフランクの執拗な狙撃により、エルドラドは追い詰められていく。


「何て攻撃だ……。こんな奴らごときに負けてたまるものか!」


エルドラドはワイヤークローを突き刺そうとするが、カイルはひらりとそれを回避した。


「容赦ない奴だな……。でも、俺だって負けちゃいないぜ!」


エルドラドにビームソードで斬りかかるカイル。

しかし、彼はその隙を突かれてエルドラドに激しい斬撃を喰らう。


「何てことだ……。攻撃を喰らいすぎて機体が思うように動かない…」


最早カイルは成す術なしと思い、死を覚悟したが、そこにロバートが現れる。


「大丈夫か、カイル! ここは俺が手助けするぜ」

“大尉! ありがとうございます!

それと、俺の機体はかなり傷が深いので、撤収します…”

「分かった。カイルの分まで戦い抜いてやるからな」


カイルはやむなくそのまま基地へと帰還した。


 ついに、ロードブレイダーMk-Ⅱと本格的に戦闘を開始したエルドラド。

彼は先陣を切ってビームソードで斬りかかる。


「落ちろッ! Mk-Ⅱめ!」


しかし、ロバートはすぐさま上空へと回避し、戦闘機形態に変形して素早く移動。


「新型のメタルユニットはワケが違うな……。まぁいい……。これで落とす!」


エルドラドはビームライフルで確実にMk-Ⅱを狙撃しようと試みる。


「何をォッ!」


ロバートはミサイルを発射し、エルドラドの機体にダメージを与えた。しかし、それは微々たるもので、この程度では怯まない。


「ならば、この攻撃で落とすしかないみたいだな…」


二門のビームキャノンで光線を放ち、エルドラドの機体頭部を破壊する。これにより、彼はまともに攻撃を繰り出すことが出来なくなり、やむなく撤収を余儀なくされた。



 その後、帝国軍は第5補給基地から完全撤退し、一応共和国軍の勝利となったが、基地は一部の施設が破壊され、最低でも二週間は復旧作業を行わないと機能出来なくなってしまった。


「くッ……、俺たちがもっと強けりゃなぁ……」


アモンは後悔していた。自分の無力さに。


「大佐……。でも、負けたわけではないんですから、弱音を吐かないでくださいよ……」


彼の部下であるラディムは、必死にフォローしようとする。


「だがなぁ、勝った代償は大きすぎた…。この基地やさっきの戦いで死んだ仲間がその代償だ」


それを聞き、部下たちは何も言えなくなり、気分は沈む一方であった。



 一方、ロバート達はゴードンを探していたが、どこにもいなかったため、泣く泣く彼のことは諦めることにした。


「結局、ゴードンは連合国軍の基地に戻ったんですかね……」


カイルはロバートを見つめつつ、胸の前で腕を組む。


「分からないが、恐らくそうだろう……。

これ以上俺たちの軍のデータが流出しないといいけどな……」


ロバートは戦いに疲れ、その上ゴードンを見失ったため、途方に暮れていたのだ。

その後、二人は各々の部屋で眠りについた。

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