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第13機動部隊 プログレッサー  作者: 藤沢マサト
第一章 終わりの見えぬ戦い
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第2話 Mk-Ⅱ出撃せよ

 4月2日にロバートがロードブレイダーMk-Ⅱを譲り受けた次の日、彼はテスト運用を行うことにしたのだった。

バン率いる整備班や部下たちが見守る中、新たなるロードブレイダーは動き出す。


「これが、Mk-Ⅱの力か……」


思わず感嘆するロバート。

すると、バンから指示が出される。


“おい! 操縦桿の側面のレバーを引いてみろ!”

「はい、わかりました」


ロバートがレバーを引くと、彼の乗る機体は戦闘機のような形態へと変形した。


「こ、これは……。可変機だったのか! 何かただならぬ感じはしていたが、こういう事だったのか!」

“そうさ。この機体は、マルチフレームという特殊な構造を取り入れたメタルユニットになっているんだ。この形態では、当然ながら接近戦用の武装は使えないが、パワードキャノンとビームキャノン、肩のミサイルポッドが使えるぞ。今はロックが掛かって使えないが、攻撃力はガントレックの比じゃないぞ”

「なるほど。それは凄いですね……」


戦闘機形態で基地周辺を飛び回るロバート。

軽やかな動きは、まるで鷹のようであった。


「思い通りに動いてくれるじゃあないか!」


そんな彼を尻目に、一人の兵士がMk-Ⅱの動きを見てニヤリとしていた。その兵士の正体は、

ファルスト連合国軍所属のスパイ兵士・ゴードンであった。


「こいつが共和国軍の新型か……」


そして、彼はひっそりとどこかへと去っていった。


「なぁ、さっき見慣れない顔の奴がいたけど……」

カイルは不思議そうな顔をする。

「え? 気のせいだと思いますが……」


突然のカイルの発言に少し戸惑うヘレン。

だが、これが後にとんでもない事態を引き起こすとは、誰も知る由もない。


 

 それから数時間後、ゴードンは連合国軍基地に戻り、上官に新型機の情報をリークしていた。


「どうやら、共和国の連中は可変メタルユニットを開発しているようです。


その名も、ロードブレイダーMk-Ⅱ。機体データに関しては、こちらのメモリに移しました」


「ほう……。流石はゴードンだ。よくやった。これで我々も今後、更なる技術発展が見込めるというわけだな」

「そうなれば、戦力の少ない我が軍でもこの戦争において勝利が夢ではないというわけですね」


ゴードンは軽く頷く。


「この戦闘データは、作戦でも使用できそうだな」

「ええ。これがあれば、機体のアルゴリズムを分析して戦うことが出来るので、戦闘で優位に立てるでしょう」


果たして彼らの思惑通りにいくのか。


 

 その一方、情報がリークされていると知らず、プログレッサー隊は戦闘訓練を終えてミーティングルームで休憩していた。


「ふう……、白兵戦の訓練は疲れたな。いくら格闘技好きな俺でもきつい……」


子供の頃から格闘技が好きであったロバートですらも疲労困憊となっていたが、それ以上に疲れていたのはロバート以外の3人である。


「やはり自分は格闘技なんて向いてないですよ……。ヴァーチャル訓練だったら楽なんですけどね」


思わず溜息をつくフランク。

彼は他の3人に比べて、相対的に見ると体力に自信がないのだ。


「フランクの気持ちも分からなくはないが、辛くても根気強く努力することが大事なんだ」

「まぁ、大尉がそういうなら、とりあえず自分なりに頑張ってみます」


カイルはだるそうな面貌であった。


「カイルはどうだった?」


ロバートは、隣の席に座るカイルの方へと目線を移した。


「俺も疲れましたけど、いつものことですし……」


疲れているような節を見せないでいるカイル。

だが、その疲れは座るときの姿勢に出ていた。


「なんか昨日より猫背になってませんか?」


真っ先に指摘したのはヘレンであった。


「そうか? そういうヘレンだって、いつもより多く水を飲んでるみたいだし、人のこと言えないじゃないか」

「それを言われたら、何も反論出来ませんね……」


彼女は思わず苦笑いする。


「まぁ、今はひとまずゆっくり休むことが大事だから仕方ないな……」


軽く微笑むカイル。

彼は椅子の背もたれに寄り掛かった。


「確かにヘレンの言う通りだな。とりあえず次の訓練開始時間になるまで思う存分休んでいこうじゃないか」


ロバートは疲れてはいたものの至って穏やかな表情であった。

その後も彼らは束の間の休息を味わう。



 それから翌日、ファルスト連合国軍第6機甲小隊・通称“バスター”はゴードンからロードブレイダーMk-Ⅱのデータを受け取り、作戦を練ることにした。

隊長のイアン・ナスティーが発案した作戦は、特殊な電磁波を発生させる装置をグライズの武器に取り付けて、これでロードブレイダーMk-Ⅱを操縦不能にするというものであった。


「イアン少佐、今回は例の新型を傷つけることなくパイロットごと奪うとのことですが……。

奪ってからはパイロットをどうするつもりですか?」


この部隊の紅一点であるベティ・モーゲルは上司を見つめる。


「もちろん他の機密情報を聞き出し、その後は殺す」

イアンはニヤリと笑みを浮かべた。

「なるほど……。わかりました」

「他に質問がある者はいるか?」

「はい」


次に質問をしてきたのは、ベティと同期のアッシュ・クラウスである。

彼の射撃能力は、上司のイアンも認めるほどの人物だ。


「今回の作戦では、Mk-Ⅱ単機で行動するとは思えませんが…」

「それはそうだろう。今回は空中と陸上の二段構えでMk-Ⅱ以外の敵機に攻撃を行う」

「失礼いたしました」


アッシュは思わず萎縮したかのような表情を見せる。


「スティーブ、お前は何か案はあるか?」


イアンに声をかけられたのは、最年少のスティーブ・ウォーレン。彼は穏やかな青年で、自国のさらなる発展のためにこの軍へと入った。元々は争い事を好まない性格だったが、戦いの経験を積んでいくうちに平和のために戦おうと心に念じるようになったのだ。


「そうですね…。自分は遠距離から敵を攻めていこうかと思っているのですが、少佐はどうお思いですか?」

「まぁ、妥当な判断だとは思うがな……」


スティーブの案は受け入れたものの、期待していたよりもありふれた提案だったため、イアンは拍子抜けする。


「スティーブ、もう少し具体的な案にしてくれないか?」

「はい。でしたら、スナイパービームライフルを用いて敵基地に攻撃を仕掛けてみてはいかがです?

他の部隊も使うと聞いたので……」

「うむ。その方が適切だな。今まで出た案をまとめると、まず、ロードブレイダーMk-Ⅱを電磁波で実質拘束状態にし、その間に他の敵機を遠距離から攻撃し、少しずつ近づいて通常の装備で攻撃する。全滅させたらパイロットごと基地に連れていくというわけだ。案も固まった所で、出撃準備を行おう」

「了解!」


こうして、ファルスト連合国軍はロードブレイダーMk-Ⅱ奪取のために作戦実行へと駒を進めていくのだった。


  

 数時間後、連合国軍はロバートがいる第4前線基地へと進軍。

これにより、プログレッサー隊は出撃を余儀なくされた。


「連合国軍がここに接近してきたなんて……。目的は一体なんだ?」


ロバートはまだ自分の機体が狙われているとは知らずに敵機を捜索したが、その時であった。

無数の光線が彼らを襲ったのは。


「落ちろッ!」


スナイパービームライフルから高威力の光線が放たれ、基地の第一防衛ラインに設置されている大型砲台がそれによって破壊される。


「どうやら奴らは遠距離から攻撃を仕掛けているようだな……」


即座に戦況を察知したロバート。

それを受け、彼はパワードキャノンを構えて遠距離攻撃に備えた。


「喰らえッ!!」


パワードキャノンの砲口から、稲妻のような光線が放たれ、機体はその反動で僅かに後ろに下がる。


「うわァァァッ!! これ以上は持たないみたいだ…」

“大丈夫か!? スティーブ!”

「いや、大丈夫では無いですね……。イアン少佐、機体のコンディションが悪化したので撤収します」

“分かった。後は任せろ”


この攻撃により、スティーブの機体は大ダメージを喰らい、早くも撤退を余儀なくされた。

しかし、それに怯むことなくバスター隊は前進し、ロバート以外の3人を含む兵士たちに対し集中砲火を浴びせた。

共和国軍の戦力は少しずつではあるものの、削られていった。

ロバート以外の兵士を執拗に狙うことに対し、カイルは疑問を抱いた。


“なぁ、ヘレン。なんだか妙だと思わないか?”

「どうしたんです? カイル中尉」


唐突に通信が来たため、少し驚くヘレン。


“連合国の奴ら、ロバート大尉に一切攻撃を仕掛けてないぜ。

こりゃ何か裏がありそうだな”


機銃を撃ちつつ、この疑問を解決しようとするカイル。

彼は、一つの答えに辿り着いた。


“分かったぜ……。この挙動不審な動きの正体がッ!

ロバート大尉、なるべく後方に下がっていてください。俺が囮になります!”

「えっ……、なんでだ?」

“奴らの今回のターゲットは、ロードブレイダーMk-Ⅱの奪取です”

「なんでその事が分かったんだ?」


ロバートは思わず眉をひそめる。


“レーダーの反応具合がいつもと少し違ったんです。武装のデータを分析したら、電磁波発生装置と同じ反応がしたのでね。もしかしたらと思って……”

「そうか! だとしたら、俺に攻撃をして来なかった事と辻褄が合うな!」

“そうと分かったら、早速俺たちで処理します!”

「了解! 任せたぞ」


そして、カイル、フランク、ヘレンの三人はバスター隊を上手く引き付け、攻撃を行う。


「フランク、ヘレン! 目的は武装の破壊だ。そこに大尉の機体を操る電磁波発生装置が仕込まれている」

“分かりました……”


フランクは目を鋭くして敵の動きを見極めた。


「フッ、これじゃあまるで動く的だ!

ベティ、アッシュ、邪魔者を追い払ってやれ」

“了解です……。これでMk-Ⅱは我が軍のものよ。喰らうがいいわ!”


ベティの執拗な攻撃に怯むことなく、光線を撃ち続けるフランク。

その攻撃は、ベティの持っていた機銃を破壊した。


「そんな……。これで私は電磁波が送れなくなってしまったけれど、絶対に負けたりはしない!」


彼女はビームソードを取り出し、フランクに目掛けて勢いよく斬りかかった。


「何ッ!?」


フランクは咄嗟にシールドで防ぎ、事なきを得る。


「私の攻撃を防ぐとはねェ……。やるじゃないの。でもそこまでだよ!」


一旦後ろに下がり、今度は加速した上で素早く斬りかかる。


「何をォッ!!」


焦燥に駆られて、ビームライフルで光線を連射するフランク。

この攻撃により、ベティの機体右腕部を損傷し、撤収を余儀なくされる。


 

 時を同じくして、カイルはアッシュと激しい接近戦を繰り広げていた。

お互いの剣の刃が何度もぶつかり合っては離れての繰り返しで、どちらも一歩も譲らない。


「何てしつこいんだ! こいつ……」


カイルは思わず狼狽えた。

アッシュのあまりにも激しい攻撃に。


「量産機の割には結構健闘するな……」

“アッシュ、油断はするんじゃないぞ。俺も援護するから、耐えろよ……”


さらに空中からはイアンの遠距離攻撃が行われ、万事休すかと思われたその時である。

大鷲のように素早く飛んできたロードブレイダーMk-Ⅱが攻撃を仕掛けてきたのだ。


“大尉! 後ろに下がってと言ったじゃないですか”

「でも、お前がこれ以上やられる姿は見たくない……。だから来たんだ!」

“ロバート大尉……”


ロバートは、機体を戦闘機形態の状態でミサイルを発射してアッシュの機体に大ダメージを与え、撤収に追い込む。


「とうとう来たかMk-Ⅱ! 電磁波を送るか…」


しかし、その矢先にカイルがビームソードでイアンの武装を破壊した。


「大尉! 早くコイツを仕留めないと……」

“分かった。これでやるか……”


ロードブレイダーMk-Ⅱはメタルユニット形態に変形し、ビームソードでイアンの機体右腕部を切断し、さらに蹴りを入れて遠くへと弾き出す。


「ウワアァッ!! どうやら……、俺はコイツをなめてかかっていたようだな。撤収するか……」


その後、イアンはそのまま格納庫が並び立つ第4前線基地から敗走せざるを得なくなる。

それから数分もしないうちに連合国軍は完全撤退した。


 戦闘が終わり、何とか休息の時を得たロバート達。

しかし、そんな彼らにとって不利益な情報が舞い込んでくる。


「大変です! ロードブレイダーMk-Ⅱのデータが

先程の戦闘前に漏洩していたことが分かりました……」


フランクは軍のコンピュータを使っていた時に情報を吸い出した痕跡を見つけていたのだ。


「何だと!? だとしたら、一体誰が情報を持ち出したというんだ?」

「さあ…」


ロバートは途方に暮れる。


「待てよ? テスト運用中に俺は見慣れない顔の奴がいたってヘレンに言ったよな……」

「そうでしたね。だとしたら、犯人はその人ですか!?」


ヘレンの顔は、恐怖のあまり青ざめた。


「俺があの時奴を引き留めていれば……。クソォッ!」


カイルは拳を強く握り悔しがった。


「カイル、データがスパイにリークされたとしても、まだ勝ち目はある」

「でも……」

「戦争では、必ずしも兵器の性能がものを言うわけじゃない。技量も関係してくるはずだ」

「確かにそうですが……」

「大丈夫だ。もし不利になったとしても、戦況は変えられるさ」


必死にカイルのフォローをするロバート。

今後の戦いで、このリーク事件がどう影響するのか。







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