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第七章 虹色

 それから日を置かず、計画は実行された。町は、貴族に対する反感とパンの値上がりに苦しむ人々で、しばしばもめごとが起きていた。ジャメルの言った言葉がようやく分かった。たった一つの波紋が、秩序を乱す。


 僕は誇らしい気持ちになる。僕とジャメルのささやかな行動が、やがてこの国を変えるんだ。そう思うと、馬車から引きずり降ろされる貴婦人が平民女性に頬を張られているいざこざも、愉快に思えてきた。今夜、その騒動は火を噴くだろう。僕は期待に胸を膨らませた。




 ――夜のバスティーユは、不気味な光を放っていた。今まで僕はこれほど溢れる光を見たことがなかった。七色にうねる光の数々。こんなものが自然の営みにあるだろうか? 大人の姿をしたジャメルが静かに話した。


 「ユーグ見えるか? 生憎、俺はお前のような目を持っていないんだ。バリアはどのくらいある?」

 これが全てバリアだというのか? 八つの塔から光が降り注ぎ、ゆうに三十メートルはある城壁全てを包んでいる。跳ね橋は二つだけで、今は上がっている。


 「光に全部丸く収まってるよ」


 ジャメルはそうだろうなとどこか物憂げに呟いた。


 「俺は、跳ね橋を獣を使って降ろさせる。だが獣はバリアですぐに消滅するだろう。そこで、お前は跳ね橋が落ちたと気づかれる前に、バリアの出所を見つけるんだ」


 「いまいち、よく分からないよ」


 「バリアは、それを作る点がある。それをお前は壊せ」


 ジャメルは手を擦り合わせて微笑んだ。


 「さて、血祭りの始まりだ」


 全くジャメルの冗談はきつい。でも、そういうジャメルが好きだ。


 さっそく、ジャメルは獣を「扉」から呼び出し(扉と呼ばれる異空間がどこに通じているかは、今だに教えてもらえない)、跳ね橋を降ろした。熊よりも強靭な力でも、獣はうんうん唸っていた。数分かけて、橋が一つ降りてきた。


 跳ね橋の辺りに目を凝らした。どこを壊せば中に入れるのだろう? 


 「いいバリアだ」


 関心している場合ではない。衛兵が塔の上から見下ろしている。橋が落ちていることに気づかれた。


 侵入を知らせる笛が鳴った。これでは計画が台無しだ。出直したい衝動にかられたが、ジャメルは僕に期待している。早くバリアを壊さないと。


 天井は大して怪しいところはない。壁に使われている石材を一つ一つ見ても、変わったところはない。足元も眺めていると、たった一つ、虹色ではなく黒っぽい石があった。


 「あった」


 指で示すと、ジャメルは満足げに頷き、鎌を突き立て、穴を開ける。そこから闇が噴出した。黒い波のようにうねった光が虹色のバリアを消し去っていく。しかし、外壁のバリアはこれだけでは消えない。


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