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第一話 レストラン“アフリカ”

◆登場人物◆

堀池香津美  主人公 ホテル・レストラン王の息子。

       父の経営しているレストラン

       “アフリカ”が心の拠り所。

       幼なじみの渋谷真理奈のことが好きなことに最近気づいた。



渋谷真理奈  堀池香津美の幼なじみ。

       父がシェフをするレストラン“アフリカ”を手伝い、

       将来は父の後を継いで女シェフになることが夢。

         堀池香津美の優しさに恋する17歳。


レストラン“アフリカ”のオーナーの息子、堀池香津美は

いつの頃からか女子高生の制服姿よりも、

ユニフォームに着替えて働く渋谷真理奈の方がキレイだと思うようになった。

香津美はいつしかそんな真理奈のことが好きになっていた。

渋谷真理奈はいつも傍にいて優しくしてくれる堀池香津美に恋をしていた。

香津美の凄い所はシェフの舌ともいえる繊細な味覚の感覚だった

どんな料理を食べても中に入っている調味料から隠し味が何かまでピタリと当てる。

それは天性の才能だった。

そんなある日香津美と真理奈の夢の国、レストラン“アフリカ”は火事で焼け落ちた。

真理奈は香津美の前から消えた。

「二人の愛が本物なら再びまた巡り会える。二人の愛は永遠だから。」


エンドレス・ラブ (ダイアナ・ロス&ライオネル・リッチー)


1981年8月15日から9週間全米No.1を獲得。

この曲を聴きながら読んで欲しい。

二人の愛は永遠だから・・・。


「上手い。こいつは最高だ!!」

オムライスにかけられたデミグラス・ソースを味わって、

堀池香津美は思わず笑顔になった。



深みと味わいのあるこのソースがこの店の味だ。


「ちょっと、香津美くん

顔にソースが付いてる。」


「おせいじならやめてよ。

ホントおかしいんだから。ふふ。」

そう言って笑う渋谷真理奈。



堀池香津美と渋谷真理奈は小中学校が同じ幼馴染。

エスカレーター式の学校だから高校までも同じだった。

“アフリカ”という名前のレストランで

腕を振るうシェフは真理奈の父勝まさる

幼い頃から父勝の後を追いかけ、

シェフの父を尊敬している娘の真理奈。



父に負けないくらいの腕を持っている真理奈だが、

父の勝は「まだまだだ。」

そう言って娘の腕を誉めることはしない。

このレストランを経営しているのは

香津美の母親 堀池れい子だ。



レストランとホテル経営をする

香津美の父親が初めて世に送り出したのが、

レストラン“アフリカ”。



メニューの中にアフリカ料理があって

アフリカ料理を出すわけではない。



香津美の父親がたまたま

米国ミュージシャンTOTOのファンで、

その当時流行っていた曲が“アフリカ”という

曲だから店の名前に付けた。



ただそれだけの理由で付けられた名前だが、

香津美は気に入っていた。

その後、香津美の父親は若くして亡くなった。



父が死んだ後、

苦労して母親のれい子が

ホテルとレストランの経営を続けた。

その後経営は破竹の勢いで伸び、

彼女は国内でも有数のホテル女王になった。

オーナーの息子 

香津美は“アフリカ”の味が大好きだった。



シェフの勝に母親のれい子も絶大の信頼を置いている。

先ごろ発売されたミッシェランの

東京レストランガイドにも

“アフリカ”は掲載されていて、

三ツ星マークが輝いている。



店の客層も様々で、

昼のランチには行列ができる数少ない

老舗店になりつつあった。

夜は夜で、

毎晩予約で一杯。忙しさのあまり、

毎晩厨房は戦争だった。



学校が終わると渋谷真理奈は

白衣のユニフォームに着替え、

店を手伝う。



これも名シェフになるための修行だとばかりに、

戦のような厨房の中で、

父と一緒に切り盛りをしている。



いつの頃からか女子高生の制服姿よりも、

ユニフォームに着替えて働く

渋谷真理奈の方がキレイだと思うようになった。



香津美はいつしか

そんな真理奈のことが好きになっていた。



渋谷真理奈はいつも傍にいて

優しくしてくれる堀池香津美に恋をしていた。



香津美の凄い所はシェフの舌ともいえる

繊細な味覚の感覚だった



どんな料理を食べても

中に入っている調味料から

隠し味が何かまでピタリと当てる。



それは天性の才能だった。

まるで料理の神様が香津美に

降りているようで周りの人間を驚かせた。



真理奈の父勝はいつも香津美に言っていた。


「香津美君、ホテル王なんかにならないで

料理の道に進んだ方がいいんじゃないか。」



「その君の持つ舌は奇跡的だよ!!」

そう言って笑う勝の表情は、

娘の真理奈にも見せた事がない。



「無理っす。修行するのが嫌いだもん。」



口に一杯オムライスを頬張りながら話す

香津美は手をダメダメと横に振る。



慌てて食べていたせいか、

香津美は少し喉を詰まらせ、

「真理奈、水、水。」

そう言った。



真理奈は香津美のために

コップに水を入れ持って来た。

そのコップの水を受け取ると香津美は飲んだ。



ふーっと息をする。またオムライスを頬張った。

その隣に座って頬杖をついて見ている真理奈。


「香津美クンて美味しそうに食べるね。」

真理奈は言った。



「そう。」

香津美は答える。



「こんなに美味しそうに食べてくれたら、

作る方もどんなに嬉しいことか。」

真理奈はそう言って

香津美の顔をニッコリして見ている。



香津美は頬張りムシャムシャと貪欲に食べる。

「これで本当にホテル王の息子かね。」

真理奈は言う。



「うるさい。水くれ!!」

そう言って食べ終わった香津美はお腹を擦り



「ああ、上手かった。ご馳走様です。」



そう言って真理奈の父勝に礼を言う。

(ああ、でもこんな人が旦那さまだったら、食卓が楽しいだろうな。)



そう思って運命を感じてしまう渋谷真理奈だった。



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