JK2
先生はぶっきら棒だ。
でもそこが好き。
人間がAIを好きになってはいけない決まりはないし、AIが人間を好きになってはいけない決まりもない。
だから私の恋路を邪魔するものはない!
はずなのに。
先生はイマイチ構ってくれない。
普通の生徒として接する。
真面目で真面目で真面目すぎる!
でもそこが好き。
先生に言い寄る生徒は私くらいしかいない。
友達に先生の良さを話しても「なんで?」とか「どこが良いの?」とかとかとか! みんな、なーんもわかってない!
別にわかってもらおうなんて思ってないけど。
いいもん。私だけがわかってれば。
「佐藤マリンさん、離してください」
「このまま一緒に学校行きましょうよ!」
私は先生の腕にしがみついている。
先生は振り払おうとしてるけど、全然本気じゃない。いつでも私なんて置いていけるけど、そうはしない。
それはすなわち、いくざくとりー! Sensei is ベリー 優しい!
「このままでは埒が明きません。せめて足を動かして前進してください」
「はーい」
先生と一緒に登校! なんと初めて!
交換日記のおかげで少しは前向き? 積極的? になれたのかもしれない!
あ、そうだ。交換日記のこと聞かなきゃ。
「先生、日記は書いてきてくれた?」
「はい。紙のノートという随分高価なものでしたので、丁寧に書きました」
「ありがとうございますっっ!!」
私のなけなしのお金で買った紙のノート。めっっっっっっちゃ高かった!!
こんな偏差値の低い高校の最底辺にいる私じゃ成績収入なんて生活できるギリギリ……。私も紅高校みたいな超頭いい高校に入れればタワーマンションにも住めたのに、現実はボロアパートで節約生活だよ……。
でもこのノートはそんな極貧節約生活をしてでも買う価値があったって信じてる!
それくらいこの交換日記計画に賭けてるんだから!
「そ、それで、どうでした?」
「鉛筆というものを初めて持ちました。黒鉛の擦れる感触は悪くないもので、良い経験をさせていただきました」
「ちーがーう! 内容っ!」
「佐藤さんは段落というものをご存知でしょうか。これは日本語には限らず、どの言語にもある文章の可読性を上げる作法です。日本語では段落後は一文字空けて書き始めますが佐藤さんの文章は……」
「書き方じゃないって! なーいーよーおー!」
「……好意は伝わってきました。ただ私にはどうしていいか分からないというのが本音です」
「っ!」
なにこれ。可愛すぎる。なにこの生き物。
「私が教えます。ぜひ、付き合いましょう!」
「付き合うというのは双方の同意、もしくは好意よって成立するものです。私は佐藤さんに特別な感情を抱いているわけではありません。今はまだお付き合いすることはできません」
すごくきっぱり断られた……。
あれ、でも?
「今、『まだ』って言いましたよね!? じゃあいつかは!」
「……一時限目の準備があるので私は急ぎます」
今度はしっかり振り払って、先生は私を置いて行った。
私は一人、ぼーっとしながら立ってた。
ショックなわけじゃない。どっちかっていうと嬉しい方。
やっぱり私は先生のことが好きだった。