プロローグ
俺、加藤 裕は平凡な人間だった。
特に特出した能力はなく、高校では何においても常に平均で平凡だった。
それが何よりも一番楽だったし安全だった。
クラスにいじめが起きてようと何も接しない。接すれば次は自分が狙われる。そんなのは嫌だ。
俺だって助けようしたことは何回かあったと思う。
しかし、俺は助けた事は一度も無かった。
いや、助けられなかった。
いつも行動を起こそうとすると思い出すのだ。
あの頃の事を。
俺がまだ小学生だった頃、クラスでいじめられていた友達(仮にAとしよう)を助けた。
俺はAの事を親友と思っていたから助けるのは当然だと思っていた。
でもAは違った。
Aは、俺がAを助けた直後からAをいじめていた奴らと俺をいじめ始めたんだ。笑っちゃうぜまったく。あの頃は何でか必死になって考えていた。
しかし答えは見つからなかった。
でも今となってはもう簡単。
要するに生贄が欲しかったのさ、自分がいじめられないように。
そして今に至る訳だ。
そんな感じで俺の生活は平穏に送られていく。
……はずだった。
あの事件が起きるまでは――。
ある日、いつも通り日直を押し付けられた俺は帰りが遅くなっていた。これでも親友の拓海に手伝ってもらって早く終わった方だ。
「じゃあな、裕!」
「まあ明日、拓海」
拓海とは家が逆方向なので校門で別れる。
拓海みたいな友達を持った俺は運がいい。
冬の日暮れは早い。そう思いルンルン気分混じりに早く、帰ろうとした。 その時近くで物音がした。
誰だ?と思い声をかける。
「誰かいますか?」
「......」
気のせいだと思い帰ることにした。
それから丁度3歩目の右足を踏み出した時、叫び声が聞こえた。近くの体育館倉庫からだ。
「行ってみよう」
固唾を飲みながら鍵のかかっていない体育館倉庫を覗き込む。
「誰?」
そう声をかける。
「私......お、織田です」
「あぁ、真面目さんか」
真面目さんとは、字の通り真面目な子だ。おまけにすこぶる優しい。ちょっとだけ好きかも知れない。
「こんな所で何してんの? 服もはだけてるし......もしかしてそういう趣味が......」
「違いますっ! ...... って後ろ!」
「えっ」
俺は後ろからバットの様な何かで殴られた。
「痛っ! ......何すんだよっ!」
痛む背中をおさえながら振り返る。
そこにあったのはバットを持った拓海の姿だった。
「拓海ぃぃ!」
俺は全てを察した。
拓海は俺と別れた後、体育館倉庫で真面目さんかを襲ったのだ。
「どういう事だ!」
叫びながら拓海に摑みかかる。
「......」
黙り続ける拓海
次の瞬間、俺の頭に衝撃が響く。
「ぐっ......」
頭を押さえ込みながら倒れこむ。
「ごめんな......裕......でも裕が悪いよ......タイミング......タイミングが......」
「......」
「だから......死んで」
そう言い終えると拓海はもう一度バットの様な何かを振り下ろした。
グシャ。
そう聞こえた気がした。