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真夏の雪に逢いに行こう  作者: 七瀬渚
番外/真夏の雪
110/180

其ノ拾~頂き物紹介(衣装交換&企画参加イラスト)~



 こちらは『真夏の雪に逢いに行こう』へ頂いた素敵な贈り物の紹介の場。応援して下さる皆様へ、こうして第四弾をお届け出来ることを大変嬉しく思っている作者でございます。


 毎度のことながら語り手は夏呼で参らせて頂きます。作者はひとまずこれにて。また後書きにてお会いしたく存じます。


 今回やや長めになります。是非ごゆっくりとお楽しみ頂けましたら幸いです。





 皆様、この度はお越し頂きまして誠にありがとうございます。


 愛しい娘との再会で再び歩き出す希望を得ました。そうして七十五年の生涯を全う致しました、私、秋瀬夏呼と……



「夫の秋瀬陽南汰じゃ」


「磐座樹ですわ」


「柏原迅でございます。どうぞお見知り置きを」



 いつの間にか賑やかになりましたね。



 かつてはひたすらにただ一人を想い、孤独と愛を噛み締めて綴ってきた手記にも、やっと確かな題名がつきました。今、こうして集うことが出来ますのも私たちが皆過去の人間だからこそ。


 時は現在。されど私がお送りする番外編もいよいよこれが最後ですから、こんなときくらい前世の波長で。深く懐かしい想いで語らせて頂きたく。



「相変わらずおめぇは固いのう、夏呼。最後くらい楽しくいかんかい」


「うふふ、そうですよ。まぁ……波乱続きではありましたけど、大切な思い出も沢山作れたではないですか」


「私も未だゆずり葉の精神を失っておりませんぞ! 何度生まれ変わっても、後世の輝きを繋いでみせますとも。悔いなし! と。胸を張って言えるようにですね」



 現在では“キャラ”と言うのでしたっけ。自分自身のこれを変えるのはなかなか難しいところでございます。


 しかし皆様の仰ることは最もかも知れませんね。私の愛するあの方だって、純粋に真っ直ぐに、人の幸せを願う方でございますから……



――笑顔。



 やはり難しいですが、精一杯やってみせましょう。これもまた冒険でございます。



✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎



 今回の頂き物は、何と! 以前私めのイラストを描いて下さった千岩ちはや黎明れいめい様からです。


 それも千岩様の書かれた『ムゲンノイチノアリス』と、こちら『真夏の雪に逢いに行こう』の登場人物同士での衣装交換。まずは千岩様のイラストからでございます。どうぞご覧下さいませ。



 ↓↓↓↓↓



挿絵(By みてみん)



 色鉛筆の柔らかさが可愛らしい画風を見事に引き立てております。この素晴らしいイラストについてご説明致しましょう。


『ムゲンノイチノアリス』に登場されているヤマネ様(左)が秋瀬夏南汰の衣装を、チェシャネコ様(右)が夏呼の衣装を着て下さっております! そう、私も参加させて頂いたのです。


 更に、ここには千岩様の細やかなお気遣いが施されているのですよ。


 ヤマネ様が着こなす夏南汰様の袴姿には、実に相性の良いトンビコートが。とても凛々しいです!


 チェシャネコ様が着こなす夏呼の着物の袖には、勿忘草の柄を入れて下さっているのです。なんという細やかなお気遣い……!


 手を取り合いながらも、互いにツンとそっぽを向かれているお二人。普段はいがみ合っている仲だと聞いて納得です。それでもお二人は愛らしいのですけどね。


 そんな間柄でありながら、仲の良い私たちの役を演じて下さるなんて、もうなんとお礼を申し上げて良いのやら……


 ちなみにこのお二人のイラストとエピソードは『ムゲンノイチノアリス』のおまけにて掲載されております。魅力的な登場人物たちが彩る物語と共に、是非そちらもご覧になってみて下さいね。



 千岩様のマイページ →http://mypage.syosetu.com/487329/


 小説『ムゲンノイチノアリス』 →http://ncode.syosetu.com/n0333dx/




 次は、七瀬が描かせて頂いた方の紹介です。



 ↓↓↓↓↓



挿絵(By みてみん)



 嗚呼、あの頃の夫にあの頃の私。そして真ん中にあの頃の娘……とても懐かしい思いです。夏南呼ななこは一歳くらいの頃ですね。


 ご説明させて頂くと、夫・陽南汰がアリス様の衣装、娘・夏南呼が帽子屋様の衣装、私・夏呼がモカ様の衣装を着させて頂いております。



「ありゃあなかなか楽しかったのう! ほれ、見てみぃ! 夏南呼が儂を見てこんなに喜んどるぞ!!」



 ええ、そうですね、アナタ。



 ……と、答えておきます。



 実際はアリス様がいつも身につけていらっしゃる“ヘッドフォン”という音楽機器に付いているウサギが気にいっていたのですけどね。娘がなかなか懐いてくれないと悩んでおりましたから、夫は。余計な水は刺さないでおきましょう。


 恐れながらも皆様、どうかこのまま温かく見守ってあげて下さいまし。


★☆★☆★☆★☆★☆


 続いて紹介させて頂きますのは企画参加イラスト。ゆえに七瀬作なのでございますが、頂いた機会に感謝を込めて何枚か載せていきたいと思います。お付き合い頂けましたら幸いです。



 ✴︎2017.8.13『HAN-RA企画』(主催:上条武流様)



挿絵(By みてみん)



 なるほど、半裸のことだったのですね。同シリーズ作品『ASTRAL LEGEND』に登場しているレグルス様とシャウラ様だそうです。殿方の肌がこうも前面に打ち出されると、その……いささか目のやり場に困ってしまうのですが。


「まぁそういう企画じゃけんのう」


「漢たるもの、心はいつも裸一貫ですぞ!」


「夏呼さんは恥ずかしがり屋さんなのね。では次を見てみましょうか」



 ✴︎2017.9.3『ファンタジー企画』(主催:上条武流様)



挿絵(By みてみん)



「こっちは『半透明のケット・シー』に出ているジュリという娘じゃな」


 ちょっとお待ち下さい。


「あ? なんじゃ、夏呼」



 何故作者は半裸と指定された訳でもないのにこんな危うい衣装で描いているのですか……!! こんな、こんな……っ、年頃の乙女だというのに……!



「仕方ないですな。これは作者がよく用いる“魂の比喩”というものですよ。想像を巡らせる際に、いわゆる一般的な衣装がしっくりこないときがある、などと作者は言っておりますから」


「そういや夏呼、おめぇも確か際どい格好で写ってるやつが……」


 次に参りましょう。


「おい、無視かよ」



 ✴︎2017.9.17『秋の特集企画』


 つい最近のものです。いつも素晴らしい企画やイラストで楽しませて下さっている上条武流様と花守くう様主催の企画でございますね。



 さて。秋と言いますと、いろいろありますね。芸術の秋に食欲の秋……



「“こすぷれ”の秋だそうじゃぞ」



 !?



「仮装のことじゃ。今回は春日が吸血鬼の格好をしとるのう」



 これ如何に。



 ↓↓↓↓↓



挿絵(By みてみん)



 いつもと違う描き方をしているせいでしょうか、これまでとはいくらか雰囲気が変わっているようですね。吸血鬼の衣装……私には心当たりがございます。


 何せこの春日許さんけしからん調子に乗るなは、大人しそうな顔をして夏南汰様の露わなお肌に噛み付くような抜け目のない人ですから……


「おい、夏呼。本音が漏れとるぞ」


 あら、そうでしたでしょうか。



「ちょっと見て、雪之丞くん何か持っているわ」


「おや、カナタと書いてありますね」



「おぉ、なんでもこれは演劇を意識したそうじゃけぇ、ショートストーリーなるものも一緒に作ったらしいぞ。春日と夏南汰が演じとるらしい。夏呼、おめぇも見るか? あまりお勧めはできねぇが」



 …………



 ……陽南汰様。最後のその一言ですでに嫌な予感しかしないのですが。


 い、いいい、いいですよ。私も新世代の淑女を名乗る者。ここは悠然と構えて最後まで見届けてみせようではありませんか。



(※以下、企画参加の際にブログに掲載致しましたショートストーリーです。若干の残酷描写が含まれますので、苦手な方はご注意下さい)



 ↓↓↓↓↓



 SS【気弱ヴァンパイアと人魚姫の生き血】


(ヴァンパイア:春日雪之丞、人魚の青年:秋瀬夏南汰)



 崩れそうな煉瓦造りの壁面を何処から溢れたかもわからない滴りが濡らしていく。


 夕闇の訪れを見上げた烏たちが続々と飛び立って、アルミのゴミ箱を倒した黒猫がけたたましい音に驚いてにゃあと鳴く。


 アスファルトに染み込んだガムの跡。乾いた足音を立てて転がっていく何処ぞからの紙切れに……



 今夜、夜行列車にて訪れた男が見上げる先にもまた貼り付いている。街中の至るところに飾られた手配書。



 清潔なシャツにベスト、くるぶしまでの長いマントを纏ったその男の装いは、塵だらけの鬱蒼とした路地裏にはなんとも不釣り合いだ。

そんな彼の手にも一枚の手配書が在る。路上で酒を飲み交わしていた二人組に、男は迷うことなく近付いてそれを見せた。



「この人魚を探しているんだ」



 如何にもがらの悪そうな目つきで見上げた二人組だったが、手配書に目を凝らすなり、ふふと意味ありげな含み笑いなんかをする。興味を示した二人組が口々に喋り出す。



「おう、兄ちゃんも人魚の生き血探しかい」


「ありゃあ不老不死の効力があるっていうからな。ライバルは多いぞ~」


「しかも見ろよ、この写真……」


「ああ、なるほど! それでこの賞金額か。俺も聞いたことがあるぞ。女の人魚の値を上回るのがこういう美男子の人魚なんだってな」



 やんややんやと実に楽しそうに騒いでいる二人組に、マントの男はふっと密かにため息をついて尋ねる。


「それで、知ってるの?」


 高みから見下ろす男の瞳はただひたすらに冷たい。



 やがて顔を見合わせた二人組がうんうんと力強く頷いた。片方が太い指先で彼方を示して言った。



「ここから南側へ5キロ程先へ行った海岸沿いで男の人魚を見たって話を聞いたぞ! 多分そいつなんじゃねぇのか?」



(ああ、君はやはりここに居たのか)



 手配書を丸めた男が二人組の横を通り抜けようとした、その時。



「おい待て、兄ちゃん」


「ここまで聞いといてまさかタダってことは無いよなぁ?」



 身体を左右に揺すって近付いてきた一人が男の肩を強く掴む。後ろのもう一人が空になった酒瓶を勢いよく壁に叩きつけた。



「へっへっ、そのなりだと兄ちゃん? 貴族だな。何故賞金首なんか追ってるのか知らんが金ならたんまり持ってんだろう?」


「我ながら名案だぜ。賞金首を狙うよりこっちの方が手っ取り早い。痛い目に遭いたくなきゃあさっさと有り金全部よこすんだな、このボンボンが!」



 威勢良くにじり寄られても対する男は静かなものだった。静かなまま、その瞳の色だけが変わっていく。



「あげられるものなんて無いよ?」


「んだとぉ!?」



「……貰うものならあるけどね」



 気弱そうに垂れ下がった瞼の奥で、琥珀の色から血潮の赤へ。



「……っ!? おい、見ろよコイツの目の色……っ」


「な……っ、お前、まさか……っ!」




『うわぁぁぁぁぁぁ!!!』




 長旅で乾いた喉を二人分の血で潤した男は、ついさっき耳にしたばかりの南側を目指して歩き出す。




 ゴロツキばかりが徘徊するこの街は、かつて男が生まれ育った街だった。


 物心ついた頃にはすでに治安は荒れていたけれど、この近年で状況は更に悪化している。



 手配書なんてものは本来、罰せられるべき者を野放しにしないようにする為のもの。しかし、時代は変わり、世は荒み、今となっては人間たちの私利私欲の為にばら撒かれるものとなってしまった。


 今日もまた世界中で、そしてこの街でも、罪もない獣人や人魚が賞金目当てに追われる身をなっている。




 吸血鬼である男も例外ではなかった。

 いいや、むしろこんな世になる前からだ。


 人の生き血を喰らうという習性から、吸血鬼たちは有無を言わせず悪と見なされ迫害を受けてきた。だが実際のところ、人間たちの言う弱肉強食と一体何が違うと言うのか。食わねば生きられぬ。ただそれだけのことなのに。




――なんで、なんで……っ、僕がこんな目に……!――




 今に辿り着くであろう南の海岸沿いを……


 幼き日の男は賞金稼ぎたちに追いかけられ、泣きながら駆け抜けていた。


 家族も見失ってしまった。もう、自分を守ってくれる者など居ない。



 絶望に打ちひしがれていた途中のこと。



 突如ぬかるんだ砂浜に、追手たちは次々と腰まで飲み込まれていった。呆然と立ち尽くす少年時代の男だけが無事だった。



――早く逃げて!――



 男の涙目には確かに映っていた。



――逃げるんだ!!――



 岩肌に身を乗り出した麗しい人魚の姿。その胸に光る銀色には覚えがある。いつか砂浜に遊んでいたときに一度だけ会った子だとわかった。




 それから出来るだけ遠くの街へ逃げて、時間は随分かかったけれど、身の上を隠して暮らしていけるまでになった。


 ある日、自宅の屋敷へ人魚の手配書が舞い込んできた。



 ……きみ、は……っ。



 身体を見なければ少女と間違えそうなくらい、相変わらずの愛らしい顔だった。いや、正確には、今の今までずっと間違えていた。



 それでも想いは変わらなかった。





 時は現在に戻る。

 もう立派な大人となった吸血鬼の男はいよいよ長らくの時を経てこの海へ戻って来た。


 青白い満月を見上げていた矢先に、ぬかるんだ砂浜に足を取られた。ずぶずぶ、ずぶずぶと、このままじゃ飲み込まれるっていうときにだ。





「君も私の生き血を採りに来たの?」




 ずっとずっと探していた姿が岩の上から見下ろしていた。


 月明かりに照らされて青白く、幻想的に。



「言っておくけど私は人魚姫じゃないよ。見ての通り男だ」


「君のような綺麗な男も価値が高いとされているよ」


「はぁ……人間はほんと好き勝手言うね。そんなのただの憶測でしょ」


「僕は人間じゃない。幼い頃、君に助けてもらった吸血鬼だよ」



 腰まで飲まれた男は、人魚の胸のあたりを指差して



「その雪の結晶のネックレス。僕があげたものだ。持っていてくれたんだね」


「……っ!」


「君が覚えてなくても、僕は、ずっと……」



「違う! このネックレスは、砂浜に落ちていたのを拾ったんだ。吸血鬼も人間も同じだ! 私を狙っていることに変わりはない。私は……騙されないぞ!」



(ああ、君はもう……)





挿絵(By みてみん)




(誰も信じられなくなってしまったんだね)




 砂で腹部が圧迫されている為か次第に息が浅くなっていく。それでも男は届け続けた。



「確かに僕は、君の生き血を求めて来た。そしたら僕はもっと強くなれる。永遠の命も手に入れて……」


「フン、やっぱり」



「永遠に君を守るんだ」



「なん、だって?」



 がっちりと身体を固めていた砂が、圧力が、解けていくのがわかった。


 岩からひらりと身を投げ、波打ち際まで泳いできた人魚が目を丸くして覗き込む。



「自分の為ではなく? 私の為に……君、おかしいんじゃないのか。そんなの今まで聞いたことないぞ」


「ふふ、僕もおかしいと思うよ。君に出逢った日からずっと、僕の心は甘く痺れたままだ」



 砂から這い上がると、濡れた頰にそっと手を伸ばす。触れるか触れないか寸前のところでひょいと逃げられる。



「待って、私は……君が思い描いてきたような“姫”じゃない」



 怯えたように震える円らな眼差しを受けて男は思った。



 姫……何をもって姫と称するのだろう。



 王族に生まれることか?


 女性であることか?



 いいや、人間たちがしばしば口にするそれは、どうも違っているように思える。人間なんかから学ぶなんて不覚ではあるが。



「姫……」


「だから、ちが……っ」



「ずっと独りで震えてきたんでしょう? もう大丈夫だから、僕がずっと傍に居るから、君を守る為の力を僕に頂戴」


「…………」



「力を抜いて」





 そっと首筋へ鋭利な歯を立てた、吸血鬼の男は知らない。


 そっと瞳を伏せて、涙を流し、全てを任せた人魚の思いを。




挿絵(By みてみん)





――気弱そうなヴァンパイアへ。



 ずっと独りなんだと思ってた。


 この目に映る全てが嘘に思えた。


 そう思ってないと生きていけないような気さえしていたから。



 だけど……



 不思議だね。吸血鬼って冷たいはずなのに、凄くあったかいんだ。


 涙が溢れてくる。



――今なら、もう、騙されてもいい――






――愛しい人魚姫へ。



 そう、君を姫と呼ぶ理由なんてこれで十分だよ。


 愛しい者を示すとき、人はよくこう言うんだ。



 君の為ならば、僕は永遠にだってなる。


 不老不死となった僕はいつか君を失って、孤独を迎えたりするんだろうけど……


 君に笑顔をもたらすことが出来たなら、きっと、孤独さえも宝となるよ。



 傍に居させて。


――ずっと君が欲しかった――





 時を遡るみたいに。


 熱く甘く溢れてくる感情のせいで、言葉を紡ぎ出すこともかなわない二人。



 それでも想いは互いへ流れ込む。



 孤独なヴァンパイアと人魚姫の密やかなる契りを青い月と煌めく海だけが見つめていた。




――Fin――






 ええ、わかっております。わかっておりますとも。


 例え性別は男性であれど、守りたくなる儚さを兼ね備えた夏南汰様が演じるならば、やはり人魚姫ということになるのでしょうね。それくらい私だってわかってはおりますけれど……



「ちなみに夏呼」


 なんでしょうか、アナタ。



「おめぇがこの演劇を観たら、多分こういう反応をするんじゃないかって七瀬が予想しとるんじゃが……」



 ↓↓↓↓↓



挿絵(By みてみん)



「図星だな。今のおめぇの顔そのまんまじゃ」



 う……!


 そ、そんなはしたない顔なんてしておりません!!



✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎



――海。



 大自然の中に於いては実に小さな私たち。海中に降りしきる雪は幾つもの命が生まれては終わりを繰り返している、この世が循環している証。


 ふと風が凪いだなら、煌めく星々の溶け込んだ様にうっとりと魅せられる。



 そう、此度の冒険を例えるならばこれが最も相応しいように思えます。


 間もなく終わりを迎えようとしているこの番外編でございますが、それは一つの波止場にて羽を休めることに過ぎません。未来は果てしなく遥か先まで続いていく。私たち魂の船旅はこれからもずっと、終わりなどしないのですよ。



 繰り返しになりますが、私には心に決めていることがございます。



 それはもちろん時を超えてなお求め合うお二人を再会に導くこと。


 損な性格だと言われてしまっても仕方がないでしょう。最愛の人が最も望んでいることなのです。恋敵という名称だって、それはそれで認めているという証拠ですよ。認めざるを得ません。



「まぁ止めはせんが、程々にやるんじゃぞ、夏呼」


「そうよ。貴女の人生は貴女のものなんですから」


「夏呼殿にも譲れない願いがあるのでしょう?どうかそれだけは大切に、手放しませんよう」



 皆様、本当にありがとうございます。ご安心下さい。昔も今も尊い存在に支えられて参りました。


 夏呼は幸せでございます。



 今、皆様が仰った通りです。これは私の人生、私にも譲れない希望がございます。魂在る限り続いていく船旅にて、私は……



 まず愛しい娘との再会を願います。例え今世では叶わなくとも、いつかまた必ずと、希望を捨てずに想い続けます。与えても与えても足りなかった愛情の続きを届けさせてはくれませんか。



 そして永遠を背負いし吸血鬼ヴァンパイアと、全てを託した人魚姫の橋渡し。あの雪の結晶の役割を




挿絵(By みてみん)




 どうか私に。



 うふふ、健気なんかじゃありませんよ。ちゃっかり者と言われても文句は言えません。



 だってあれはあれで唯一無二の特別な存在なんですもの。





 皆様の応援にファンアート、コラボや企画といった楽しい機会まで頂いて、連載開始してからはや十ヶ月。私もここまで旅を進めてくることが出来ました。



 今までの番外編でも少し触れさせて頂きました。


 “あるキャラクターが積極的に引っ張っている方向”


 これはナツメのことでございます。当初の予定では彼女が自らの寿命を縮める選択はありませんでした。しかし、魂の伴侶であるユキがたった一人で孤独と運命を背負っていくことを彼女は許しませんでした。


 これにより風向きが変わったのです。


 ラストにはなんらか救いになるものを持ってきたいと思って考えて参りました。それでも当初の予定とは異なります。



 最終章もやはり主人公視点であることに変わりはありません。そしてちらっと申し上げますと、舞台がまた大きく変わることになるかと思います。



 最後はちょっと余談になりますが、企画参加にて書かせて頂いたSS。ユキと夏南汰にいつもと違う格好をさせていつもと違うキャラクターを演じさせてみる、という試みだったのですが、書いているうちに気付いてしまったのです。


 我が身を犠牲にして永遠を得る。


 これってまさにユキなんですよね。更に言うなら不老不死の力が手に入ると言われても、作者は断じて拒否すると思います。


 本作とも何処か通ずるあのSSに於いて、不老不死はむしろ呪いのたぐいとしてえがかれている。だっていつか人魚に先立たれても、彼はたった独りで生き続けなければならないのです。



 永遠ほど残酷なものは無い。



 だからこそナツメも彼を孤独の輪廻から解き放ちたいと強く願ったのでしょう。



(ちなみに吸血鬼と人魚姫の物語ですが、いつか更に細かく書いてみたいという密かな願望がございます。どうもユキと夏南汰のイメージが強くなってしまいましたけどね。物語はまた別のものとして、もしかしたらそのうち実現するかも知れません)



 夏呼視点の番外編もこれが最後ということで、名残惜しいところではございますが、そろそろ締め括りとさせて頂きます。本編も最後までお楽しみ頂けるよう、最善を尽くして参りますね。



 ご覧頂きました全ての皆様、ここまでのお付き合い誠にありがとうございます。そして素敵な贈り物を下さった千岩様と楽しい機会を下さった上条様と花守様に重ねて感謝申し上げます。



 七瀬渚



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