二部作
ここらへんから…かな?
僕に血らしいものが流れ始めたのは。
「ひと〜つ!!ゴホゴホッこの乱れた世の中に」
僕の目の前に突如現れた二人のうち、片方の女の人がひとつに束ねた長い金髪を揺らしながら片足をあげてつつも、右手を頭の後ろにまわしてポーズを決める。
あれ?このパターンは…もしかして…。
「ふた〜つ!!言うセリフを忘れたなんて言わないぜよ!!」
片方の男の人は左手を前につきだしながらも、軽くウィンク。
って…セリフ忘れたのかよ!!…というかなんだコイツら…。
「「ワハハハハ!!正義の味方…イカの禁玉味噌登場!!」」
ポーズをしっかり決めた二人組みは僕にとびきりの笑顔を向ける。
もしもこの二人が漫画に登場する人物であるのならば…二人の周りには得体の知れないキラキラしたものが飛んでいるそんなところだろう。
「…………お前ら帰れ」
だが、残念ながら僕はゲームの続きがしたいだけであって、くだらない戦隊物や、まるで少年ジャ○プに載っていそうな友情、愛、結団…には皆無と言っていいほどに興味はカケラもない。
たまたまお前達がゲームの前に落ちてきたから、そのつまらない戦隊ごっこに付き合ってやっただけの話。
僕は先程まで呆気にとられていた顔が、みるみると苦虫を噛んだような顔になり精一杯二人を睨む。
「帰れ」という言葉を聞いた男女の二人組は、目を極端に大きくし、次の瞬間には顔を合わせてボソボソと話を始めた。
「ケホン、あれ?なんですか!!この子…たしか小学二年生ってこんなにも殺気がムンムン漂う年頃でした!?ゲホ…」
金髪の女の人は僕に聞こえるほど大きな声で隣の男性に耳打ちした。
「絶対違うんだにょ!すくなくとも俺っピが小学二年生の時は初恋の時だった!!」
「いや…ゲホゲホ、ちがッ…あのですね、誰もあなたの小学二年生のことなんて聴いてませんよ!むしろ不愉快です。やめて下さい、ゴホ」
「そうあれは俺の隣の席に座っていたしずかちゃんに消しゴムをかしてもらったのがキッカケだった…」
そう言って耳打ちされた男性の方は女の人の言葉を見事なほどにスルーし、遠い向こうを焦点なく懐かしそうに見つめては深いため息をついている。
あ〜…なんだろうな…コイツら…。
あ…そうだ、わかったぞ。この二人は僕の最高に苦手なタイプだ!
「だが…俺の前に強敵が現れたんだ…。ヤツの名前はジャイアン…俺のクラス一番のガキ大将であった。ヤツもまさか…まさか…しずかちゃんのことが好きだったとは!?!?俺はその時に最高にして最悪のライバルができたのだ」
男の人の頬を一筋の涙が伝う。まだ男の話は続いていた。
その頬を思いっきり殴りたいと思ったのは僕だけだろうか?
「いや…もう……妄想の世界から戻ってきてくださいよ。ゲホ、イカ味噌さん…頼みますから-…」
そういいながら金髪の女の人涙目になりながらも「イカ味噌」と言うらしい男の体を大きく揺すり続けた。
イカ味噌と呼ばれた男は相変わらず-…遠い向こうを見続けたままだ。
イカ味噌…イカ味噌…イカ味噌…イカ……考えれば考えるほどふざけた名前だ。
ふざけるのは、その君の性格と登場シーンと、君が現在進行形で右足に踏んでいる僕がこれから遊ぶ予定だったはずのゲーム機だけにしてほしい。
あきらかにイカ味噌と言う男に踏まれたゲーム機は…へこんでいて…まぁ、一言でまとめると……ゲーム機は二度と再起はしないだろう…。
あ〜…イカ味噌だっけ?その頬を思いっきり壊れたゲーム機で殴りたいと思ったのは僕だけだろうか?
女の人は何時までたっても妄想の世界から抜け出せない様子の相方を睨み、すぅと息を吸い込んで大きな声で叫ぶ。
「ゴホン!!!!もう!!イカ味噌さん…私達の初仕事なんですからね!!!!じゅ・う・よ・う・せ・い!!を分かっているのですか!?アイツらが来る前に…とっとと終わらせてしまいましょう!」
一体何の話をしているのだろう。僕は黙って二人を睨み続けた。
しかしながら、二人がしようとしていることにだいたいの想像はつく。
ここの所…僕は病院の食事をとっていない。
だから、僕専門の医者…あるいは「あのヤロウ」が何かを企んでいるのだろう。
いや…でも「あのヤロウ」は違うよな。「あのヤロウ」は僕に死んで欲しいはずだ。
生かそうとするはずがない。「あのヤロウ」にとって利用価値のない僕には…。
あ〜…クソッ胸糞が悪くなってきた…。
まぁ、どちらにせよ…あの二人組みはさしずめ僕の元気つけようと…か?
違うにせよ…どうせ、たいしたことではないだろう。
「はッ!!すまソ〜ング!禁玉!!そうだった!俺は大切なことをわすれていたぬ〜ん…俺らの初舞台だった…ペケポン!!」
イカ味噌というヤツはまるで夢が覚めたように目を何度も瞬かせた。
女の方の名前は…禁玉というらしい。またまたふざけた名前だ。
ふざけるのは、その性格と登場シーンと…以下略。
「ケホゴホ!!そうですよ!!今回の仕事のミスは許されません!」
金玉…ではなかった、禁玉という金髪の女性は必要以上に首を何度も頷かせる、その度に揺れる長い金髪はすこし邪魔ではないんだろうか、と疑問に思った。
あとあとあえて言っておくが、アホな二人組みは忘れているようだが…僕もここにいるんだぞ?
更に言うなら僕は無視されることが大嫌いだ。
「おい…。聞こえなかったか?帰れと僕は言ったんだ。…再度言う。帰れ!!どこからでもいい、ドアからでも、窓からでも、むしろ……便所から帰れ!」
二人は微動もしなかった。
僕の声が聞こえなかったのだろうか?二人は口をニヤつかせながら僕を見ていた。
いや…しかしながら、これほど大きな声で聞こえていないはずはない。
だとしたら…まったく不愉快だ。市民…いや、この上ないアホ二人に命令を無視して笑われるとはな…ハッ!
僕も落ちたものだ…たかが…病気で……こんなヤツらまでこんな目で見られるのか?
「いや、にゃ〜。実はある仕事をしないと…お家には帰れないだよなナ〜プウ」
「ゴホゴホ、そうなんですよ〜。まったくその仕事がまた面倒でしてね」
二人は相変わらず頬を緩ましたままで、一方的に僕に語りかけた。
「え〜、ゴホン、ゲホ、ゴホゴホン。言いにくいですが田中太郎あなたの命をもらいに来た地獄の死者とでもいいましょうか?」
「ムフフ☆俗に君達の世界で言われる西洋では死神…あるいは日本では鬼…イカの禁玉味チームとでもいおうカニ?」
「だから何だ?」
これが僕の純粋な一言だ。
二人は微笑んでいた頬を今度は引きつらして…お互いに顔を合わせまるで信じられないような表情を僕に向けた。
僕の眉間のシワは深くなる一方だ。
「ゲホゲホ!ちょっとぉおおおお!!君何年生?まるで中年のオヤジみたいに夢がないですね!?!?」
禁玉という女性はピンクの口をパクパクと金魚のように動かしながら僕を唖然として見ていた。
まるで、驚かす方が驚かされたっていうかんじかな?まぁ、僕はそんな死神とかサンタとかサタンとか目に映らないくだらない者は信じない主義でね。
「うそ〜ん!!アンビリ〜バボ〜!!しんじら〜れな〜い!!君実は子どものフリして中身は大人…名探偵コナ○だったりしない!?」
イカ味噌と言われた男性は僕の言葉に悩みに悩み…あげくの果てには頭を抱えて悩ますばかりだ。
「ありがとうクズ共、最高の褒め言葉だ。さしずめ君達はあのヤロウから命令されて来た殺人鬼か?それともなんだ?医者のヤロウ僕が偏食ばかりしているからついに脅しにきたか?」
ニッコリと僕は彼と彼女に微笑んだ。
目目目目目目目目目目目目
ここまでお読み頂きありがとうございます!!
イカ味噌チームが言う
「「アイツら」」
と、田中太郎君が言う
「あのヤロウ」
は、ちゃんとした理由があります(・∀・)
さてさて…ついにご対面。
時々「イカ味噌」のテンションが自分でもうざいなと思いつつも…あのテンションで小説いつも書いています⌒
次回は…もしかしたら、田中太郎君…死んでしまうかも?
です
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