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女も敷居を跨げば七人の敵あり

 ギイイィィィと嫌な音をたてて扉があくとメイが地下牢に入ってきた。扉が開いた瞬間少女がビクッと反応したのだがメイには見えていなかったようだとわかると少女はほっと息をついた。

「マスター、ただいまもどりまし…マスターどうしたんですか!?」そう言ってメイが大量のドレスと共に少女のもとへ駆け寄ってきた。

「おかえりなさい、メイ。そんなにたくさんなくてもよかったのに。」少女はメイの言葉を無視して続ける。しかしメイは尋ねることをやめない。

「まったくどこから持ってきているのかしら。ねえ、メイ。」

「国王陛下がおっしゃるには、今回いただいたドレスは全てジュリア王妃のものだそうです。それより、マスター。そのドレスはどうされたのですか?」メイは真剣な顔で尋ねた。

「はぁ、諦めてくれればいいのに。これ?さっきあいつがやって来て破るだけ破って、せっかくメイにはずしてもらった鎖をつけ直して出て行ったのよ。」そういう少女の着ていた素敵な赤いドレスはいたるところが引き裂かれている。そして少女の首と足についていた鎖がさらに太く頑丈なものに変わっていた。

「そうでしたか。とりあえずこれを着てください。」そう言って持ってきたドレスから1着取り出して少女に渡すと、残りは地下牢内に備え付けてある衣装箪笥に丁寧にしまっていった。


「あいつ、何考えているのかしら。私が母様のものを着られるわけがないのなんてわかっているはずなのに。」少女は、今度はどんな嫌がらせなのかと思案していた。

「国王陛下からの純粋な好意ではないのですか?娘に母のものをあげたいという。」メイはそんなことないなと内心わかっていても希望論を言わずにはいられなかった。それがより少女を傷つけると知っていても。

「あの男がそんな事を考えるわけがないってメイも分かっているでしょう。それにそんな思いやりがあるなら私のドレスを破ったり、引き裂いたりなんてしないと思うけど…これはあれかな。あいつが破ったこのドレスをずっと着ていろと言っているのか。本当に悪趣味だな。」そして今着ている破れたドレスを脱ぐ。

 少女の体に、昨夜の後が生々しく残っているのをみるとメイは少し悲しそうな表情をしていた。


「マスター、他にドレスは今日持ってきたものしかないのですよ。破廉恥な格好はおやめ下さい。」メイが少女にそう釘を刺す。

「わかっているわよ。母様のドレスでいいからちょうだい。あいつが触れたものをいつまでも着ているぐらいなら母様のを着るわ。…母様、あなたのものを不肖な娘が着ることをどうかお許しください。」少女はそう言ってどことへもなく頭を下げた。

「了解しました。ではマスター私は一度下がらせていただきます。」メイは悲しそうな表情でそう言った。

「あぁ、今日もあいつが来るのね。二日連続なんて珍しい。メイ今日はもう寝ていいわ。あなた風邪ひいているのでしょう。」メイは少女のその言葉に驚いたようだった。

「まったく、何年一緒だと思っているの?カイン兄様は気付かなくても私は気付くに決まっているでしょう。最近地下牢の前なんかで寝ているからそうなるの。今日は早く寝て風邪を治しなさい。私にうつる前に。」それが少女なりの気遣いだということをメイはわかっているので素直にありがとうございますと言った。


ーメイドは素敵な未来の夢をみて眠る-

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