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六年の時がたとうと忘れはしない

〝母様は百年に一度と言われるほどの天才で素晴らしい人だった。次々と新しい発明品を作り、人々を幸せにするのが母様の幸せだった。そしてそんな母様には愛し合い将来を誓い合った素敵な恋人がいた。

その幸せをぶち壊したのが私の父であるあの男だった。

 母様を権力と金を使い脅し、無理やり城に連れてきた。そしてニーナ姉様とカイン兄様、そして私を産ませた。だから母様にとって私たちはあまりいい存在ではなかっただろう。けれど母様は私たちにめいっぱいの愛情を注ぎ、技術と知識と母様の思いを私たちに残してくれた。

あいつは城に連れてきてからの10年間母様に大量殺戮兵器を作らせた。隣国に勝つために。嫌がる母様をまた脅して。

そうしてこの国は勢力を広げていった。


 でも母様はその間もずっと逃げる機会をうかがっていた。

私が3歳のときだった。母様は、私とカイン兄様とニーナ姉様に手紙を残し、城内で破壊活動をし、城内をめちゃくちゃにしてどこかへ行ってしまった。私は突然の出来事にどうしたらいいのか全く分からかった。母様に捨てられたのだと涙を流した。

あいつは母様がいなくなってしばらくした後、私達3人に告げた。リリスと同じ頭を持ったお前らには二つの選択肢をやる、と。そして私は母様をとり、地下牢へ。カイン兄様はあいつをとり表舞台へ出て行った。ニーナ姉様は…。


その後あいつは母様とニーナ姉様が賊の反乱で死んだと告げ、私が賊の侵入を許したからいけなかったのだと言って国民の前で涙をみせた。そしてカイン兄様を母様が残してくれた宝だと言い正式な王子として発表した。私はまだ国民に存在を公表されることすらなかった。

阿呆な国民は誰一人とてあいつのことを疑わなかった。王妃を失いそれでも立ち上がる素晴らしい王だと支持する者は日に日に増えていった。そして国はまた大きくなり、いつしか大陸をも支配するようになった。


私はあいつを恨んだ。私からすべてを奪ったあいつを。母様の重荷になる私たちをうませたあいつを。絶対に許さないと誓った。

 でもカイン兄様を恨むのはお門違いだとわかっていた。カイン兄様もニーナ姉様も母様を尊敬していると知っているから、二人のことを尊敬している。カイン兄様は正しい方法でこの国を変えようとしていることも知っている。それに兄様は…〟



「…おーい。リア?俺の話聞いてる?」少女はその声で意識を現実に戻した。

「あぁ、カイン兄様か。話?そんなもの聞いているわけがないだろう。」その様子に少年の表情は曇ったが、またすぐに元のくだけた様子にもどった。

「あんまりいろいろ考え過ぎるなよ。どうせ父上に忠誠をたてない限りお前に自由はないんだから。」

「わかっていますよ、カイン兄様。まあ私はあんな奴に誓う忠誠なんて持ち合わせていませんけどね。」そう言う少女に少年はもう一度顔を曇らせた。

「はぁ、お前って奴は。もう少し頭を使えよー。…まあいいや、俺そろそろ戻んないと、どやされっから戻るわー。」そう言って地下牢を出て行こうとした少年に少女は声をかけた。

「あー、カイン兄様。メイも上に連れていてあげてくださいな。」

少女は体の向きを変えて笑顔で言った。「メイ、私の新しい服をあいつに言って貰ってきてちょうだい。」

少女は少年が地下牢に来るたびになにか用事を言いつけてはメイを上に行かせるのだった。

「了解しました。いってまいります。」メイは少し嬉しそうにそう答えると、少年と一緒に上へ行く階段を上って行った。


「はぁ…全く二人ともこの地下牢の中でくらい仲良くすればいいのに。上では身分があるけどこの中では柵はなにもないのだから。」少女は二人の去っていった方を見つめ小さく呟いた。少女の小さな声は空気にとけ、そこにはなにも残らなかった。


ー少女にだってかなえたい願いはあるー

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