プロローグ 前編- サヨナラは突然に -
「っざっけんじゃねぇ!!」
鉄と錆の臭いが漂う廃棄後の貨物倉庫
湿った空気の中 怒気と殺気の孕んだ怒声が響き渡る
「ケッハッハァ やぁーっと来たかぁ 神道ぉよぉー 」
色々な武器を持った不良が倉庫にたむろって居る
ざっと見て20人は下らないだろうか
そして、その貨物倉庫の一番奥には顔の所々に
ピアスを着けている金髪の不快感漂う男が大型のソファーに腰掛け
先程の怒声へ嬉しそうに返事をする
「っざけてんじゃねぇぞ!! 美香に何したァ!!」
俺の腸は煮えかえっていた
別に俺は怒りの沸点が低い訳じゃない
どちらかと言うとその逆だ、あまり怒ったりしない質だ
だが、今回ばかりは絶対に許せねぇ
「知らねぇなぁー そんな女ァ ケッハッハァァア
そんな事よりよく来たなぁ 神道さんよぉ お前のおかげで
長らく察署に厄介に成っちまったぜぇ、
なぁ神道よぉ これで最後のチャンスだ土下座しな
袋にしたら終わらせてやる 」
あの愚図金はそんな妄言を吐いてくる
あいつは俺の通っている災禍高の不良グループの頭らしい
まぁ、そんなものは関係ない
俺の大切な奴に手を出したんだ容赦なく叩き潰すっ!!
グッと足に力を込めたあと思いっきり地面を蹴り
即座にトップスピードへ移る
まず一番手前にいたオールバックの男の腹にトップスピードのまま
飛び膝蹴りを食らわせるまず一人、
そのままスピードを落とさないように
近くにいた茶髪の男の頭を掴んで地面に叩きつける二人、
と、そこで何が起きたかやっと理解した奴が
「クソっ 舐めやがって ぶっ殺せ!!」と鉄パイプを振りながら叫ぶ
と周りの奴も色々な 武器で殴り掛かってくる
だが、そんなもの関係ないとばかりに
横にいた三人を回し蹴りで蹴り倒す後ろにいた数人がその三人に押し潰されて
うめき声を上げながら起き上がろうとするのを蹴り倒した三人ごと
スタンプを叩き込む、今ので残り九人
即座に息を整えて後ろから来る拳を受け流しながらそのまま背負い投げの
要領で投げ飛ばす またも前から殴り掛かろうとした男にぶつかり
うめき声を上げながら倒れた、多分脳震盪を起こしたのだろうあと七
動かなくなるのを確認していたせいか後ろから羽交い締めにされる
すると前に何人かが来てバットなどで殴ろうとしてくる
が、そんなもの食らう気は更々ない、バットを持った男の
足を引っ掻ける様に蹴る 重心が不安定になりバットを持った男は
丁度頭が俺の足の下に成るようにこける
そこになるべく力を込めたスタンプで頭を穿つ
スタンプからの勢いのまま羽交い締めにしていた奴に後頭部で頭突きを叩き込む
痛みで羽交い締めをしていた手の力が緩むと
羽交い締めにしていた男の鳩尾辺りに肘を叩き込むあと五
前にいた男二人の頭を掴んで同時に地面へ叩きつけたあと
後ろから走ってきた三人にしゃがんだ姿勢のまま足を引っ掻ける様に
回し蹴りをする先ほどの様に地面に頭を打ち付けて
二人は脳震盪に成ったようで起き上がってこないあと一
起き上がってこようとした男の頭をボールを蹴るように
振り抜く ゴッというおかしな音をしながら男は少し浮いたあと
その場で動かなくなった
「ヒゥー 容赦ないねぇ ケッハッハァ」
愚図金はバカにする様にそういうと懐から刃渡りが15センチ代の
ナイフを取り出す
「シネヤァァァァァァァ!!!」
ナイフで右斜め下に振ると叫びながら走ってくる
俺にとってナイフなんて意味は成さない
ナイフじゃなくても同じだ当たらなければいいだけだ
ただ別に刃物が怖くない訳じゃない、それでも恐怖を
気合いと意地で押し込めるそしてナイフの持っている手を掴み
手をねじ曲げながら懐に入り込み鳩尾に肘を何度も打ち付ける
痛みで力が緩んだせいか男の手から
キーンという音を立ててナイフが地面に落ちる
それを合図に頭を掴んで前に投げると肩に足を当てて
どんどん力を入れながら問いただす
「おぃ!! 美香はどこだぁ!!」
だが男はうめき声を上げるだけで話そうとしない
その上顔を痛みに歪ませるどころか笑っている
一気に足に力を込めると男の肩からゴキィ!という音と共に男が叫ぶ
今度は左肩に同じように力を入れながらもう一度問う
「美香はドコだぁ!!」
すると、痛みに耐えかねたのか「お、奥だソファーの後ろの扉の奥だぁ!」
とうめき声と共に吐いた
そうと分かればこいつにはもう様はない男を放り出して
ソファーの後ろに見えた扉に走り寄り勢いよく手前に引いて開ける
するとそこには扉の奥の部屋用と思われるソファーの上に
手が後ろで縛られた女が横たわっていた
「美香ぁ!!」最愛の女の名を呼びながら駆け寄り紐をほどくと
仰向けに抱く 連れ去られる時にでも寝かされたのか
俺の胸の中で気持ち良さそうに寝息を立てている
ちょっとの間その寝顔に見入っていたようだ
美香の瞼がピクリと動いたあとゆっくりと瞼を開けた
「轟君!!」というと共に怖かったからか抱きついてきた
「あの.... 美香....?」あたふたしながら抗議の声を上げると
俺の言葉で抱きついていることに気付いた美香は
頬を染めながらもゆっくりと離れた
やっと救出できたことであることに気付いて
携帯電話を取り出しながら110をする
あんだけやったんだ一応救急車も呼んどくか
「よし、美香帰ろうぜ」俺の言葉でゆっくりと立ち上がると
コクッと頭を前に振り「うんっ」と 嬉しそうな顔を浮かべて同意してきた
入って来た扉を開ける
うへぇ、20人もの顔の厳つい男が うぅぅ とうめき声を出しながら
転がっている中には鼻血がでて地面が血溜りになっているやつもいる
我ながらやり過ぎたな、そう思いながら美香を倉庫の近くに待たせ
応急処置をしていく奥の部屋に毛布が何枚かあったので
地面に敷いてその上に寝かせていく
「よしっ!」そう呟くとまたも立ち去ろうとする
と、そこで一人の男が「何で...こんな事...して...やがる」と
苦しそうに疑問点を述べてくるので澄ましたように背を向けたまま
「はっ! ケンカはもう終わったんだ もうやる意味はねぇよ!
それに美香にも結局は手ぇ出してねぇしな!」
と言うとそのまま美香のいる所に歩いていく
後ろで何人もの鼻をすする音が聞こえる
この事で、更正してくれればいいなと思ったりしながらも進み
もう少しで美香のいる場所に付く
美香がこちらに気付いて笑みを向けながら駆け寄ろうとして
その顔が驚愕の表情に変わるそしてみるみる内に
目に涙が溜まり涙がこぼれた
後ろにいた不良共からも「嘘だろっ!?」「あいつっ!」
と心底驚いているようだ
いつの間にかじわじわと腹部に激痛が走ってくる
腹部を見ると一本の鋭利に伸びた刃物が丁度真ん中から出ていた、
じわじわと服に大量の血が滲んで来ている
と、そこで後ろから声が聞こえた
「ケッハッハ 死んで詫びろやぁ 俺に恥欠かせた報いだぁ
ケッハッハッハッハッハッハッハッハッハッ」
と聞こえてくる
腹に刺さった刃物が抜かれる感覚と共に倒れ伏す
美香が泣きながらも近寄ってきて俺を抱き止める
視界の端では不良達が愚図金を取り押さえているのが見える
あぁ、油断した あいつはそうゆう奴だったんだ
更正なんてしやしない
他人を蹂躙して快楽に浸る
頭のネジがぶっ飛んだ奴だったんだ
チキショー
やっと美香助けられたのに泣かせちまったぜ.....
チキショー、やっとあいつら更正してくれたのに
くそぉー
意識が薄れていく中耳に聞こえたのは
美香の鳴き声と不良達が愚図金を捕まえている音と
パトカーや救急車のサイレンだった.........
不良ちょろっ!?(笑)
てか、なんか不良達何気いい奴なんだが?