ミントティにアイを込めて
きみと出会ったのはぐうぜん。
きみは言う。
恋におちたのはひつぜんだ。
*
あたしはただ、あのだだっぴろい空みてた。
それだけのことなのにむねがぎゅーっと締めつけられた。
なんだろう、この気持ち。
……くるしい。
まっしょうめん見たら、みんな同じ方向しか見てない。
きしむ音たてるミドリ色の板、のんびりと欠伸する黒ぶちメガネ。
教師が欠伸しちゃだめじゃん。
そう思いながらあたしも欠伸した。
たいくつなんだ。すごく。
きゅうくつなんだ。すごく。
頭をぐるぐる駆けめぐったのはあの人の顔。
思い浮かんだはいいけど、鐘がなるのはあと15分後。
ぼんやりと眺めた空からは、なんの色もない何かがおちてきた。
窓からめいっぱい手のばす。だけど届かない突然の雨。
きみも見てるであろう雨。
……傘もってくればよかったな。
『ここがXで――…』
だけど、みんな知らない。
突然の雨も、むねが締めつけられるような想いも。
はやく晴れないかな。
そんなこと考えながら鐘は雨音にまけじと鳴った。
*
廊下をはしった。
がむしゃらにはしるあたしに廊下と上履がちいさく音をあげた。
あの人に会いたい。
今日にかぎって感じるこの違和感、なんだろう。
なんだか頭のなかがぐちゃぐちゃになりそうで気持ちわるかった。
おねがい、いつもみたいにあたしに会いにきてよ。
……そうだ。
いつも彼があたしに会いにきてたんだ。
違和感の理由に納得しつつ、彼のすがたを目で探した。
「なんで……なんで」
彼はいない。
どこにもいない。
そんな場所にはなにもない。
鐘が鳴った。
きゅうくつな場所におしこまれる合図。
こんなの、いやだ。
校舎をこえた。
雨はふりやまない。
髪がかおに張り付いた。雨とそれから、涙のしわざだ。
彼のすがたを探した。
いないんだ、どこにも。
こないんだ、どこにも。
……あたしはここにいるのに。
「ばか」
ふりそそいできた雨がとまる。
だけど雨音はひたすらきこえた。
雨にかくされたひくい声は彼のものだった。
「ばか。風邪ひくよ?」
ばかはどっちだ。
あたしのまえからいなくならないで。
「ほら傘入りなよ、濡れる」
ふと上をみあげた。
黒い傘にすっぽりおさまった、ふたり。
カラダはさむいと悲鳴をあげる。だけど、なぜか熱くてあつくて。
溶けるあたしのこころはもろい。
「ばか熱あんじゃない?」
「あたしのなまえ、ばかじゃないもん」
かおを塞ぎたくなった。
熱をおびてるこのかおを。
きづいたんだ。
きづいてしまったんだ。
むねが締めつけられたのは、彼がいなくなったからじゃなくて。
あたしが彼をすきになったからなんだ。
…end
ここまで読んでいただきありがとうございました。
続編をつくろうと思ってます。
投稿はいつになるか分かりませんが読んでいただけると嬉しいです。
――それでは、ぞくへんでお会いしましょう。