表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/2

「━━…」

 赤信号。ウルサいほどの車のクラクション。大勢の人だかり。反転する視界。

 これはどういうことだろう、と。考える間もなく意識は飛んだ。

 私の意識は旅立った。

どこに向かってるのかもわからない。けれど不思議と怖くはない。どうして…?

━━ホントはわかってるからだよ…?

 頭の奥から声がした。私の知ってるどの声とも合致しない。

━━誰?

 頭の中で返事とも言えない言葉を紡ぐと、脳が揺れた。クラクラと頭が朦朧とする。

━━アナタは死んだの。

即死だそうだよ、よかったね。遺体は綺麗なんだって。珍しいよ車にひかれて。


 頭がガンガンと打ちつけられるような痛みが走った。

痛い。脳が、意識がコイツの言葉を拒否してるようだ。

━━私が、死んだ。

 ああ、それで、私はどこに向かってるんだ…?

━━わかるでしょ。見えるはずだよ。綺麗な景色が…

 あれが俗に言う『三途の川』?思ってたよりイメージが違うんだな。

━━これから閻魔さまと神さまに、罪の裁きを行って頂くから。

 あれ…?私、死を受け入れてる…?

 大層な犯罪、過ちを犯してきたわけでもなく、ただ生きてた。

 確かに時々、このままでいいのか、なんて。思ったこともあったけど。

━━アンタよかったね。転生逝きだよ。二つ前の奴は地獄逝きだったけど。

 転生?生まれ変わるってこと?冗談じゃない。

死んだんなら潔く死なせてよ。私はそんなに往生際が悪いわけじゃない。

━━私は死んだんでしょ?じゃあもう一度なんていいじゃない。ゆっくり休ませてよ。

 そう声を掛けるとソイツは少し怒ったような口調で言った。

━━わからないだろうけどね。

現世ではだいぶ時間が経ってんだ。

アンタが死んで数えるのも億劫なくらい年月が経った。

うちらは本当に憔悴しきった魂だけを休ませ、根本からの悪だけを閻魔さまへ送る。

下界は人不足なんでね、一回死んだら終わりじゃないんだよ。

 だからって今のまんまじゃ結局一緒じゃん。

『私』なんだから、また同じ人生歩んじまうよ。せめてもう少し『私』が消えかけたころに転生してもいいんじゃない。

 渋りながらなかなか下へ降りようとしない私を見て、ソイツは呆れたようにはぁとため息をついた。

━━心配ないよ。

下へ着くころにはアンタなんか消えてなくなる。違う『自分』がいるよ。

 そう言ってソイツは私の背中を下へ蹴り落とした。

 今日から新しい自分の始まりだ。

「出発」

H17.05.06.

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ