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「━━…」
赤信号。ウルサいほどの車のクラクション。大勢の人だかり。反転する視界。
これはどういうことだろう、と。考える間もなく意識は飛んだ。
私の意識は旅立った。
どこに向かってるのかもわからない。けれど不思議と怖くはない。どうして…?
━━ホントはわかってるからだよ…?
頭の奥から声がした。私の知ってるどの声とも合致しない。
━━誰?
頭の中で返事とも言えない言葉を紡ぐと、脳が揺れた。クラクラと頭が朦朧とする。
━━アナタは死んだの。
即死だそうだよ、よかったね。遺体は綺麗なんだって。珍しいよ車にひかれて。
頭がガンガンと打ちつけられるような痛みが走った。
痛い。脳が、意識がコイツの言葉を拒否してるようだ。
━━私が、死んだ。
ああ、それで、私はどこに向かってるんだ…?
━━わかるでしょ。見えるはずだよ。綺麗な景色が…
あれが俗に言う『三途の川』?思ってたよりイメージが違うんだな。
━━これから閻魔さまと神さまに、罪の裁きを行って頂くから。
あれ…?私、死を受け入れてる…?
大層な犯罪、過ちを犯してきたわけでもなく、ただ生きてた。
確かに時々、このままでいいのか、なんて。思ったこともあったけど。
━━アンタよかったね。転生逝きだよ。二つ前の奴は地獄逝きだったけど。
転生?生まれ変わるってこと?冗談じゃない。
死んだんなら潔く死なせてよ。私はそんなに往生際が悪いわけじゃない。
━━私は死んだんでしょ?じゃあもう一度なんていいじゃない。ゆっくり休ませてよ。
そう声を掛けるとソイツは少し怒ったような口調で言った。
━━わからないだろうけどね。
現世ではだいぶ時間が経ってんだ。
アンタが死んで数えるのも億劫なくらい年月が経った。
うちらは本当に憔悴しきった魂だけを休ませ、根本からの悪だけを閻魔さまへ送る。
下界は人不足なんでね、一回死んだら終わりじゃないんだよ。
だからって今のまんまじゃ結局一緒じゃん。
『私』なんだから、また同じ人生歩んじまうよ。せめてもう少し『私』が消えかけたころに転生してもいいんじゃない。
渋りながらなかなか下へ降りようとしない私を見て、ソイツは呆れたようにはぁとため息をついた。
━━心配ないよ。
下へ着くころにはアンタなんか消えてなくなる。違う『自分』がいるよ。
そう言ってソイツは私の背中を下へ蹴り落とした。
今日から新しい自分の始まりだ。
「出発」
H17.05.06.




