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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

魔界の物語集

赤い線

掲載日:2011/04/01

「先生、この実験体は何故泣いているのですか?」

泣いていないよ

彼女は寝ているのさ

恐い夢でもみているのだろう

大丈夫、私がいてあげるから

ゆっくり深呼吸をしなさい


膝の上に頭を乗せて嗚咽を漏らす彼女を、周りの研修生に見えないよう白衣で隠す

彼女はとても辛いのか、腕で隠している顔から涙を流す

下唇を歯で噛み、声が漏れないよう必死に堪えている

私は覗き込む研修生達に振り返り、人差し指を唇に当てた

研修生も周りと顔を見合わせ私を真似る


いい子達だ


笑みを浮かべ、再び彼女へと視線を向ける

彼女は眠っていた

泣きつかれてしまったのだろう

安らかに休息できる事を願う

女にしては短い髪の毛に優しく触れる


どうか、私の事など気にせず生きてほしい

この喉が潰れてしまったのは貴女のせいではないのだから

貴女は操られていただけだ


傷痕は一生残る

けれど、包帯で巻けば貴女には見えない

けれども貴女は悲しむ

私はどうすれば貴女を泣き止ませられるだろう

実験体として貴女を隔離し、呪いを解いたのに

誰も貴女を蔑まない環境を創ったというのに

だけど、髪の毛をむしり取る自傷行為を止めさせる為に、あんなに綺麗だった長い髪はこんなに短くなってしまった

爪を噛む癖、肌を引っ掻く自傷行為を止めさせる為に、常に短く切り揃えている

どんどん貴女は昔の面影を自ら消してしまう


「――――」


口を開けても、やはり言葉はつくれない

パクパクと魚のように口が動くだけ

伝えたい言葉があるのに、私には不可能なのだ


「先生、傷が開きますよ」

そうだね

君達はそろそろ戻って良いよ

私はもうしばらく、彼女と共にいる

「わかりました」


ヒュン


研修生達は足元から消え、代わりに私の手の平に色違いのビー玉が四つ

それをズボンのポケットに入れ、白衣を脱いで彼女に掛けた

静かな部屋に、彼女の寝息がよく聞こえる

退かした腕からは今だ涙が頬をつたう

やつれてしまった美しい顔が、ガーゼや絆創膏などで痛々しい

手首には赤い線がいくつも並んでいる

私より一回り細い手首にそっと口づけた

この傷口から、私の思いが彼女の中を流れるように

冷静に考えれば愚かな願望だが、私にも夢くらいみさせてほしい








唇に出来る時までは、眠る貴女の傷口に

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