表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/18

4.

 リエルは、七つの封印扉を見回した。


「変だな……パパ、前からこれ知ってたのか?」


「情報!」ゼフが切り返す。「形、サイズ、色! 何でもいい!」


「石でできてる。黒曜石っぽいけど、黒曜石じゃない。外側に取っ手がない」


「なら、入るための“やり方”があるってことだな」ゼフが呟く。


「おい! この印、月だ! お前の護符と同じ!」


「月? 他は?」


「ハート……蛇……砂時計……太陽……花……それから……仮面。悪魔の面みたいなやつ」


「七つの護符……七つの扉……」ゼフは息を整える。「この屋敷の秘密は、全部そこにある」


「でも問題は、開ける鍵がないってことな」


「俺の護符を盗んだクソ野郎を見つけりゃ、話は早い」


「どうやって?」


「探偵の腕だよ」ゼフが言う。「手伝え。あいつがどこへ行ったか、痕跡が残ってるはずだ」


【事件ファイル1・パート2:月の護符を捜索】


「照明、点いてるか?」ゼフが聞く。


「いや、真っ暗」


 ゼフはスマホを取り出した。


「じゃあこれ。ライトで周りを見ろ」


 リエルはスマホを受け取り、ライトを点ける。


「……なあ。これ、見た方がいい」


「何だ?」


「紙が散らばってる。爪で引っ掻いたみたいな跡がある。誰かがガリガリ削ってたみたいな」


「裂け方は? 綺麗か、ギザギザか」


「綺麗じゃない。完全にボロボロ」


「文字は?」


「新聞の切れ端っぽい。火事……行方不明……悲劇……そういう記事」


「案内しろ。触るな」


 リエルが導き、ゼフはその場で紙束を拾い上げた。


「……端が裂かれてるのは確かだ。問題は、これをやったのが親父か、それとも別の誰かか」


【事件詳細#5:裂けた新聞記事】


 ゼフはそれをポケットに入れた。


「まだ探す。護符を失ったとき、声は一つじゃなかった。争った痕跡があるはずだ」


「お前が壁に投げられた以外、目立つのは何もない」


「それが捕食者の理想だ」ゼフが言う。「ここにいる“何か”は、俺たちより上手だ。まず、この場所を理解しないと」


 ゼフは耳を澄ませた。


「音が入ってくるのが一方向だけだ。出口は他にない?」


「見える限り、ない。扉だけだ」


【事件詳細#6:地下室の出入口は1つのみ】


「じゃあ、その扉のどれかの向こうにいるんじゃね?」リエルが言う。「幽霊なら壁も抜けるだろ」


「だが、俺の護符は抜けない」ゼフが返す。「近くに落ちてないなら、単純に“すり抜けて消えた”って線は薄い」


「あ……確かに」


【事件詳細#7:部屋内に月の護符なし】


「おかしいな」ゼフが言った。「リエル、ライトを床に当てろ」


 リエルは床へ光を落とす。すると、うっすらと引きずった跡が見えた。


「……これ、パパのじゃない」


「何が?」


「擦れ跡っていうか、引きずり跡。足跡っぽいのもある」


「大きさは? はっきり見えるか、薄いか。質感は?」


「小さめ。埃っぽくて、スマホ近づけないと見えないけど……確実にある」


「最近だな。親父は足デカい」


【事件詳細#8:床の引きずり跡――ただし、誰のものか不明】


 ゼフは立ち上がった。


「行き先の見当はついた」


「はいはい、先生。どこだよ」


(裂けた新聞は重要だ。だが今は決め手にならない。引きずり跡、出入口が一つ、そして護符がない――こっちだ)


 ゼフは指を鳴らした。


【推理:護符を盗んだ奴は、リエルが入ってきたのと同じ経路で逃げた――家の中へ戻った】


「戻った!?」


「急げ!」ゼフが言う。「まだ追いつける!」


「待て――!」


 ゼフは勢いよく進んで壁に激突し、仰向けに倒れた。


「……しまった。ドアまで連れてけ、頼む」


 リエルは頭を振る。


「いつか本気で置いてくぞ、お前」


 二人は階段を駆け上がった。

 廊下には、倒れた椅子、花瓶、テーブルが散乱している。


「絶対ここ通っただろ!」リエルが叫ぶ。


「案内しろ!」ゼフが言う。「あいつが俺の物を持ってる!」


 リエルはゼフを担ぎ直し、障害物を飛び越えながらリビングへ突っ込んだ。


「……姿が見えねえ!」


「探せ! 出られるなら、とっくに出てる!」


 リエルは左右を見回す。


「ソファのクッションが何個かない……それに、ラグにも引きずり跡が増えてる!」


「なら、ここを通った」ゼフが即答する。「痕跡を追うぞ」


「キッチンも触られてる」リエルが言った。「冷蔵庫にテープの切れ端がある。破れてる」


「よく見た」ゼフが言う。「連れてけ」


 冷蔵庫の前。ゼフは表面を手で探り、眉を寄せる。


「……温かい。俺たちが外にいた間に、ここに貼られてた何かが剥がされた」


【事件詳細#9:冷蔵庫から何かが持ち去られた形跡】


「他は?」


 リエルが階段付近に目を留める。


「……綿みたいなのが落ちてる! 階段の近く!」


「……ほう」


【事件詳細#10:階段付近に詰め物の綿】


「もう少しだ」ゼフは言った。「静かに。音を聞く」


 遠くで、かすかな風の音がした。

 ゼフは目を閉じ、集中する。


(最初に来たときに聞いた風……同じだ。意味は……?)


【事件詳細#11:風の音】


 ゼフは目を開けた。


「……よし。見えた」


「解決したのか?」


「解決じゃない。だが“行き先”は分かった」


(同じ風……クッションが消えてる……ソファの詰め物……引きずり跡。つまり――)


 ゼフは顔を上げた。


【推理:リエルが見たあの幽霊が、俺の護符を持っている。そして、浴室に戻った】


「おい――!」


「二階だ! 今すぐ!」


「危ないかもしれ――」


「俺も危ない」ゼフが言い切る。「俺の物を盗むな」


 リエルはゼフを掴んだ。


「……俺たち、マジで死ぬぞ」


 二人で駆け上がる。

 二階の扉は全部開いていた――浴室の扉だけを除いて。


 リエルがノブを回すが、動かない。


「ロックされてる!」


「どけ」ゼフが命じた。


 位置を確認し、ゼフは体当たりした。扉が震える。


「お前、正気か!? 器物損壊だろ!」


「もう損壊してる!」ゼフが叫ぶ。「出てこい、護符泥棒!」


 もう一度、体当たり。


「壊すの手伝え!」


 リエルは顔を手で覆い、渋々並んだ。

 何度かぶつかったあと、ついに扉が開く。


「出てこい、盗人悪魔――!」


 リエルは勢いよく起き上がり……中を見て、膝が抜けそうになった。


「……ゼフ……」


 長い髪。半透明の肌。

 若い少女の幽霊が、ソファのクッションの上に横たえられた骸骨の死体を手当てしていた。縫い合わせるように、何かを整えている。


 彼女は二人に気づくと、ぴたりと動きを止めた。


「い、い……幽霊だ……!」


 そして同時に――彼女とリエルは、悲鳴を上げた。


――

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ