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妹のためにエロゲーを

 俺は眞衣の部屋の扉の前にかがみこんだ。

「なあ、眞衣。聞こえてるか」

「……」

「俺、ゲーム作ろうと思うんだ。誰でもない、お前だけのために」

「――お兄ちゃん」

 今、眞衣が言葉を発したか? 眞衣? と訊ねる。

「私のこと、忘れないでいてくれてありがとう」

 その言葉が最後だった。


 一週間後。ネックチョーカーを身に着けて、秋月の許へと訪れた。

「これあげる」

 A4用紙三つを俺に渡そうとしてくる。俺はそれを手に取ろうとしたら、ひょい、と紙を上げられた。「ワン、は?」

「わ、ワン」俺はイラっとしながら言った。

「はい、どうぞ。次は足でも揉んでもらおうかね」


 紙を貰うと、次に上履きを脱いだ秋月が、ストッキングの足をこちらに向けてくる。

「も、揉むんですか?」

「あれ~、返事はワンのはずなんだけどな」

「わ、ワン」


 俺は仕方なく彼女の足を揉んだ。

 異変が訪れたのが、数十分後だった。

「う、ん。あっ、ん」

 なんで喘いでいるんだ? 俺は興味が湧いて彼女の顔を見る。すると、上気した顔で下唇を嚙んでいた。

 俺はもうやめると、彼女は少し息が上がっていたようだった。


「足、弱いんですか?」

「ちょ、そんなわけないじゃない。ば、馬鹿じゃないの」

「じゃあもうちょっと続けてもいいですか?」

「うっ……」


 彼女は弱々しい表情を見せた。じゃあ最初からこんなことやらすなよ。

 やっぱり秋月は変態だ。

 俺はそんな変態の秋月は放っておいて、プロットを見た。


「ANSER」というゲームタイトルだった。用紙をパラパラとめくると起承転結が端的に書かれていた。


 具体的には、このゲームはとある女子高生に恋した主人公が、恋愛が原因でその女子高生がいじめられることから始まる。主人公は、頼れる友人や教師、別ルートで攻略するサブヒロインの力を借りながら女子高生を救うことがこのゲームの要だ。そしてなんとこのゲームのギミックとして、類を見ないのがエロゲーでありながら、好きな女子高生とセックスしてしまうと、バッドエンドになってしまうということだ。


 シリアスなエロゲーだ。そう思った。エロゲーなのにエロがない。


「どう、変わった企画案でしょ」

「ああ、確かにちょっと王道から外れているプロットだよ。まるでどこぞの鍵の名前のゲームみたいだな」


 俺はこれを三回、見直しながらぼそっと、「なあ秋月、お前だれか知り合いの絵師はいるか?」と訊ねると、どうしてか顔面を蹴られた。「なにすんだよ‼」


「あんた、ワンコのくせに小生意気ね。それが人に物を頼む態度かしら?」

「なんだよそれ」

「裸になって校内一周、出来るわよね?」


 俺は必死に怒りを抑えながら、「出来ません」と答えた。

 そう言うと、じゃあ、絵師は紹介出来ないわね、と言われて秋月は去っていこうとした。それを俺は止める。


「頼む。妹に元気になってほしいんだ。俺のゲームをプレイしてもらって!」


 すると彼女は切れ長の目で、「妹さんに遊んでもらうようなゲームなの? エロゲーって?」と疑問を呈された。

 俺は、どう答えるべきか悩んで、それでももう正直に告白しようと思って、訳を話す。


「俺と妹の眞衣は一緒にゲーム制作をするほどの仲だったんだ。それに眞衣は俺よりもプログラム言語を覚えるのが早かった。応用も難なく行っていた。それほどまでに天才だったんだ。それに俺と同じく『NEXT』のゲームに興味を持っていた。だから、俺が『NEXT』の賞を取ったら、絶対に喜んでもらえると思うんだ。今は塞ぎこんで、生きる希望もたぶん、失っていると思う。でも」


 でも。そんな人を変える力を、ゲームは宿していると思うんだ。そう言葉にしようとしたとき、秋月が、「あなたみたいな人が――にいたらな」とぼやいたのが聞こえた。


「分かった。あなたの熱意は。でも、だったら交渉は自分でしなさいよ。私の知り合いの絵師は、アマチュアのプロ志望だから。その子をまず説得させてみなさい」


 そう言って、秋月はスマホを取りだした。「ライン交換しましょ。そこに電話番号送ってあげるから」

 俺は、急に夜中とかに呼び出されて変態プレイとかごめんだぞ、と思いながらも交換した。

 その日の夜、俺はさっそく絵師志望に連絡を掛けた。


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