蛍
娘が七歳になった。小学生だ。
この頃になったら、俺は蛍にカミングアウトしようと思っていた。
「蛍。少し話いいか?」
「どうしたの? 改まって」
「実はな、お前のママは実のお母さんじゃないんだ」
「えっ、そうなの」
「本当のお母さんのもとへ会いに行くか?」
拒絶されるかもしれない。そう思っていたが、蛍はしずしずと頷いた。
車を運転して、希美の墓へと向かった。
駐車場に車を停めて、蛍を車から降ろす。
そして大竹と刻印された墓の前に立つ。
「この中に、お母さんは眠っているんだ」
「お母さん……」
じゃあ、私はラッキーだね。そう唐突に言い放った娘。その真意を訊ねる。
「私のことを産んでくれたお母さん。私を育ててくれるお義母さん。ふたりもいて、嬉しい。産んでくれたお母さんが亡くなっちゃったのは悲しいけど、私の胸の中にずっと、いるよ」
俺は、涙がこらえきれなかった。蛍のことを泣きながら抱きしめる。「お父さん?」
「俺は、秋月も、希美もふたりとも大好きだったんだ。みんなで作るゲームはほんと、楽しかったし、でも、でもっ」
子供みたいに泣きじゃくる俺の頭を撫でてくれる蛍。
「大丈夫だよ。お父さん」
大丈夫だから、と。
希美。蛍は本当に優しい子に育ったよ。




