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妹を救うためにエロゲーを作ります。  作者: 彼方夢


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19/21

幸福な死去

 4


 希美の容態が急変しという連絡が、二月にかかってきた。

 俺は全力で走って病院に向かった。

 病院にはお義母さんとお義父さんがいた。俺は上がった息を整えながら、「どうしたんですか」と訊ねた。

「今朝、破水したんだ。だが、抗がん剤治療で弱った体に陣痛は厳しいんだ。もう、今夜が最期だろうな」

「そんなっ……」

 数時間後。医師が手術室から出てきた。

「親御さん、陣痛は身体にかける負荷が激しいので、帝王切開にしましたが、それでもむずかしい状況なのには間違いないです」

 俺は歯がんだ。自分の無力さに。

 どうしたら彼女を救える?

 どうすれば彼女を助けられる?

「すみません。彼女に会えませんか?」

 医師が困惑した顔でご両親を見遣る。「この方は」

「希美の恋人です」

「籍は入れているんですか」

「いえ」

 医師は悩むようなそぶりを見せた。「本当は親族しかICUでの面会は許可されてはいないんですけど。まあいいでしょう。責任は私が取ります」

 俺は感極まって涙を流してしまった。心の中で優しい医師の言葉に感謝した。

 医師に案内されて、ICUに入室する。

 彼女は薄目を開けてすぅ、すぅ、と息をしていた。酸素マスクを付けている。

「希美。頑張ったね」

 俺の声に気付いた希美が、目を見開いて酸素マスクを外した。そして泪を流しながら謝ってきた。

「ごめんなさい。赤ちゃんが二三〇〇グラムしかなくて、抗がん剤治療による発育障害らしくて。いまNIUC(小児集中治療室)にいるの。元気な赤ちゃんを産んであげられなくてごめんなさい」

 俺は彼女の手を握った。

「大丈夫だよ。たとえ人より小さくても、腹いっぱい飯食べさすからさ。それより、性別は?」

 彼女は涙をぬぐって、にんまりと笑った。「可愛い女の子だよ」

「そうかあ」

「将来、パパと結婚したいとか言うのかな」

 彼女がだんだんと息が切れ切れになってくる。

「言ってほしいな。でも、そんなこと言ってくれるうちは安心だよ。変な男と結婚してほしくないからさ」

「もう、はあ、はあ。親バカなんだから」

 そしたら彼女は瞼を閉じた。過呼吸になりながら、最期に、「ありがとう。私と出会ってくれて。あのゲーム、泣いちゃった……」と言った。

 医師が駆け足でこの場に来た。SPO2と血圧を測りながら、そして次に瞳孔の確認をして、死亡時刻を告げた。


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