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妹を救うためにエロゲーを作ります。  作者: 彼方夢


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13/21

温泉

 旅館に戻ってから、俺は荷物を整理していた。そして、浴衣を準備する。

 実は、俺はこの和歌山県の旅館の、秘湯が楽しみだった。着替えを持って温泉へと行く。

 男湯の暖簾をくぐって、着替えて温泉の湯にとっぷりと浸かる。

「ふう」

「きゃははははは」

 女湯のほうから、水穂や秋月たちの笑い声が聞こえてきた。

「ほんと、菜穂ちゃんっておっぱいでかいよねえ」

 大竹のはしゃぐ声も聞こえる。

「きゃあ。ちょっと、揉まないでよお。ぅん、あっ、はあ」

 やべえ、また股間が痛くなってきた。

「そういえばさ、大竹さんはどうして竹達くんのこと選んだの?」

「えっ、いま聞きます?」

 水穂の声に疑問で返す大竹。

「ちょっと、いい加減に揉むのもやめなさいよ」

「あっ、ごめんごめん。えっと、水穂さん、私が彼を選んだ理由は……」

 俺はごくりと生唾を飲み込んだ。こんな女子会トーク、聞いていていいのだろうか。

「彼は、実直で、そして誰かのためなら“共犯”になってもくれそうだったからです」

「共犯?」

「ええ。だって彼、誰かを救うことしか考えていないじゃないですか。誰かを救うためだったら一緒に犯罪も犯してくれそうだしね」

「へえ。確かに、彼って芯があるからね」

 思わず褒められたことに感激を覚える。いや褒められたのか。

「で、エッチはしたの?」

「え、エッチ?」

「早めにしといたほうがいいわよ。このおっぱいでか女に彼の童貞取られないようにね」

「あっ、たしかに」

「確かにじゃねえよ!」

 怒りを露わにした秋月。それに大笑いするふたり。

 ふざけやがって。あとで怒ってやる。

 そう、思いながら温泉を出た。


 ◇


 一人部屋で俺は畳の上に布団を敷いて、眠っていた。

 すると、誰かがずかずかと布団にもぐってくる。

「ん?」

 俺は振り返ると、顔が上気した大竹だった。

「えっ‼」

「しぃ」

 大竹が唇に人差し指をあてる。静かにしろということなのだろう。

「みんな、寝たから」

「……そう、なのか」

 まさか、大竹は期待してるのか。その、エッチとやらに。

 俺は大竹の茶髪を撫でる。優しく、それでいて俺は興奮を感じていた。

 そして俺は彼女に口付けした。

 

 朝、目が覚めると、隣に大竹がいた。着物がはだけている彼女の着衣を直してやると、それで彼女は覚醒する。

「おはよう」

「おう」

 満面の笑みを彼女は見せる。情事の後の、独特の雰囲気を俺は体感して、どうも居心地が悪い。

 彼女は起き上がって、「じゃあね」と言い部屋を去っていった。

 俺は浴衣からTシャツに着替えて、大広間へと向かう。

 すると煙草を吸っていた水穂。こちらを見てきて、苦笑した。「昨晩は楽しかった?」

「気付いていたんですか?」

「そりゃあ気付くわよ」水穂が白い歯を覗かせる。そこまで可笑しい話だろうか。

「まあ、初めてだったし、新鮮だったな、なんて。キモイですけど」

「人間の三大欲求よ。キモイなんて片づけたらだめ。愛し合う行為なのに」

「……そうっすか」

「大竹さん、幸せそうな顔していたわよ」

 そんなこと言われると、照れてしまう。

 水穂は煙草を灰皿に潰し、立ちあがった。そして俺の肩を叩いた。

「これで大人ね。だったら、あんたが“本当にすべきこと”は分かるわよね?」

「えっ?」

「妹さんにゲームを作ることは、たしかに大切なことかもしれない。あんたにとって重要なことかもしれない。それでも、かけがえのないことが見えないところに転がっているものよ」

 人生の先輩からの警告、と言って笑ってきた水穂。

 俺はしばし唖然として、言葉が出なかった。

 恋は盲目、というが、俺はもしかしたら故意(こい)に盲目だったのかもしれない、と思った。


 3


 帰りの新幹線の中で、俺は膝にPCを置いて、企画書を書いていた。今回のゲーム賞はA4用紙三枚分の企画書いわんプロットを、PDF化してデータを送らないといけないのだ。

 その作業を黙々と行っていると、隣から大竹が覗き込んできた。

「それ、なに?」

「ゲームの企画書。前にもらった秋月のプロットをベースに書いてる。これが結構骨が折れてさ」

「ふーん」

 すると大竹はバッグの中から、駅のキヨスクで購入した牛タン弁当を取りだし、食べ始めた。そしたらこちらを窺ってきて、「一口食べる?」と聞いてきた。俺は「ありがとう、もらうよ」と言って口を開けた。そこにあーん、と牛タンを食べさしてもらう。咀嚼するたびに神戸牛の味わい深い弾力を堪能する。美味い。

「ねえ、十月に入ったらさ、夏祭りに行こうよ」

「祭り?」

 するとスマホを触り始めて、「横須賀花火大会」の記事を見せてきた。

「打ち上げ花火、見に行きたいんだ」

「分かった。なんとか、時間作る……。それと、一個だけ頼み事してもいいか?」

「なに?」

「勉強会、しないか」

「……気持ちが変わったの?」

 俺は頷いた。「プログラミング系の専門学校に行こうと思っている」

「それはどうして?」

「君のことが、好きすぎるから、かな。君との将来を真面目に考えたいんだ」

 俺は精一杯の口説き文句を言ってみた。それを聞いた彼女は俯いて、「うん」と言った。

「俺の将来の夢はビジュアルアーツに入社することだ。ビジュアルアーツの本社は上場企業だから厳しいとは思うけど、それでも挑戦してみたいんだ」


 俺は、今まで妹のことを理由にして自分の将来から逃げていた。

 だって、将来と向き合うのは恐いから。

 目の前のことに没頭していれば、それすなわち下を向いていたら変化なんて訪れないから。

 人間は変化に恐れる生き物だ。しかしかの有名なチャールズ・ダーウィンは云った。

 最も強い者が生き残るのではない。

 最も賢い者が生き延びるでもない。

 唯一生き残るのは、変化できる者である、と。

 すると大竹は笑みを見せた。

「その考え方、好きだよ」

 そう言って、俺の太ももに手を置いてきた。

「だったら、俊くんがビジュアルアーツに入社できたら、結婚しようよ」

「ああ。それは嬉しい」

「ワンコ君には前にタマなしとか、度胸なしとか言ったけど、違ったね」

「評価が上がったらのなら、なによりだよ」

 俺は大竹の頭を撫でた。

「えへへ、嬉しいな」

「そこーデレデレ、イチャイチャしない!」

 通路を挟んで横の席に座っている秋月が、なぜか上気した顔でそう言ってくる。その理由はすぐに分かった。彼女はビールを飲んでいたのだ。つまりは酔っぱらっている。

「私、略奪愛に燃えるんだ」

 と、とんでもない発言をした秋月。

「残念でしたあ。俊くんは私にぞっこんなのです!」

「偉そうに言うんじゃないわよ。このバッカ」

 また再燃したキャットファイトに俺はやれやれと思いながら、企画書の制作を再開した。


 

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