表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【書籍化作業中】投げたら刺さった~ラッキーヒットで領主になった僕の成り上がり英雄譚~  作者: 塩野さち


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

72/279

第72話 けっこう大きな問題があった件 金と銀の流出

【ライル視点】


『アヴァロン帝国歴162年 8月20日 昼 快晴』


 帝都フェルグラント。その壮麗な城の一室に、僕とヴァレリアは通された。

 扉を開けると、そこはすでに重々しい空気に満ちていた。西方のヴェネディクト侯爵が、ユリアン皇帝陛下の前で、身振り手振りを交えながら熱弁をふるっている。


「よろしいのでございますか、陛下! 珈琲も、砂糖も、実に素晴らしい産物です。ブームが起こるのも大いに結構! しかし、このままでは、我がアヴァロン帝国の金貨も銀貨も、全てが新大陸へと流出してしまいますぞ!」


 ヴェネディクト侯爵は、国の財政を憂う忠臣そのものといった様子で、危機感を訴えていた。皇帝は、玉座で頬杖をつき、つまらなそうに口をへの字にして、その話を聞いている。


「ふむ。それでは(けい)ならば、どうすると申すのだ?」


 皇帝の問いに、ヴェネディクト侯爵は待ってましたとばかりに、胸に手を当てて力強く答えた。


「かの珈琲と砂糖に、高い税金をかけるのです! さすれば、過剰な消費は抑制され、帝国の富の流出も防げましょう!」


(あれ? なんだか、僕が何もしなくても、勝手に問題が解決しそうな雰囲気だぞ?)


 僕が、そんなことをぼんやり考えていると、二人がようやく、部屋の入り口に立つ僕たちの存在に気づいた。

 皇帝が、にやりと、実に面白そうな顔で僕を見る。


「おお! ライル(きょう)ではないか。ちょうど良いところへ来た。話は聞いていたであろう? そちならば、どうする?」


 僕は、わざとらしく顎に手を当てて、うーん、と考え込むふりをした。


「そうですねえ……。税は、かけたほうがいいと思いますよ! あと、新大陸だと、こっちのお酒が、すっごく人気ありました! だから、お酒をたくさん売ってあげるといいんじゃないかな?」


 僕の、あまりに単純な、しかし誰も考えていなかった提案に、皇帝も、ヴェネディクト侯爵も、興味深そうに身を乗り出してきた。


「ほう、詳しく話してみよ」


 皇帝が、続きをうながす。


「僕、新大陸のアカツキの都に、酒場を作ったんです。そしたら、ハーグから持っていったエールとかが、もう飛ぶように売れて。だから、きっと間違いないと思いますよ!」


「なるほどな……。現地を知る者ならではの、貴重な意見だ。ヴェネディクト侯爵、どうだ?」


 皇帝に話を振られたヴェネディクト侯爵は、商人としての血が騒いだのか、目を輝かせて即座に答えた。


「それならば、話は簡単でございます! 帝国の豊かな葡萄酒……ワインや、各地の醸造所が作るエールを、我らが商業ルートに乗せ、新大陸へどんどん輸出してやればよいのです! 富の流出どころか、逆に新大陸の富を、こちらへ吸い上げてやれますぞ!」


 さっきまでの悲壮感はどこへやら、ヴェネディクト侯爵は、すっかり新しいビジネスに夢中になっていた。

 こうして、僕は皇帝への『貸し』を一つも使うことなく、帝国の経済危機(?)を、見事に……というか、いつの間にか切り抜けてしまったのだった。

「とても面白い」★五つか四つを押してね!

「普通かなぁ?」★三つを押してね!

「あまりかな?」★二つか一つを押してね!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ