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投げたら刺さった~ラッキーヒットで領主になった僕の成り上がり英雄譚~【Web版本編・200万PV感謝!】  作者: 塩野さち


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第337話 お正月は全員集合!

【ライル視点】


『アヴァロン帝国歴180年 1月1日 ハーグ 白亜の館 晴天』


「あー、ルーカスちゃんは今日も可愛いねえ! 天使かな? それとも妖精さんかな?」


「あうー! きゃっきゃっ!」


 新しい年が明けた。

 ハーグにある我が家、『白亜の館』のリビングでは、僕、ライルが最愛の孫、ルーカスを抱っこしてあやしているところだった。

 この世界では、正月が来ると全員が一斉に一つ歳をとる。

 僕もついに四十四歳。ルーカスは、去年の二月に生まれたから、今日で一歳になった扱いだ。まだよちよち歩きで、言葉も「マンマ」「パパ」が言えるかどうかというところだ。


「よしよし、お年玉だぞー。何が欲しい? お菓子か? それともおじいちゃんのキスかな~?」


「ぶー!」


「ライル義父さんはルーカスが好きでちゅね~」


 ノーラちゃんがルーカスを抱きながら、微笑んでいる。


「お小遣いならアタイにおくれよ!」


 マリアちゃんが、ぼくにおねだりする。


「あいでっ!」


 マリアちゃんのおでこに、ノーラちゃんがデコピンしていた。


「おっ、照れているのか! 将来有望だなあ!」


 僕がルーカスに向かって、デレデレに顔を崩していると、ソファの方から呆れたような声が飛んできた。


「……父さん。ルーカスが嫌がっているように見えるのは、僕の気のせいかい?」


 グラスを片手に苦笑しているのは、昨日ゼナラ王国から帰還したばかりの次男、フェリクスだ。今日から二十歳になる。すっかり精悍な顔つきになり、頼もしい限りだ。


「そうだよ、親父。一歳児相手に本気で絡むのは、世界広しといえども親父くらいだよ」


 隣で同じくグラスを傾けているのは、長男のレオ。こいつも同じく二十歳。レオ自動車の社長として、毎日バリバリ働いている。


「失礼な! これはスキンシップだぞ! なあ、ルーカス?」


「だー!」


 ルーカスが僕の鼻をペチペチと叩く。痛くない。むしろご褒美だ。


「ほら、フェリクス、レオ。お前たちも飲むか? 二十歳になったんだし、堂々と飲めるぞ」


「もう飲んでるよ。……それより親父、仕事の方はどうなってるんだい?」


 フェリクスが痛いところを突いてくる。


「先月の決裁書類、まだ半分も終わってないらしいね。執務室で『書類を見ると眠くなる呪いにかかった』とか言って、昼寝していたそうじゃないか」


「うぐっ……! そ、それは不可抗力で……!」


「社長業やってるとわかるけどさ、トップがサボると下が苦労するんだよねぇ」


 レオまで追撃してくる。息子たちからの正論パンチに、僕がたじたじになっていると、キッチンから愛しい奥さんたちが現れた。


「あらあら、二人とも。パパをいじめないであげて」


 お節料理の重箱を持ってきたのは、ヴァレリアだ。


「そうよ。ライルに真面目に仕事をしろなんて、魚に空を飛べというようなものだわ。無理っスよ、無理」


 ワインの瓶を抱えているのは、アシュレイだ。


「……二人とも、フォローになってない気がするんだけど?」


 僕が抗議するが、二人は「ふふふ」と笑うだけだ。

 ヴァレリアが僕の隣に座り、ルーカスを受け取ってあやし始める。アシュレイが僕のグラスに酒を注いでくれる。


「いいじゃないか。ライルはそこにいて、ニコニコ笑っていてくれれば、それで平和なんだから」


「そうね。科学的にも、ライルの笑顔にはリラックス効果があることが証明されているっス(当社比)」


「母さんたちも、親父に甘いんだからなぁ……」


 フェリクスとレオは肩をすくめながらも、その表情は柔らかい。

 久しぶりに家族全員が揃った、穏やかな正月の朝。

 僕たちは朝から酒を酌み交わし、他愛のない話に花を咲かせた。


 そして昼過ぎ。

 僕たちは着替えを済ませると、車に乗り込み、帝都の皇宮へと移動した。

 恒例の新年祝賀パーティーだ。


 きらびやかなシャンデリアの下、着飾った貴族たちが談笑している。

 その中心に、一人の青年がいた。


「あ、ライルさん! 待ってたよ!」


 アヴァロン帝国前皇帝、アウレリアン陛下――通称、リアン君だ。

 彼もまた、一つ歳をとり、立派な前皇帝としての風格……は、僕の前では完全に消え失せている。


「明けましておめでとう、リアン君。今年もよろしくね」


「うん、おめでとう! ……で、ライルさん。いつもの、やる?」


 リアン君がバーカウンターの方をチラリと見る。

 僕はニヤリと笑って頷いた。


「もちろん。新年の景気付けといこうか!」


 僕たちは燕尾服の袖をまくり、カウンターの中へと入った。

 手慣れた手つきで銀色のシェイカーを手に取る。


「今年も、帝国が平和でありますように!」


「みんなが、美味しいお酒を飲めますように!」


 シャカシャカシャカッ!

 軽快なリズムが会場に響き渡る。

 皇帝の僕と、現役大臣が並んでカクテルを作るなんて、歴史上、この国くらいのものだろう。

 出来上がった色鮮やかなカクテルを掲げると、会場中から「乾杯!」の声が上がった。


 今年もまた、忙しくも楽しい一年になりそうだ。

 僕はシェイカーの冷たい感触を掌に感じながら、幸せな予感に酔いしれていた。


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