表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【書籍化作業中】投げたら刺さった~ラッキーヒットで領主になった僕の成り上がり英雄譚~  作者: 塩野さち


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

236/279

第236話 お嫁さんへの試練

【リアン皇帝視点】


『アヴァロン帝国歴177年 11月21日 昼 晴天』


(……どうすればいいんだ、これ……)


 朕こと、皇帝リアン・フォン・アヴァロンは、目の前に山と積まれた羊皮紙の束を前に、天を仰いだ。その一枚一枚に、帝国の未来を夢見る女性たちの名前と、レオさんが発明したという『写真』が貼り付けられている。その数、すでに千を超えていた。

 オルデンブルク宰相が、朕の将来を案じて始めたこの『お嫁さん探し』は、今や帝国中を巻き込む巨大なお祭り騒ぎと化している。それはそれで、国が活気づいて良いのかもしれぬ。じゃが、この中から、たった一人、生涯を共にする相手を選べと申すか。あまりに、無茶な話であった。


 その日の午後、皇宮の一室に、この難題を解決するための面々が集められた。

 帝国の宰相として、この騒動の責任者でもあるオルデンブルク公。朕の、そして帝国の副宰相にして、全ての元凶でもあるライル・フォン・ハーグ侯爵。そして、なぜか女性代表として、騎士団長のヴァレリア殿までが、硬い表情で席に着いている。

 会議が始まってから、すでに半刻が過ぎていた。じゃが、誰も口を開こうとせず、ただ重い沈黙だけが、部屋を支配しておった。


 その、息が詰まるような空気を破ったのは、やはり、あの男の一言であった。


「うーん、お嫁さん候補の写真は集めているよね? 見た目も大事だけど、頭がいい人がいいんじゃないかな? テストとかしてみたら? それで人数をしぼって、リアン君に選んでもらうんだ!」


 ライル殿が、まるで畑に植える芋の種類でも決めるかのように、実にのんきな口調でそう言った。

 その、あまりに単純明快な提案に、これまで難しい顔で腕を組んでいたオルデンブルク宰相が、待ってましたとばかりに、ぱっと顔を輝かせた。


「それじゃよ、ライル殿! さすがは副宰相殿、頼りになるのう! 帝国の母となるお方には、美貌だけでなく、優れた知性も不可欠! まことに、ごもっとも!」


 宰相の、あまりの食いつきぶりに、朕は少しだけ引き気味であった。すると、それまで黙って控えていたヴァレリア殿が、静かに、しかし、きっぱりとした声で口を開いた。


「でしたら、小官からもよろしいでしょうか? 一応ですが、武の才能も見極めてはどうでしょうか?」


「ほう、それはなぜ?」


 宰相の問いに、彼女は微動だにせず、ただ淡々と答える。


「無いよりはいいでしょう?」


(……それも、そうなのかもしれぬ)


 この国の妃たちは、発明家であったり、騎士であったり、果ては闇の教皇であったりするのだから。

 じゃが、朕には、一つだけ、どうしても譲れぬことがあった。


「朕は……性格が、大事だと思うのだが……」


 朕の、心の底からの、か細い呟き。それに、ライル殿は、いつもの、全てを包み込むような、人の良い笑顔で応えてくれた。


「大丈夫だよ、リアン君。候補は数人にしぼることになるけど、最後はリアン君が直接話をして、一番『いいな』って思った人を選ぶといいよ!」


「う、うむ、ま、まあ、それなら良いか……」


 その言葉に、朕は少しだけ、安堵した。

 こうして、帝国の歴史上、最も奇妙で、そして、最も壮大な『花嫁探しの試練』が、正式に開始されることとなったのだった。

「とても面白い」★四つか五つを押してね!

「普通かなぁ?」★三つを押してね!

「あまりかな?」★一つか二つを押してね!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ