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【書籍化作業中】投げたら刺さった~ラッキーヒットで領主になった僕の成り上がり英雄譚~  作者: 塩野さち


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第173話 新たなる夢とライル国王の約束

【マルコ・フォン・ブラント視点】


『アヴァロン帝国歴172年 7月1日 快晴 ハーグ・白亜の館』


 ライル・フォン・ハーグ国王との謁見。それは私の人生の、次なる羅針盤を指し示すための重要な儀式であった。


 アカツキの都での、総督という名の退屈な椅子を部下に託し、私は再びこの北の都へと戻ってきた。ただ一つの、新しい夢を、この規格外の王に打ち明けるために。


「ライル様。私はこの大陸の、さらに東へ向かいたいのです」


 私は、最新の地図をテーブルの上に広げた。その指先がアヴァロン大陸の東、まだ見ぬ大海原の、さらに向こう側を指し示す。


「アズトラン帝国の情報によれば、その先には、『香辛料の国』と『茶と絹の国』と呼ばれる、豊かな文明が存在すると言います」


 私は、アカツキの都で聞いた、アズトラン帝国の商人たちの話を付け加えた。


「アズトラン帝国では今、その国から伝わった『茶』という飲み物が、大変な流行を見せております。そして、その『茶』を仕入れるための近道が、一つだけございます。大陸の東岸に位置する、香辛料の国『ゼナラ王国』。アズトラン帝国は、その国の港を借り受け、そこを中継地として、茶の国との交易を行っている、と」


 俺は、一度言葉を切り、ライル様の目を、まっすぐに見つめた。


「この、新しい交易路を、我らが手に入れることができれば……。そして、あの『茶』を、このヴィンターグリュンに持ち帰ることができれば、必ずや、この国に、更なる富と、繁栄をもたらすことができると、信じております」


 私は、深く、深く、頭を垂れた。

 ライル様は、しばらく何も言わずに、地図の上の空白の東の果てをじっと見つめていた。やがて彼は、いつもの人の良い屈託のない笑顔でにこりと笑った。


「面白いじゃないか! 『茶!』 きっとおいしい飲み物なんでしょ? すごく飲んでみたい! よし、マルコさん、行っておいでよ!」


 その、あまりにあっさりとした許可の言葉。だが、彼の支援は、それだけでは終わらなかった。


「そうだ! どうせなら、一番速くて、一番頑丈な船で行かないとね! ヴァレリア! 新造の高速軍艦を、十隻、マルコさんのために回すように、手配してくれ!」


「は……はい!? じゅ、十隻も、でございますか!?」


 隣に控えていたヴァレリア殿が、驚愕に目を見開く。


 私もまた、信じられない思いで顔を上げた。最新鋭の高速軍艦を十隻。それは一国の王が、一個人の探検家に行うには、あまりに破格の、そしてあまりに無謀な投資。


 だが、この御方はいつだってそうだ。常識も採算も、全てを飛び越えて、ただ「面白いから」という理由だけで、人の夢に全力で乗っかってくれる。


「やった……! やったぞ……! ありがとうございます、ライル様! このマルコ、必ずや、ご期待に応えてみせますぞ!」


 私は、子供のように声を上げて喜んでいた。


 私の新しい冒険の帆が、今、この北の地で、最高の追い風を受けて上がったのだ。


「とても面白い」★五つか四つを押してね!

「普通かなぁ?」★三つを押してね!

「あまりかな?」★二つか一つを押してね!

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