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【書籍化作業中】投げたら刺さった~ラッキーヒットで領主になった僕の成り上がり英雄譚~  作者: 塩野さち


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172/279

第172話 ヴィンターグリュン王の許可と、探検家の夢

【マルコ・フォン・ブラント視点】


『アヴァロン帝国歴172年 3月1日 快晴』


 ライル国王からの返事は、思ったより早く届いた。


 その、インクの匂いがまだ新しい手紙には、彼らしい気の抜けた、しかし温かい言葉が綴られていた。


『やあ、マルコさん、久しぶり! アカツキの都は、どうかな? シトラリちゃんも、マクシミリアン君も、元気そうで何よりだ。

 総督を辞めたいって話、読んだよ。君がそうしたいなら、僕は止めない。ちょうど、アカツキには、ディアス君っていう、すごく優秀な若い副総督がいるって、シトラリちゃんから聞いてるんだ。彼に任せて、一度、ハーグにおいでよ。話は、それからだ』


 ディアス。確かに、有能な若者だ。彼になら、安心してこの都を任せられる。

 私は、すぐにディアスを呼び、総督代理の任を授けると、その足で、ハーグ行きの船に乗り込んだ。


 数年ぶりの、ヴィンターグリュン王国。


 いつの間にか鉄道というものが出来ていた。乗ってみたが、これは良いものだ。


 到着した首都ハーグは、相変わらずの活気に満ちていた。そして、私が通されたのは、かつてのハーグの城ではなく、その近くに立つ、壮麗な白亜の館だった。


 館の中は、まるで小さな王国の縮図のようだった。様々な国の言葉が飛び交い、肌の色も、髪の色も違う、たくさんの子供たちが、元気に走り回っている。その光景を、美しい妃たちが、優しい笑顔で見守っていた。


 やがて、その中心にいるこの国の主が、私の姿に気づいて満面の笑みで手招きをしてくれた。


「マルコさん! よく来たね!」


 ライル・フォン・ハーグ侯爵。数年の歳月は、彼に、摂政としての威厳よりも、父親としての、温かい深みを与えたようだった。


「さて、話を聞こうか。今度は、どこへ行きたいんだい?」


 謁見の間で、二人きりになると、彼は、早速、本題を切り出した。


 私は、懐から、一枚の、古びた地図を取り出した。それは、私が、これまでの冒険で描き上げてきた、世界地図の、まだ空白のままの部分。


「ライル様。私は、この大陸の、さらに東へ、向かいたいのです」


 私は、地図の上で、その空白地帯を、指でなぞった。


「アズトラン帝国で集めた情報によれば、アヴァロン帝国の東の砂漠の、さらにその先には、豊かな文明が存在すると言います。その国との交易路を開くことができれば、必ずや、このヴィンターグリュン王国に、更なる富と、繁栄をもたらすことができると、信じております」


 そして、私は、言葉を継いだ。


(この国王にウソは通じない)


 まっすぐに目を見て語り掛ける。


「ですが、本当の理由は、違います。私は……ただ、この目で、まだ誰も見たことのない、世界の果てを、見たいのです。どうか、この、一人の探検家の夢をお許しください」


 私は、深く、深く、頭を垂れた。


 ライル様は、しばらく、何も言わずに、地図の上の、空白の東の果てを、じっと見つめていた。その横顔は私の夢を、そして広がる未知なる世界を、楽しんでいるかのようにも見えた。


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