表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【書籍化作業中】投げたら刺さった~ラッキーヒットで領主になった僕の成り上がり英雄譚~  作者: 塩野さち


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

163/279

第163話 【第一章 僕とユリアン皇帝 完】エピローグ 玉座の隣にある日常 【帝位継承戦争編 ~偽りの正義と玉座の空~ 終盤 帝国の審判 閉幕】

【ライル視点】


『アヴァロン帝国歴170年 7月10日 帝都執務室 快晴』


 帝国の摂政に就任してから、数ヶ月が過ぎた。

 僕の目の前には、相変わらず、山のような決裁書類が積まれている。東方諸侯領の復興支援計画、新しい街道や鉄道の予算案、そして、貴族同士の、実にくだらない領地争いの仲裁……。


(うーん……。関税率の、小数点以下の調整……? もう、どっちでもいいよ……ビアンカに任せようっと。あとでシトラリちゃんに、皇帝ってどうやるの? って聞いてみるか。アウレリアン君がいろいろ聞いてくるし……)


 僕は、大きな、大きなため息をついた。

 王様になった時も大変だと思ったけど、帝国の摂政っていうのは、その比じゃない。毎日、難しい顔をした偉い人たちがやってきて、僕にはよくわからない、難しい話ばかりしていくんだ。


 僕は、ペンを置くと、椅子から立ち上がり、執務室の大きな窓辺へと歩み寄った。

 窓の外には、どこまでも続く、平和な帝都の景色が広がっていた。

 宮殿の庭では、レオとフェリクスが、侍女たちを相手に、元気に走り回っている。生まれたばかりの弟や妹たちも、乳母車の中で、気持ちよさそうに昼寝をしていた。アシュレイやヴァレリアたち、僕の愛する家族が、その光景を、優しい笑顔で見守っている。

 そして、その向こうには、活気に満ちた街並みと、そこで暮らす、たくさんの民たちの笑顔があった。


(……そっか)


 僕は、その光景を、ただ、じっと見つめていた。


(僕が、この、面倒くさい紙の山と格闘しているから、あの子たちは、あんな風に、笑っていられるんだな)


 その、あまりに単純な事実に、気づいた瞬間。

 あれほど重かった肩の荷が、すうっと、軽くなっていくような気がした。

 僕は、ふっと、自然に笑みがこぼれていた。


「……まあ、悪くないかな」


 僕は、もう一度、書類の山へと向き直る。

 よし。今週の仕事は、これで終わりだ。明日からは、月の半分のお休み。ハーグに帰って、みんなで、新しい畑の世話をしないと!


 玉座の隣。それが、僕の新しい居場所になった。

 僕は、きっと、これからも、難しい政治のことは、よくわからないままだろう。

 それでも、彼は、彼だけのやり方で、国を、そして、愛する者たちを、守り続けていく。

 畑を耕し、美味しいご飯をみんなで食べ、時には、とんでもない思いつきで、世界をひっくり返しながら。

 そう、彼の成り上がり英雄譚は、まだ、始まったばかりなのだから。


(えっ? そうかな? 摂政にまでなったら、もう上はないと思うんだけど……)


「とても面白い」★五つか四つを押してね!

「普通かなぁ?」★三つを押してね!

「あまりかな?」★二つか一つを押してね!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ