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90、青い制服のカシスと魔女ミランダ

「私は、カシスです。冒険者ギルドのゴミ拾いミッションのときに、少しお話をしたと記憶しているのですが」


 カシスが、燃えるような赤い髪と赤い瞳を持つ女性を、ミランダと呼んだことで、王女は、顔には出さないが、炎の魔女ミランダだと察した様子。チラッとカシスの方を見て、表情を引き締める。



「あっ、この秋から入学すると言っていた執事さんですかぁ? あれ〜? どうして青い制服なんですかぁ? 新入生は紺色ですよね〜?」


「今月から、2年生になりました。ミランダさん、ここは2年生の授業の教室ですが、誰かお知り合いでも?」


 カシスは、彼女が新規転生者を捜し回っているのだと察したが、すっとぼけて、ミランダに疑問をぶつける。


「もう2年生になったんですかぁ! ひぇぇえ〜、えーっとぉ、お知り合いというかぁ〜、ちょっと捜している人がいるんですけどぉ、学生じゃないかもなので、答えが難しいのですぅ」


「2年生の教室で、学生じゃない人を捜しているのですか?」


 カシスは、表情に気をつけて、さらに追及する。


「あー、あの〜、あっ! もしかしてカシスさんは、王女ファファリア様の執事なんですかぁ?」


「はい、そうですが」


 カシスは、あえて冷たく言い放つ。


「ひゃー、私は怪しくないですよぉ〜。カシスさん、そんなに怖い顔をしないでください〜。王女様を捜していたわけじゃないですからぁ〜。ごめんなさいぃ〜」


 ミランダは、両手でごめんなさいポーズをして、アワアワと慌てている。



「カシスさんの追っかけなんじゃないの?」


「そうだな。今朝の記事で、この教室のことが出てたからな。お姉さん、カシスさんのファンなら、こんな近づき方はしない方がいいぜ。警備隊につまみ出されるからな」


 周りの人達が、口々に変なことを言っている。


「ええっ? カシスさんは有名なんですかぁ? 私、先月は、ほとんど学校をサボっていたので、流行についていけてないんですぅ」


「有名なんてもんじゃないわ。彼が2年生になってしまったから、1年生は必死に勉強を始めたらしいわよ」


(彼じゃないんだけど……)


 カシスは、性別を否定しようかと思ったが、やめた。魔女ミランダも、カシスを男だと思っているし、わざわざ女だという必要もない。



「そうなんですかぁ? あ、そういえば、記事を見たことがあるような、ないような……」


 すると、ミランダの近くにいた学生が、カシスの記事を見せた。隠し撮りだらけの記事だ。


「わぁっ、素敵ですぅ。カシスさんのカッコいい画像を集めてあるのですねぇ〜。入学から、たった2ヶ月で2年生になったって書いてますぅ。どれだけ勉強したんですかぁ? 私には絶対に無理ですぅ〜。あっ、あれ?」


 記事を見ていたミランダの表情が、ガラリと変わった。


(何? 何かバレた?)


 カシスは、すぐに尋ねたくなったが、下手に話しかけるべきではないと、開きかけた口を閉じる。



「あはっ、ごめんなさいね〜。私、ちょっと用事を思い出したので、帰りますぅ。カシスさんのカッコいい記事は、帰ってから見ますぅ」


 ミランダは、タブレットを机に置くと、教室から出て行った。その画面の下半分には、ユウリが新事業を始めたという記事が載っていた。


(えっ? まさか……)


 カシスは、炎の魔女ミランダが、新規転生者ユウリの元へ行ったのではないかと、不安を感じた。


 魔女が、虹の塔にいた新規転生者を捜し当てた後、どうするつもりかはわからない。すべてを消し去ることで、終焉の先への道が閉ざされるとしても、魔女にそのチカラがあるのかも、わからない。



「さっきの人、ユウリさんの新事業の求人を見てたよな? 給料は高くはないけど、大量募集だろ?」


(求人?)


「すごい報奨金で、新事業を始めるんじゃないか? 最後の魔石の報奨金って、すごい額なんだろうな」


 周りの学生達の話題は、ユウリの新事業の話に移っていた。よく見ると、炎の魔女ミランダが見ていた画面には、ユウリが、最後の魔石を見つけたというガセネタは、載っていない。


(心配はいらないか)


 そもそも、ユウリが最後の魔石を見つけたという記事が、魔女達の罠なら、ユウリが狙われるわけがない。それに、狡猾な炎の魔女ミランダが、見ていた画面を残しているとも限らない。



 ◇◇◇



「カシスっ! 秋の感謝祭の前に、実技試験があるみたいよ。授業を受けてなくても、試験を受けられるみたい」


 王宮に帰る馬車の中で、王女はニヤニヤしながら、カシスに一枚の紙を見せた。


「体育館を使った試験ですね。へぇ、剣術、武術、護身術、魔術の中から、選択して受けるのですね。以前、中庭でおっしゃっていた試験ですか」


「ええ、そうよ! 裏面もちゃんと読んでっ」


 王女に促され、カシスが裏面を見てみると、カシスの興味をそそるような大会の記載があった。


 秋の感謝祭の前に試験を受けて、優秀な成績で合格した学生は、他校との交流試合が感謝祭の期間中に行われると、書かれてある。


 目立つと魔女達に見つかるのではないかとも思ったが、目を輝かせる王女のキラキラパワーには勝てない。


「カシスっ! これは、王立大学校の意地がかかっているわ。他校も気合いを入れているわよっ」


「王立大学校は、座学を学ぶ学校ですよね? 多くの学者さんも、王立大学校の出身ですし」


「ええ、王立大学校は、1勝もしたことないと思うよ。3対3のパーティ戦だからね」


(まさか……)


「もしかして、ファファリア様は、選ばれようとお考えですか? 危険です!」


「危険はないわ。冒険者が事故がないようにするもの。ラークさんに依頼しましょう! セイラは非常勤講師だから、冒険者の推薦ができるはずよ。魔女ミランダがいれば、必ず勝てるわ」


(いやいや……)


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