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89、功績を奪われた?

 それから数日後、王女はまた、王立大学校への通学を始めた。宣言通り、ちょうど10日ほどサボっていたことになる。当然カシスも王女の護衛として、一緒に通学することになった。


 校内をトコトコと歩く王女の可愛らしさに、あちこちから歓声があがる。王女に変な人間が近寄らないように、非公認のファンクラブのような警備隊もできていた。


 また、王女の姿を魔道具で撮影しようとする部外者も増え、様々な記事になっていた。それと同時に、カシスに関する隠し撮りや記事も増えていった。



「カシス、私、次の試験で、2年生になるからねっ。さっさと、紺色の制服とはサヨナラするよ」


「かしこまりました。私も準備をしていますし、秋の感謝祭の前だから、キリも良いですね」


「あっ、来月末は感謝祭ね。感謝祭の期間は休みになるから、来月は試験がないわね。絶対に今月でキメるわ!」


 カシスは、王女がそれほど紺色の制服が嫌なのかと、面白く感じていた。


「ファファリア様は、早く2年生になりたいのですね」


「ええ、中途半端な終わり方はしたくないの。終焉の1年半前には、学校には通えなくなるわ。だから、残された時間は少ないのよ。3年生の修了証をもらうからね」


(あっ、それで……)


 カシスは、口止めされているため、5つの石が揃ったことは、王女には話していない。そして、カシス自身が魔女に狙われていることを思い出すと、不安で潰れそうになる。



「あっ、カシスは、まだ次もあるんだから、そんな顔をしないのっ! それより、ラークさんと会う機会を作りなさいっ。ちゃんと恋人になるのよっ」


「は、はい。いや……あ、はい」


「やっぱり、ここはセイラかしら。でも今は、非常勤講師の準備が大変みたいなのよね。こないだ手紙を出したら、別荘で勉強してるという返事が来たわ」


(まだ、療養中なのね)


「そういえば、セイラさんが授業をされるんでしたね」


「ええ、3年生でしか取れない授業よ。早く3年生にならないとね。セイラの授業を一番前で、ニヤニヤしながら受けるんだからっ」



 ◇◆◇◆◇



 その月の終わりの試験で、王女はギリギリ20個合格に到達し、制服の色を青色に染め直した。もちろんカシスも、2年生になる。


 翌月から、青色の制服で通学を始めると、また王女の可愛らしい映像と記事が、目立つようになっていった。カシスの盗撮が増えたのも言うまでもない。



「カシスさま、この記事をご存知でいらっしゃいますかぁ?」


(なぜ、様呼び?)


「普通にカシスで構いませんよ。フレッタさん、何か変な記事でもありましたか?」


 授業が終わった後、王女が別の友達に囲まれているとき、2年生を長くやっているという伯爵令嬢が、カシスに声をかけた。


「まぁ! では、カシスさんとお呼びさせていただきますわ〜。変な記事ではありませんの。有料記事ですから、ゴシップでもありませんわ。ご覧になって」


(バレてる?)


 トコトコと、王女も近寄ってきた。


「カシス、あっ、今、私もこの記事の話を聞いたの。これは事実なのかしら」


 カシスは、バクバクしながら、記事を読んでいく。


(あっ、バレてないけど、何?)


 その授業を受けていた他の学生達も、近寄ってきた。



「もう終焉はないのか? 5つの石が揃って、虹の塔のエネルギーが未来に向かって開放されたって」


「このオバサンは、王都の北の山でも魔石を見つけた新規転生者だよな? 終焉が近づくと、魔石のエネルギーが増えるから、発見しやすいらしい」


「すごいよな。ユウリさんは、商人ギルドで莫大な報奨金をもらったんだろ? 最後の魔石を見つけたら、どれだけもらえるんだ?」


 学生達が、口々にいろいろなことを喋っている。


 記事には、ユウリのことが簡単に紹介されていた。レッドボックスに協力している新規転生者で、前世の知識を活かした商品開発をするなど、商人としての才能も高いと書かれてある。


(なぜ……功績を奪われた?)


 最後の魔石はカシス達が見つけたし、虹の塔では、セイラ達が命懸けで魔女達の攻撃を受けたのに、記事によると、ユウリとレッドボックスの功績になっていた。



「にわかには、信じられないわね」


 王女がそう呟くと、騒いでいた学生達は口を閉じた。


(もしかして?)


 カシスは、この記事が、虹の塔にいた新規転生者を捜すために、魔女達が仕込んだ罠かもしれないと考えた。


 あの日から、カシスはずっと男装している。授業や勉強があるため、私服で外出することがなかっただけだが。


 そのため、カシスを見つけられない魔女達が、こんな罠を考えたとしても、おかしくはない。魔女の協力者は、どこにでもいるだろう。



「王女ファファリア様、何が信じられないのですかぁ? 何かご存知だったら、教えてくださぁい」


(えっ? この声)


 振り返ってみると、紺色の制服を着た、燃えるような赤い髪と赤い瞳を持つ女性がいた。いつだったかゴミ拾いのミッションで会ったときとは、印象が違う。あの時は、不安そうな男装執事だったが、今は凛としている。


(炎の魔女ミランダだわ)


 カシスは、まるで心臓を掴まれたかのように、苦しくなった。だが、ここは学校だ。魔女が突然、何かを仕掛けてくるはずはない。



「貴女は、どなただったかしら?」


 王女は、冷ややかな視線を向けた。カシスは、マズイと直感した。今、魔女達は必死に、虹の塔にいた新規転生者を捜している。


「王女ファファリア様、初めましてかもしれないですぅ。私は〜」


「あっ、ミランダさんですか? 冒険者ギルドの仕事で会いましたよね」


 カシスは、炎の魔女ミランダの言葉に、割って入った。


「はい〜。あれ〜? お兄さんは、どこかで見たことがあるような……」


 ミランダは、自分の頭をぽかぽかと殴って、首を傾げていた。


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