表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

83/92

83、塔からの脱出

 鏡が放つ強いエネルギー光が収まると、さっきカシス達が入ってきた扉が開いた。


(えっ!? セイラさん)


 服がボロボロになったセイラの背中が見える。扉が開いたため、セイラは中に倒れ込んだ。魔女達に攻撃されても、迎撃しなかったのだとわかると、カシスは、手先が冷たくなるのを感じた。



「ロザリー、魔法の使用を許可してくれ」


 ラークがそう言ったが、ロザリーは首を横に振る。


「ロザリー! セイラさんが死んじゃうわ」


 カシスが思わずそう叫ぶと、紫色の花束から、強い香りが漂い始めた。


(どうなっているの?)


 香水のような強い香りは、黄色っぽい光を放ちながら、扉の近くに倒れているセイラを包み、さらにその先へと出て行く。そして、塔の一階まで落ちていた双子の魔導士も、強い香りに包まれた。



「えっ……何の奇跡?」


 セイラは、上体を起こすと、キョロキョロしている。そして、何かを見つけ、慌てて立ち上がった。


 セイラの視線の先には、黄色っぽい光があった。



「もしかして、精霊様?」


 カシスがそう呟くと、黄色っぽい光は、パッと弾けて、紫色の髪の少女の姿に変わった。


『キミ達、素早く行動できたね。道化師が私から逃げ回っている隙に、上手くできたよ。あとは、道化師が宣言すれば、箱庭は開かれる。一番近いお祭りはいつかな?』


(やはり、精霊アーシェル様だ)


「秋の感謝祭かな? 来月の末にあります」


 カシスは、ラークの表情を見ながら、そう答えた。


『そう。じゃあ、それまでは、キミは隠れている方がいいね。きっと魔女達は、鏡のエネルギーを解放した主人公を捜すよ。あぁ、この塔にも来てるね』


 精霊アーシェルは、ニヤッと笑うと、人差し指を口の前に立てた。そして……。


『ボックスの本を破った子は、やっぱり私みたいに、かわいくて素敵な女の子ね。キミ、私に似てるよね。紫色がよく似合うよ』


(えっ? 何?)


 カシスは、精霊アーシェルとは、全く似ていない。精霊アーシェルは、小柄でとても可愛らしい少女だ。



 しばらくすると、セイラがケラケラと笑い始める。それに釣られるように、ラークも笑っていた。魔力のないカシスは、何が起こったか理解できていない。


「精霊様、仲間の治療をありがとうございます。それに、塔の一階にいた魔女の気配が消えました」


 ラークが深々と頭を下げる。


『魔女達は、嫉妬深い道化師に告げ口をしに行ったのよ。私、もう何十年も前から、この箱庭に飽きてたのよね。これでスッキリしたわ。私に媚びる魔女達にも、うんざりだったの。あっ! 道化師を見つけたわ。ふふん、ボコボコに蹴り倒してくるわっ』


 そう言うと、紫色の髪の少女は、スッと姿を消した。黄色っぽい光も残っていない。精霊アーシェルは、完全にここから離れたようだ。




「あの、私って、精霊様に似てますか?」


 カシスは、最初に笑い始めたセイラにそう尋ねた。


「全然似てないよ。どちらかと言えば、真逆かもね。ここでは長話はできないよ。虹の塔から出よう」


 セイラはそう言うと、半透明なロザリーの方に視線を移す。このロザリーは、部屋を守っているのだろう。


『ここでの人間の魔法発動は、神々の目障りになるため禁じられています。私が1階への転移魔法陣を発動します。すみやかに塔から離れてください』


 ロザリーはそう言うと、壁にあるスイッチを押した。すると、扉の前に、魔法陣が現れた。


 カシスは、ラークに背を押されて、その魔法陣へ足を踏み入れる。セイラもそこに立つと、魔法陣が光り始め、カシスは浮遊感を感じた。



 ◇◇◇



 塔の一階は、広い空間になっていた。あちこちに、黒く焼けたような跡がある。


(あっ! ケインさんが)


 塔の上から落ちた双子の魔導士は、生きていた。まだ、床から立ち上がれない状態のようだ。ケインの服は、血でひどく汚れている。


「ダインさん、ケインさん、動ける? このまま塔の外に出るよ。すぐに塔の修復が始まるから、ぐずぐずしていたら閉じ込められる」


「動けます。終わったのですね。じゃあ、治癒魔法を」


「ダメだ! ケイン、まだ魔法は使うな。魔女にバレる。先に離れるぞ」


 ラークはそう言うと、ダインに肩を貸している。ダインの方が重傷だったため、香りによる回復魔法でも、動ける程度にしか治っていない。


 そして、5人は、虹の塔から出た。だが、まだ歩き続ける。数分歩いたところで、やっとセイラが足を止めた。カシスには見えないが、塔を囲う結界があるためだ。



「じゃあ、二人を回復するね」


 セイラはそう言ったが、ラークがそれを止めた。


「セイラ、そんな状態で魔法は使うな。死ぬぞ。とりあえず万能薬を飲んでくれ」


 ラークはそう言うと、三人に小瓶を渡した。


 その直後、カシスの目にも、ほんの数メートル先に、塔を囲う結界が見えた。その結界内に強いエネルギーが渦巻いている。



「あぶねー。ギリギリだったな」


「万能薬があるなら、先に飲んでから離れればよかったじゃない」


 セイラの意見に、カシスも賛成だった。苦しい状態のまま、ここまで歩かされた双子の魔導士が可哀想だと思ったが……ラークの表情を見て、それが間違いなのだと察した。


「セイラ、ちゃんと考えろ。俺達が塔の結界の外まで逃げられたのは、5人全員が、精霊様の加護の香りを纏っていたからだ。万能薬を飲むと、加護の香りは消えるだろ」


「えー、カシスさんが花束を持ってるじゃない。あっ、匂いがしないわね」


 セイラは、ラークの指摘にツッコミを入れたが、すぐに自己解決していた。


「とりあえず、着替えだな。カシスには悪いが、ちょっと変な場所に行く。コイツらをまだ放置できないからな」


 カシスが頷くと、ラークは転移魔法を発動した。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ