表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

75/82

75、ここに来た理由

「遅くなってしまってごめんなさいね、ガッシュ男爵」


(どういうこと?)


 セイラの転移魔法で、カシス達は、本当にカシスの家に到着した。しかも、事前に連絡を取り合っていたらしく、カシスの父が自ら、セイラ達を出迎えた。


「夜になると聞いていたから、こちらもそのつもりでおりました。ブルーボックスの皆さんなら、突然の訪問でも構いませんよ。おや?」


 ガッシュ男爵は、ブルーボックスのメンバーの中に、娘のカシスがいることに驚いた。


「あぁ、お話していませんでしたね。カシスさんにも、協力していただいているんですよ」


「そうでしたか。とりあえず、中へどうぞ。あいにく妻は、息子の寮に行っていて不在なのですが」


(ん? モールの寮?)


 カシスの弟モールは、少し身体が弱い。もうすぐ7歳になるが、年齢よりも幼く見える。この秋から、初等学校に通うことが決まっていたが、寮生活をするとは聞いていない。



 セイラ達は、来客用の大部屋に通された。大部屋とはいっても、20人も入ると窮屈な部屋だから、ここに来る前の鍋屋の個室の方が広い。


 一番後ろからついて行ったカシスは、父に軽く手をあげて挨拶をした。その雑な挨拶に、ガッシュ男爵は、ため息を吐いた。


 一方で、カシスは、それでいいと思っている。


 弟のモールが幼いため、初等学校の成績が優秀だったカシスに家督を、という話が出たことがあった。しかし、カシスとしては、それを避けたかった。初等学校の成績が良かったのは、10歳のときに前世の記憶が戻ったためだ。身体が弱くても一生懸命に努力するモールが、家を継ぐべきだと考えている。


 また、幼なじみのジョセフが、婿入りなんて話をし始めたことで、いろいろとややこしくなった。


 それもあり、カシスは、弟が家を継ぐことができるように、両親に対して距離を置くようになっていた。



 ◇◇◇



「セイラさん、紫色の石の件ですよね? 5年ほど前にも、ブルーボックスの皆さんが探しに来られましたが、見つからなかったと聞いています」


(5年前にも来たの?)


「それは、リーダーが別の者だったときの話ですよね」


「ええ、名は忘れましたが、男性でしたね。ガッシュ領には、いろいろな国から、紫色の石を探しに来られています。手紙にも書きましたが、これまで見つけた人はいません」


(各国から……)


 セイラは、カシスの方をチラッと見て、何かの合図をした。カシスにはその意味はわからなかったが、下手に口出しをしない方が良さそうだと感じた。



「ガッシュ男爵、私達は、秋の感謝祭までに、紫色の花をある程度集めたくて、ここに来ました」


(あれ? 話が違う)


「紫色の花ですか。そういえば、今年の秋の感謝祭は、この国が開催地でしたね。ガッシュ領では、夏に紫色の花は収穫されて出荷しているはずです。今は、もう無いですよ」


「紫の小径こみちに行けば、紫色の花を見つけることができるという噂を聞きました。秋の感謝祭では、どの国で開催しても、多くの人が集まります。花屋に紫色の花がないのは困るそうです」


「それなら、ここから北へ馬車で半日ほど行けば、ルーメン国があります。季節に関係なく、紫色の花が収穫されていますよ」


「今、ルーメン国は、アバリア国と領土問題で戦乱中です。だから交易都市クースでは、紫色の花は売り切れているんですって。おそらく、性悪な商人が買い占めたのでしょう」


「戦乱ですか。アバリア国は、隣国すべてと領土問題を起こしますな。そうか、その情報は、入手していませんでした。紫色の花の量産地で戦乱が起こっているなら、賢い商人は買い占めるでしょうね。紫色の花は、大切な物ですから」


(なぜ、大切なの?)


 カシスが首を傾げていることに気づいたガッシュ男爵は、コホンと咳払いをした。自分がカシスにまだ教えていないことだったが、話すべきか迷っている様子。



「あっ、カシスさんは、知らないかな? 紫色の花のことは」


 ガッシュ男爵が困っていることに気づいたセイラは、カシスに問いかけた。


「はい、知らないです。あっ、私が仕えている王女ファファリア様は、紫色の花がお好きなようですが」


「じゃあ、王女様は前世で、紫色の花をもらったのかもしれないね。紫色の花は、死期が近い恋人に贈る花なのよ」


「あっ! 紫色の花は、死者の魂を贈り主の元へいざなう、と言われているんでしたっけ。城の雑用係のラークさんから、聞いたことがあります。死期が近い恋人に贈ることが流行っているとか」


 カシスは、王都へ行く前に、交易都市クースで聞いたことを思い出した。


「そう、それよ。紫色の花の伝承が生まれたのが、ガッシュ領にある紫の小径こみちなのよ。だから、ガッシュ領の紫色の花は、交易都市クースでは、他国の花よりもよく売れるそうよ」


「ガッシュ領で、生まれたんですか!?」


「ええ、ガッシュ領で育った紫色の花は、特にその効果が高いと言われているわ」


(それって……)


 セイラが何を考えているか、カシスは気づいた。紫色の魔石は、紫色の花が咲く場所の近くにある。



「ガッシュ男爵、紫の小径こみちの場所を教えていただけませんか? すべてを刈り取るようなことはしません。少しでも手に入れば、それで良いのです」


「紫の小径こみちですか。あの場所には、精霊様がおられる。認められなければ、奥への道は現れません」


「精霊様に認められる条件とは、何でしょうか」


「私には詳細はわからない。ただ、本当に必要とする者か否かを、精霊様が見極められるそうです」


「では、行ってみますので、場所は……」


「夜は閉ざされています。明日の朝に、お越しください。あぁ、良かったら、当家に泊まられますかな?」


「是非、お願いしますわ」


(ええっ? ウチに泊まるの?)



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ