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70、ラークと双子の魔導士の関係

「カシスさん、このチーズ料理は美味しいよ。いつも頼むの。あー、ケインさん、その料理は辛いよ? はい、ラークの分ね〜」


(あっ、弟のケインさんか)


 セイラは、料理を取り分けることが、好きなようだ。カシスにはオススメ料理を教え、ケインには嫌いな辛い料理の情報を教えている。


「セイラ、おまえなー。これは返す!」


 ラークには、ラークが嫌いな物を渡したらしい。取り皿の上には、大きな土色の豆のようなものが大量に乗っている。ゴチンと殴られたセイラの報復だろうか。


 カシスは、取り皿の上の料理に視線を向けていた。ラークが嫌いな物を知っておきたい様子。


「あれ〜? この豆は目に良いらしいよ」


「俺は、別に目が悪いわけじゃねぇぞ。その豆は、腐ってるだろ」


(腐ってる?)


 カシスは、その豆を見たことがなかった。


「私が食べてみてもいいですか? 見たことのない豆なんですけど」


 カシスは緊張しながら、ラークに話しかけた。ラークは、一瞬、ギクッとしたようだが、平静を装う。


「あぁ、いいけど、きっと吐くぜ」


「ええっ? そんなに強烈な味なんですか?」


「カシスさん、この香辛料を付けて食べるのよ」


 セイラは、そんな二人の顔をニヤニヤしながら眺めつつ、カシスに卓上の容器をズイッと差し出した。卓上の調味料セットは、昼間には出していないが、カシスはそのセットの準備をしたこともあるため、中身が何かすぐに気づいた。


(カラシのような粉よね?)



 カシスは、ラークの前に置かれた皿から、大きな豆を一つ自分の取り皿に入れた。そして、香辛料を少し振り、恐る恐る口に運んでみる。


 噛むとヌメッとした食感がして、一瞬カシスは顔をしかめたが、口の中で噛んでいると、それが何かに似ている気がした。ラークが腐っていると言った意味もわかる。


「これって、納豆みたいな感じですね。セイラさんは納豆を覚えていますか?」


「納豆という名前だったかな? よく食べていた懐かしい味だと思ったよ。でも、こんな見た目じゃなかったと思う」


「はい、この10分の1、いや、もっと小さい豆ですね。納豆は発酵食品だけど、これもそうなのかな」


「たぶん、普通に煮豆にしただけだと思うよ。発酵食が食べられないダインさんも、ギリギリこれは食べられるからね」


(食べさせたのね)


「セイラさんが、双子のお二人の見分けができるのは、もしかして……」


「あはは、どうしてわかったの〜? 私は二人の見分けができなかった頃は、チーズを見せてたの。ダインさんは、チーズを見た瞬間、眉をひそめるから、すごくわかりやすいのよ。今では、見分けられるけどね」


「へぇ、そうなんですね」


 すると、カシスの正面に座るケインが口を開く。


「ダインがそういう反応をするのは、チーズを見せるんじゃなくて、セイラさんが、携帯食のチーズボールを口に放り込もうとするからなんですよ」


「ええっ? それで、セイラさんがチーズを見せた瞬間、ダインさんはガードするようになったのでしょうか」


「カシスさん、賢いわね。そういう条件反射を付けたのよ。カシスさんも、やってみていいわよ」


(セイラさん……)


「いやいや、さすがにそれは遠慮します。しばらく見ていると、ダインさんは口数が少ないから、わかりますし」


「へぇ、やはりカシスさんは分析力が高いわね。ダインさんは辛い物好きでツーンとしてるの。ケインさんは甘い物好きで他人に甘いのよ。あっ、これ、双子の見分け方ね。見た目では、ほとんど識別できないでしょ」


 セイラは、得意げに解説すると、ラークの前に置いた大量の豆を回収している。



「わかりやすいです。あっ、でも、セイラさんにチーズボールを押し付けられそうになりながらも、ダインさんは、セイラさんと一緒にいることが多いですね」


 カシスがそう指摘をすると、ラークが少し慌てた様子。


 実際には、人付き合いの得意なケインが第二王子に仕えているため、消去法的に、セイラがダインを連れ回すことが多いようだ。双子の魔導士は幼い頃、大商人サンサンに命を救われた過去がある。そのため、サンサン家の魔導士として、幼い頃から働いていた。


「ん〜、私はおしゃべりな性格だから、静かなダインさんと一緒の方が合うのよ〜。一方的に喋り続けることができるもの」


「なるほど、相性の問題ですね」


 カシスは素直に頷き、納得した様子。そんなカシスとセイラをチラチラと見比べ、ラークは、ふぅっとため息を吐いた。




 食事がほぼ終わると、セイラは、また店員を呼び、コソコソと注文を始めた。メニューの一部をぐるっと指したことから、カシスは、セイラがまたデザートパレードをするつもりだと気づいた。


「セイラさん、ミッションのお礼で私がごちそうしたいのですが……」


「ん? それは、ラークと二人のときにしてちょうだい。リーダーがおごるのは、冒険者として常識よ」


「あっ、すみません。失礼なことを言ってしまいました」


 セイラは、何でもズバッとはっきりと言うが、すぐに忘れる性格らしく、後に引きずるタイプではない。


「セイラ、おまえ、またデザートを並べる気だろ? カシスは、それを注意したんだぜ? 夜の酒場でのデザートは、あまり好まれないからな」


(えっ? そうなの?)


 カシスは何も考えてなかったが、それは、利益率に関する商人の常識らしい。酒場で最も儲かるものは飲み物で、他店から仕入れるデザートは、ほぼ儲けなしで提供されている。


「いいじゃない。お酒も頼むんだから〜。あっ、ラークが気に入ってるベリーのカクテルも4つお願いね〜」


 結局、セイラはすべてのデザートを注文したらしい。ラークは、ため息を吐くと、表情を引き締めた。


「それで、今夜の本題は何だ?」



皆様、いつも読んでくださってありがとうございます。

良いお年をお迎えください(*≧∀≦)

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