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68、酒場ベリーズで待ち合わせ

 翌日の夜、カシスはセイラに呼び出され、酒場ベリーズに行った。王女の夕食の付き添いの後、王女からこの件について告げられたため、カシスは夕食を食べずに店に来ている。


「カシスさん、久しぶりだな。今日は客かい?」


「こんばんは。はい、セイラさんと待ち合わせなんです」


 カシスは、店の入り口でシルバーカードを提示した。これまではブロンズカードだったから、夜の入店はできなかったためだ。


「セイラさんなら、あれから、よく来てくれてるぜ。奥の円卓でいいか?」


「はい、大丈夫です。夜は雰囲気が違うから、なんだか緊張しますね」


「あはは、夜は昼のように忙しくはない。時間に余裕のある客ばかりだ。あぁ、ケンカが起こったら助けてくれよな。奥の67番に案内してくれ」


 店の入り口の店員がテーブル番号を言っただけで、カシスには、どの席かわかった。案内を断ろうかとも思ったが、ガチガチに緊張している白いシャツの男性の顔を見て、素直に案内してもらうことにした。黒いシャツが正規の店員だから、他の色は商人ギルドのミッション組だろう。



「こ、こちらの席で、よろしいでしょうか」


「ありがとう。お兄さんは、ミッション組ですね? 二日目くらいかな?」


 カシスがそう尋ねると、白いシャツの男性は、頭が真っ白になっている様子。アワアワと慌てている。


「えっ、み、三日目で、です」


 ミッション組の男性があまりにも緊張しているため、逆にカシスの緊張は消えていく。


「私も、以前、商人ギルドのミッションでこの店に来たことがあるんです。夕方までの昼営業だったんですけど」


「そ、そうなんですか! じゃあ、先輩ですね。僕は、冒険者登録をしてないから、乱暴な冒険者さんが怖くて……」


(なるほどね)


「からかわれたり雑な扱いを受けるかもしれないけど、黒いシャツを着なければ、大丈夫だと思いますよ。私のミッションのときには、ミッション組で黒いシャツを着ていたせいで店員と間違われて、ヤバいことになった人がいましたが」


「おおっ! 黒いシャツの方がトラブルに巻き込まれにくいという噂があるから、明日は黒にしようと思ってました。店員のフリをしたミッション組は、確かに絡まれそうです! アドバイスありがとうございます!」


 ぺこりと頭を下げた男性は、また緊張した足取りで、入り口へと戻っていった。




「カシス、良いアドバイスだったぜ」


「あっ、店長、こんばんは。あれ? ホール係ですか?」


 カシスに、メニューとおしぼりを持ってきたのは、まさかの店長だった。わざわざ店長がホールに出てくることに、カシスは驚いた。


「あぁ、夕方以降は、初めて来た客には、俺がおしぼりを出すことにしてるんだよ。まぁ、カシスの場合は不要だが、自己紹介と店の決まり事を話してる」


「なるほど。そういえば、店長のことはよく知らないです。あっ、自己紹介ってそういうことじゃないですね」


「あはは、いや、ガラの悪そうな客には、これを見せてるぜ。俺は前世では、他国だが騎士をしていたからな」


 店長は、白銀色のカードを見せた。名前はラークとなっている。レジェンドランクだ。


(プラチナカードのラークさんだ!)


 執事長との話の中で、レジェンドランクのラークという人物が出てきたことを思い出したカシス。


「店長も、ラークさんなんですね。その名前の人は多いから、覚えやすいけど混乱します」


「ふっ、確かにラークは多すぎるよな。プラチナカードだけでも、何人もいるぜ。カシスは酒は強いのか」


「へぇ。あっ、お酒はあまり飲まないので、強いか弱いか、わからないです」


「じゃあ、弱いカクテルを作ろうか。まさか、待ち人が来るまで何も飲まない、なんて言わないよな?」


 カシスは一瞬迷ったが、セイラの性格を考えると、先に飲んでいても大丈夫だと考えた。


「では、店長自慢のカクテルをお願いします」


「おっ? これは勝負だな。美味いと言わせてやるぜ」


 店長は、そう言うと奥のカウンター内へと入っていく。昼営業のときは、紅茶の大きなサーバーがあっただけだが、夜営業では、カウンター内の奥の扉が開かれ、たくさんの瓶が並ぶ棚が見えていた。


 カウンター席には、二組の恋人らしき客の姿がある。店長がカウンター内に入ると、何か話しかけているようだ。


(素敵ね〜)


 カシスは、ぼんやりとカウンター席の方を眺めていた。




「お待たせいたしました」


 しばらく待つと、カシスの元に、オレンジ色のカクテルが届いた。長細いグラスに入っていて、黄色い小さな花がグラスのふちに飾られている。酒を運ぶのは、黒いシャツの店員の仕事のようだ。


「わぁ、綺麗なカクテルですね」


「店長が気合いを入れてましたよ。カシスさん、ですよね?」


「えっ? あ、はい。すみません、お会いしたことがありましたっけ?」


「お話するのは、初めてですよ。俺の妹がカシスさんのことを知っていて、毎日うるさいんです。お話しできて光栄です」


(妹さん?)


 カシスは、カクテルに口をつける。柑橘系のフルーツの爽やかな味がした。


「あっ、美味しい! えっと、妹さんは……」


「おっ、店長、美味しいをいただきましたよ! あぁ、妹は、王立大学校に通ってるんです。妹もカシスさんとは面識はないようですが。どうぞ、ごゆっくり」


(面識はない?)




「カシスさん、遅くなっちゃった〜。あら? まだ飲み物しか頼んでないの? ごめんなさいね〜」


 セイラが来ると、冒険者達の視線が集まったと感じたカシス。だが、なぜか鋭い視線が多い。


(もしかして……)


 セイラは、店員を捕まえると、次々と料理を注文している。注文を終えると、周りの視線に気づいたらしく、ニカッと少女のような笑みを浮かべた。


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