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59、変装する王女

「ファファリア様!? その格好は……」


 カシスが軽装に着替えて、王女の部屋へ行くと、男の子のような服を着た王女が、ドヤ顔をキメていた。髪もまとめて、帽子の中に入れてあるようだ。


「変装よっ! 私だとはバレないでしょ」


「王立大学校に入学するのは、普通は15歳からですから、身体の小ささで、バレてしまいそうですよ?」


「ハッ! そこまでは考えてなかったわっ」


(ふふっ、かわいい)


 ガクリと落ち込む王女が可愛らしく、カシスは癒されていた。


「でも、その姿なら、私の見学に付き添う弟に見えるかもしれませんね。同行者に関する規定に年齢制限はないようですから」


「そうねっ! それでいくわっ」


(キラキラしてきた)


 王女は、他人になりすましたい様子。おそらく本人にも自覚はないだろうが、年相応のいたずら心か。




 コンコン!



「冒険者が到着しました。中庭で待機させています」


 黒服を着た執事が、冒険者ギルドからの書類を持ってきた。そこには受注者の名前の記載がある。


 カシスが受け取り、先に王女が目を通した。王女はカシスの方を見て、キラッキラな笑顔で微笑んでいる。


(ラークさん?)


 カシスの胸は、トクンと跳ねた。受注者は、ラーク、ケイン、そしてセイラの3名だった。


 ラークとケインが無事に戻ってきたのだとわかり、カシスは、心底ホッとしていた。



「カシスっ! 出発よっ」


 王女は、第二王子からもらった魔法鞄を斜めがけにすると、にっこりと微笑んだ。


(ふふっ、かわいい)




 ◇◇◇



「本日は、ご指名いただき、ありがとうございます。私は、リーダーを務めるセイラです。青髪がケイン、そちらの茶髪がラークです」


 セイラは、変装した王女に深々と頭を下げた。紹介されたケイン、ラークは、順に軽く会釈をしている。


 ラークの顔を見た王女は、カシスにキラッキラな笑顔を見せた後、口を開く。


「アナタ達が、王命ミッションのときにカシスを守ってくれたのね。ありがとう。今朝、王立大学校に見学に行かなきゃいけないことがわかったの。わざと私に届くのを遅らせた者がいるわ。移動と護衛をお願いするわね」


 まだ4歳の王女が大人のように話すことに、セイラは驚いた様子。一方で、ラークとケインは、軽く会釈をしただけだった。


 王女は、彼らをただの冒険者だと思っているが、実はそうではない。ラークは、王女の兄の第二王子ウィルラークであり、ケインは、第二王子の側近として、いつも近くにいる。このことには、カシスも気づいていない。二人とも魔法で髪色や雰囲気を変えているためだろう。



「王女ファファリア様は、非常に聡明でいらっしゃいますね。驚きました」


「私は、悪役令嬢だったのよっ。セイラ、久しぶりね」


(えっ? 知り合い?)


 王女が、ニヤッと口角を上げた。これは、悪役令嬢ファルメリア・サフスの特徴的な笑い方だ。


「まさか、ファルメリアさん?」


「ええ、そうよ。貴女と同じことになっちゃったわ」


 カシスは、中庭でこんな話をしていて大丈夫なのかと、ヒヤヒヤしていた。中庭の声は、意外に建物の中に響いてしまう。


「まぁっ! カシスさんは、どこまで知っているのでしょうか」


「カシスには、特に隠し事はしていないわ。お兄様たちには、私の前世が何者だったかは話してないの。私もお兄様たちの前世は知らないわ。終焉で消えてしまうのだから、知らない方がいいでしょ」


 王女がそう話すと、セイラは、カシスの表情を確認した後、ラークとケインにも視線を移した。



「王女ファファリア様、私達は、終焉の先へ進む方法を探しています。カシスさんにも、新規転生者の知識をお借りしているのです」


「私は、終焉の恐怖を覚えているわ。あのときも、終焉の先に進む方法を多くの人が模索していたもの」


「終焉に関しては、多くの記録が残っています。ですが、今回の『終焉の書』は、記録にないことも起こっています。確実な成果が出ていますよ」


「ストーリーは簡単には変えられないわ。邪魔する勢力があるもの。主要キャラクターだと、特にね」


「今の私達は、乙女ゲームに登場するキャラクターですか? カシスさん」


 突然、セイラから話を振られたカシスは、少し慌てた。建物から中庭を覗く人がいないか、キョロキョロしていたためだ。


「あ、えっと、セイラさん達は登場しないです。王宮は出てきますが、第一王子しか登場しないので、ファファリア様も、乙女ゲームのキャラクターではありません」


「ということは、私達には、強制力が強く働くことはないのよね? 主人公である新規転生者は、すごい勢いで殺されているけど」


(えっ!? あっ……)


 カシスは、冒険者ギルドで聞いた秋の感謝祭の話を、思い出した。



「シルバーカードにランクアップしたときに、感謝祭には新規転生者は全員参加してほしいと言われました。王都で開催するそうで、商人登録は100人近くいるのに、冒険者登録は11人だと聞きました」


「カシスっ! その話、私は聞いてないわっ」


「ファファリア様、すみません。まだ先のことなので、ご報告していませんでした。私も参加の返事はしていません」


 王女は、くわっと目を見開き、即座に反応した。


 その様子を、ラークは意外だと感じていた。そして、妹がカシスを大切にしていることを悟った。


「カシスさん、商人登録の新規転生者は、あまり増減はないわ。冒険者登録の新規転生者は、10年ほど前に数百人が殺される事件があったよ。その人達は、もう転生してきたはずだけどね。しかし、11人しか残ってないのね。私が夏前に聞いた情報だと、50人以上いたのにな」


(あっ、中庭に……)



「人が出てきた。俺の阻害魔法では声が漏れるぞ」


 ラークがそう言うと、セイラは軽く頷き、パチンと指を弾いた。


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