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51、かわいい王女と第二王子の噂

「え? カシスからの贈り物? ありがとう。今、開けてもいいかしら?」


「はい、お気に召せば良いのですが」


 カシスは、王女の夕食の前に、雑貨屋で買った……いや、買ってもらった贈り物を渡した。王女の夕食後には、スグリット王子が来るためだ。


 王女は、箱の大きさや軽さから、置き物だと思った様子。包装を開けながら、棚の空き状況を確認している。



「まぁっ! これは花瓶? この軽さは、ガラスではないわね。まさか、石かしら?」


「はい。魔石の抜け殻を加工された物だそうです」


「ちょっと、カシス! お店で騙されたんじゃないの? 黒い魔石は高価なのよ。まだ、王命ミッションの報酬は出てないでしょ?」


(失礼だったのかな?)


 この世界での身分の高い人への贈り物の感覚が、カシスにはわからない。


「騙されてないです。黒い魔石は、縁起が良いと聞きました。道を切り開くチカラがあると。どんな贈り物が良いかわからなくて、失敗してしまいましたか」


「花瓶はたくさんあっても困らないから、嬉しいわ! だけど、こんな高価な物を買う必要はないのよ? どうしましょう。カシスが貧乏になってしまったわ」


「あっ、いえ、実は、雑貨屋でラークさんに会って、お金をお借りしたというか、彼が貸しておくと言って、払ってしまって……」


 カシスがそこまで話すと、王女の目が輝いた。


「カシスっ! その話の続きは、夕食の後に聞くわっ。早く、夕食に行きましょうっ」


(ありゃ……)




 ◇◇◇



 王女の夕食の時間は、いつもより少し遅くなった。


(ふふっ、速いわね)


 王女の食べるスピードは、今まで見た中で最速だった。それほど、早く話を聞きたいようだ。一生懸命に食べる王女のかわいい姿に、カシスは癒されていた。


 王女の誕生日の夕食なのに、メニューはいつもとは特に変わらない。特別な料理を食べる習慣はないのだと、カシスは知った。




「今夜は、いつもより遅いのだな、ファファリア」


 第二王子が、王族の食事のに入ってきた。鎧を身につけた護衛を連れているため、一気に空気感が変わる。


「ウィルラークお兄様は、今夜は早いのですね。私は、夕食の前に、カシスと少し話をしていましたの」


「そうか。俺は、今夜は外出するからな」


「遅い時間にお出掛けになるのですね」


「あぁ、兄上に届け物だ。遠方だから仕方ない。俺が行くしかないようだからな」


(第一王子にお届け物?)


「あっ、クラークスお兄様は、今は、アスナログス国に行かれていますわね。あの国には、常設の転移魔法陣がありませんわ」


「あぁ、そういうことだ。何もなければ、明日の夜には戻れるはずだが、また、くだらないことに巻き込まれそうだな」


「ウィルラークお兄様は、魔術にけておられるから、どこの国も婚姻関係を結びたくて仕方ないのですわ。クラークスお兄様へのお届け物は、わざとらしい何かを感じます」


(あっ、笑った)


 第二王子の口元が笑ったように見えたカシスは、とても驚いていた。こんな表情の第二王子を見たのは初めてだ。


「ファファリアは、賢いな。おそらく兄上は、先方に断らせるために、俺を呼びつけるのだと思うがな」


(あっ、目が見えないから?)


 王女は、返答に困っている様子。だが、カシスが口を挟むわけにもいかない。


「ウィルラークお兄様には、望まない相手となんて、婚姻関係を結んで欲しくありませんわ」


「ふっ、俺は、優しい妹を持って幸せだ。ファファリア、食事の邪魔をしたな」


 そう言うと第二王子は、少し離れたテーブル席に座り、護衛と打ち合わせを始めた。全く声が聞こえないのは、おそらく魔法なのだろうと、カシスは思っていた。



 王女は少し考え事をしていたが、デザートが届くと、ハッとカシスの方を振り返り、また猛スピードで食べ始めた。




 ◇◇◇



「カシスっ! 急いで夕食を食べるのよ? わかった?」


「はい、かしこまりました」


 王女のほっぺに付いたソースをそっと拭き、部屋へ送り届けると、キラッキラな笑顔で催促された。


(急がなきゃね)




 使用人の食堂に移動すると、妙に静かだった。カシスは不思議に思ったが、食事を受け取り、窓際の席で食べ始める。


「やっぱり、仮面王子が?」


(ヒソヒソ話か)


 食堂が静かだったのは、噂話をしていたためらしい。鎧を身につけた使用人がいることで、いろいろな話をしている。


 カシスは、こういうコソコソとした噂話は、好きにはなれなかった。侍女達の噂話は明るい話題が多いが、執事や雑用係などの噂話は陰湿な話題が多い。



 第二王子に関する噂話は、王宮の使用人であれば、よく耳にする。どれも、あまり良い物ではない。


 だが、今夜の噂話は、少し違う様子。


 第二王子が王女に話していたことに、いろいろな脚色がされている。陰謀のような噂話も聞こえてくる。



 第一王子クラークスは、乙女ゲームでも少し登場する。とても穏やかな好青年として描かれていたが、この世界でも、第一王子の評判は良く、何人かの妻がいる。カシスは会ったことはないが、年齢は20歳前後だと噂話で聞いた記憶がある。


 一方で、第二王子ウィルラークは、乙女ゲームには登場しない。顔の上半分を銀色のハーフマスクで覆っているため、使用人は仮面王子と呼んでいる。今夜の噂話は、第二王子に対する婚姻の申込みが非常に多いというものだった。魔術に長けていることが、その主な理由に聞こえる。


 第二王子が今から行くと言っていたアスナログス国は、乙女ゲームには登場しないから、カシスは知らない。だが、噂話を聞いていると、どんな手段を使ってでも、第二王子との婚姻関係を結びたいという野望があるようだった。


(ファファリア様に賛成だわ)


 カシスは、こんなことに巻き込まれる第二王子のことを気の毒だと思っていた。


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