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50、贈り物を探しにいく

 カシスは、王都に持ってきた私服を着て、昼過ぎに外出した。今のうちに、王女への誕生日プレゼントを探そうと考えたためだ。


(何だか、女装している気分だわ)


 いつもは男装していたから、女性の服を着るのは王都に来た日以来だろうか。久しぶりのスカートに、カシスは落ち着かない様子。


 だが、女の子が好みそうな物の店には、男装していくことに抵抗があった。目指していた雑貨屋を見つけると、店のショーウィンドウに映った姿がおかしくないかを確かめる。


(えっ? ええっ!?)


 カシスが鏡扱いしていた店の中から、カシスに手を振る男性。カシスが驚いていると、彼は悪戯っ子のような笑みを浮かべて、店の外に出て来た。



「カシス、今日は女の子なんだね」


「ひゃ〜、ラークさん、どうしたんですかー」


「新しい雑貨屋だなぁと思って、ふらっと立ち寄ったんだよ。交易都市クースに本店があるらしいよ。最近、王都にも出店したんだって」


「そうなんですね。この辺りで雑貨屋さんは、ここが一番大きいなと思って来たんですよ」


 カシスは、ラフな白シャツと土色のハーフパンツ姿のラークに、少し緊張していた。いつもの彼は冒険者らしい軽装だったが、こんな休日スタイルもあるのかと、チラチラ見てしまう。


「カシスは、買い物?」


「はい。ちょっと贈り物を」


「俺に?」


「えっ!? いえ、今日は、ラークさんじゃなくて……というか、ええっ?」


 カシスがアワアワと焦っていると、ラークは楽しそうな笑みを見せた。


「冗談だよ。俺は、カシスに夕食をおごってもらうんだからな。少し時間があるからデートしようぜ」


「で、デート?」


「せっかくだから、カシスの買い物に付き合うよ。どんな贈り物を買うのかな?」


「えーっと、はい?」


 ラークは、カシスの手を取ると、自分のひじを掴ませた。まるで恋人のようだと、カシスは顔を赤くしている。


「デートなんだから、腕くらい組むでしょ。ぐるっと店内を見て回ろうぜ」


(ちょ……どういうこと!?)


 カシスは、ラークの距離感がおかしかったことを思い出した。腕を組むことは、彼なりのエスコートなのかもしれないと考え、ドキドキしながら店内を歩いて回った。


 一方でラークは、カシスが誰に贈り物をしようとしているかを察していた。だが、この店で会ったのは偶然だった。だから、つい嬉しくなって、手を振ってしまった様子。ラークは前世では大商人だったことから、新しい店を見つけると、偵察に行く癖が抜けなかった。



「あっ、この花瓶、かわいい」


 カシスは、何を贈るか悩んでいたが、白くて丸い花瓶を見つけ、スグリット王子の贈り物の花束を飾るのに役立つと、ひらめいた。


「陶器の花瓶? 割れる物を贈られることを嫌う人もいるけど、その人は大丈夫?」


「えっ! そうなんですか」


「新規転生者なら気にしないと思うけど、この世界で何度か転生している人は、気にする人が多いよ。嫌いな相手に割れ物を贈る習慣のある国もあるからね」


(全然、知らなかった)


「教えていただいてありがとうございます。割れ物はやめておきます」


「花瓶を贈りたいなら、割れない素材の物にすれば、いいんじゃないかな? あっちにあったよ」


(きゃ〜っ)


 カシスの肩を抱いて、ラークが別の陳列棚へと案内する。ガラスっぽい様々な色の食器が並んでいた。



「ガラス製ですか?」


「いや、違うよ。ここに説明がある。石製だね」


「透明な石? あっ、クリスタル?」


「これは、魔石の抜け殻を再利用してあるんだ。魔法で成形するから、少しだけ魔力が残るため、いろいろな色があるんだよ」


「そうなんですね。あっ、これ……」


 花瓶に使えそうな大きさの物を見ていると、王女の部屋にあるピンクの花瓶に似た物があった。


「それくらいの大きさは、花瓶として使いやすそうだね。どんな色がいいかな。さっきは、白い陶器の花瓶を見ていたね。ちょっと待ってて」


 カシスは、ラークが探してくれることが、とても嬉しかった。だが白色は見当たらず、店員に他にないかと尋ねてくれている。


(優しいな)


 店員が申し訳なさそうな顔をしているのが見えたカシスは、棚に並んでいる物から選ぼうと考え始める。


「カシス、この素材では白はないそうだよ」


「わざわざ聞いてくれて、ありがとうございます。じゃあ、黄色い筒状の物か、赤くて細い物にしようかな」


「花瓶にするなら、濃い色でも良いんじゃないか? 鮮やかな色だと、花の色と合わせにくいことがあると思うよ」


「ラークさんは、詳しいんですね」


「前世で商売をしていたから、多少は知ってるよ」


(商人だったのかな?)


 ラークの新たな情報を知ることができて、カシスはとても浮き立つ気分だった。


「じゃあ、濃い色なら……あっ! 黒い花瓶って、贈り物には合わないでしょうか」


「ん? どれ? あー、これか。カシス、値段を見てる?」


「値段? えーっと、ひぇ〜! 見てませんでしたー。銀貨10枚!」


(10万円?)


 カシスが慌てて手を引っ込めると、ラークは、ククッと笑った。


「黒い魔石は貴重だからね。抜け殻でも高価なんだよ。ただ、黒い魔石は、縁起が良いとされている。道を切り開くチカラがあるからだと思うよ」


(道を切り開くなら……)


 カシスの財布には、ラークと一緒に行ったペール村の報酬の銀貨5枚と、王宮から給金の前渡し分として渡された金貨1枚が入っている。他に布袋に、ゴミ拾いと扉番の報酬の銅貨があるが、そんなに多くはない。


(金貨を崩すか〜)



「半分は、俺が出すよ」


「えっ? いや、そういうわけには……」


「じゃあ、全部出す」


「増えてません?」


「あはは。じゃあ、貸しにしておくよ。夕食、何回おごってもらえるかな〜」


 そう言うと、全額をラークが支払ってしまった。



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