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46、ミッションの終了とセイラの配慮

 王命ミッションの終了の知らせが届いた。カシス達は、セイラの転移魔法で、すぐに王都の冒険者ギルドに戻った。


 借りていたリュックを冒険者ギルドに返却し、ミッション終了の手続きを終えた頃、他の冒険者達が、ポツポツと戻って来た。


「私達、ほとんどサボってたけど〜」


 セイラは、ケラケラと笑いながら、職員達と何かを話していた。


「俺は、眠いから先に帰るぜ」


 ラークは、そう言い残すと、スッと姿を消した。


(あっ、お礼を言ってないのに……)



「カシスさん、王命ミッションを受注してもらったので、Cランクへの昇格条件が揃いました。あとは、商人ギルドの仕事を規定量だけ受けてもらえば、シルバーカードに昇格です」


「えっ? 私、何も役に立ってないですが」


「セイラさんから、今、報告を受けました。十分すぎる成果です。ルペ村の街道制圧、新規転生者狩りのレッドボックスのフリをした魔導士の捕縛、ありがとうございます」


(あの人、捕まったの?)


「それは、セイラさん達の功績です」


「ええ、セイラさんの臨時パーティの功績ですね。パーティメンバーには公平に経験値を分配しますから、カシスさんは、余裕でCランクへの昇格条件を満たしました」


「受注回数10回は……」


「ご安心ください。ゴールドカード以上の特定ミッションを受けてもらったので、ブロンズカードの回数条件は受注時点でクリアされています」


 何も知らなかったカシスに対して、冒険者ギルドの職員は、丁寧に説明した。以前に、ミッションを受けたときに感じた雑な扱いではない。カシスは、職員が丁寧なのは、セイラ達がいるためだと感じた。


「わかりました。ご丁寧にありがとうございます」


 嫌味のつもりでそう言ったカシスだが、職員はそれに気づかない。プラチナカードのセイラがいることで、舞い上がっているのだと、カシスは感じていた。



「カシスさん、早くシルバーカードに上がりたいよね? 商人ギルドの仕事を、今、受注してしまうのはどう?」


 セイラがそう提案すると、職員は、慌ててファイルをめくり始める。カシスは、セイラが職員の態度が変わることを知っているのだと感じた。


「今ですか?」


「ええ、そのために、混む前に急いで戻ったのよ。良い仕事は、早い者勝ちだもの」


(仕事の内容も変わるのね)


「じゃあ、受注します。昼前から夕方までの仕事があれば嬉しいのですが」


「カシスさんは、王宮務めだもんね。カードの色が変わるランクアップ時には、特別に休暇が与えられると思うけど? 王家の使用人は、シルバーカード以上じゃないと困るはずだもの」


 セイラさんが、職員の持つファイルを覗き込んでいる。そして、職員が開いたページを見て首を横に振っている。


(すごい圧力かも)


 職員は、慌ててファイルをめくり始めた。


「あー、待って! これがいいわ。最近、私達が行くようになった店なのよ。この店なら、昼から翌朝までの営業だから、昼前から夕方までで大丈夫じゃない?」


「そ、そうですね。夜は、シルバーカード以上の限定が付いていますが、夕方までならブロンズカードでも可能です。ただ、お客さんは時間に関係なく、ブロンズカードお断り店なので、もしトラブルがあると……」


「大丈夫よ。カシスさんはわりと強いって、ラークが言っていたもの」


「それなら、カシスさん、こちらの店員補助業務にしましょうか。ギルドのすぐ近くの店です」


 職員は、ファイルから、指令書のようなものを取り出し、カシスに見せた。


(あっ! あの店かな)


 店名は、酒場ベリーズ、と書いてある。地図を見て、同じ店だと確信した。王女宛てに届いた怪しい手紙を持って行った店だ。制服の取り次ぎをしていて、服飾店リンドウの店員がいたことを思い出した。


「この店なら、一度、お使いで行ったことがあります。いい雰囲気の店ですね」


「では、酒場ベリーズで、お願いしますね。この店は、常に人手不足なので、毎日、商人ギルドから十数名がミッションで行っていますよ。えっと、明後日からで構いませんか?」


「はい、大丈夫です」


 職員が手続きをしている間、セイラは、魔導士二人と何かコソコソと話していた。カシスは、首を突っ込むことはしないが、楽しそうなセイラの表情に、少し嫌な予感がしていた。




 ◇◇◇



「カシス、早かったわねっ!」


 王宮に戻り、シャワーを浴びて執事の黒服に身を包んで執事室を出ると、護衛の兵がいて、カシスは驚いた。だがすぐに、王女が、カシスの執事室の前で待ち構えていたのだとわかる。


「あっ、ファファリア様、先程、ミッションから戻りました。お預かりしていた布袋は……」


「あれは、カシスにあげたから返さなくていいわ。使わなかったの?」


「中身は見ましたが、使わなくてすみました。お手紙、とても嬉しかったです。心細かったから、たくさんの元気をもらいました」


 カシスが手紙を読んだことを知ると、王女は、少し照れたように目を逸らした。王女は、カシスに怪我がないか、また、手紙を読んだかが気になり、カシスが戻ったことを知ってすぐに、カシスの執事室の前に来ていたのだった。



「そう、怪我はない? ちゃんと食事はできたの?」


「はい、大丈夫です。アクシデントはありましたが、ラークさんがたくさんの非常食を持っていたので……」


 カシスが、ラークの名を出すと、王女の目は輝いた。


「その話は、今夜、聞くわっ。夕食の付き添いは、ロザリーがするから、カシスは、夜まで執事室で休みなさい」


「はい。では、執事長に戻ったことを知らせてから、休ませてもらいます」


「ええ、そうしなさいっ」


 くるりと背を向けると、王女は、トコトコと渡り廊下の方へと歩いていく。カシスは、その小さな後ろ姿に、深々と頭を下げた。



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