表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

30/82

30、数合わせ

「カシス? 元気ないわね」


「いえ、大丈夫です、ファファリア様。私は一旦失礼しますね」


 王宮に戻ってカシスは、執事の黒服に着替え、王女の夕食の付き添いをした。その間も、ずっと冒険者ギルドでのことが、頭から離れなかった。



 セイラが紅茶のおかわりを飲んでいたとき、冒険者ギルドの地下にある食堂には、数人の職員が降りてきた。


 そして、カシスがオロオロしている間に、ミッションの手続きが完了した。セイラの仲間らしき魔導士風の男性二人も加わり、ラークを含めた5人で、臨時パーティを組むことになった。


 だが、いつ出発するかは決まっていない。王命ミッションが出されたら、すぐに冒険者ギルドの前に集まることを決められただけだった。


 カシスは、不安だった。


 皆は楽しそうな表情をしていたが、新人冒険者のカシスには経験のないこと。どのような準備が必要かもわからない。


 セイラがラークの恋人かもしれないと考えたカシスは、いろいろと複雑な感情も湧き上がっていた。



 ◇◇◇



 カシスが夕食を食べに使用人の食堂へ行くと、いつもとは様子が違っていた。


(なぜ、こんなに混んでるの?)


 王女の夕食は、時間が早い。そのため、王女の夕食後に食事休憩をするカシスは、いつもガラガラな食堂で、夕食を食べていた。



「カシスさんは、今、冒険者ランクを上げているか?」


 カシスが座った向かいの席で食事をしていた、渡り廊下の警備兵が、カシスに話しかけた。


「はい、まだDランクなので、早く上げようと……」


「Dランクか。じゃあ、難しいな。俺は動けないしなー。足りるのかな」


「食堂が混んでいることと、何か関係があるんですか?」


「明日の朝には、王命ミッションが発令されるみたいだ」


(あっ! 聞けるチャンスだわ)


「冒険者ギルドでもそんな話を聞きましたが、王命ミッションが出ると、どうなるのですか?」


「Dランクなら知らないか。王命ミッションは、滅多に発令されないからな。一定ランク以上の冒険者は、参加する義務があるんだよ。王宮からも、警備兵や近衛騎士以外の使用人には、参加義務がある」


「警備兵や近衛騎士以外の使用人って、私もですか?」


「あぁ、戦える者だけだがな。王命ミッションのときは、王宮からも人員を出す必要がある。今はタイミングが悪くて、第一王子が他国に行っているから、有能な若い使用人が少ないんだよ」


「えっと、私、冒険者ギルドで、そのミッションを受けることになってます。断って、王宮の使用人として参加する方が良いでしょうか」


(あれ?)


 カシスがそう尋ねると、彼はポカンと口を開けていた。


「カシスさんは、Dランクなんだよな? 冒険者で王命ミッションを受けるのは、ゴールドカード以上だよ?」


「あっ、はい。今日知り合った人に巻き込まれたというか、私も含めて5人で、受注手続きが終わっています」


「ちょ、ちょっと待って。いや、飯を食っててくれ。確認してくる」


 そう言うと、彼は席を立ち、近衛騎士が集まっているテーブルにすっ飛んで行った。




 カシスが夕食を食べ終わった頃、近衛騎士を連れて、警備兵が戻ってきた。


「キミの身分証を見せてくれるか?」


「あ、はい」


 カシスが赤茶色のカードを渡すと、何かの道具に乗せられた。


「ふむ、カシスか。確かに、王命ミッションへの参加手続きが完了している。リーダーは、セイラとなっているが、間違いないか?」


「はい、セイラさんがリーダーかは知らなかったですが、彼女に巻き込まれた形です」


「まぁ、数合わせかもしれんな。王命ミッションは、10人以上の臨時パーティを推奨しているが、最低人数は5人だ。その様子だと、セイラのことも知らないみたいだな」


「今日、会ったばかりなので、ほとんど知らないです。あっ、プラチナカードって言われてましたが」


「セイラは、このフルールニア王国で、最も有能な魔導士だ。足手まといにならないようにな。カシスが王宮の使用人であることを登録しても構わないか?」


「えっ? 私には判断できません。セイラさん達のご迷惑になるなら、困ります」


「冒険者には知らせない情報だ。王宮から何名が参加するかを報告する義務があるのだ。冒険者パーティ参加という形で、登録させてもらうぞ」


(いいのかな?)


 カシスが返事に迷っていると、警備兵が口を開く。


「カシスさん、これは、死亡時のための情報でもあるんですよ。王宮の使用人が参加した場合は、消息不明のままにはなりません。国王は必ず捜索してくれますから」


「なるほど……あっ」


 カシスに赤茶色のカードを返すと、近衛騎士は、他へと移動していった。


(登録されたみたい)



「カシスさん、助かりますよ。数が足りなければ、俺達が行かなきゃいけない可能性もあったので」


「王宮の警備兵が減るのはマズいですよね」


「戦力外の警備兵もいますけどね。でも、有力冒険者の臨時パーティに使用人が参加することで、俺達まで行かされる可能性はなくなりました。聞いておいて良かった。まぁ、単なる数合わせですけどね〜」


(また、数合わせ、か)




 ◇◇◇



「ファファリア様、今夜は、チーズの焼き菓子をお持ちしました」


 王女の部屋へ、お菓子を持っていくと、スグリット王子も居るのに、いつものような賑やかさがなかった。


 カシスは、王女の部屋の扉を閉めようとして、ギクッと、表情を引きつらせる。


(ひぇっ!)


「カシス、ちょうどお兄様が、扉を開けようとしたとこだったのよ。ふふっ、お兄様もお菓子を召し上がりますぅ?」


「いや、私には、準備があるからな」


 第二王子ウィルラークは、そう告げると、カシスのことは無視するかのように、スッと出て行った。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ