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102/111

102、季節は進み

 秋の感謝祭が終わり、その後の交流会という名の3日間の後夜祭が終わると、また学校が始まった。


 カシスの体調も、学校が始まる頃には、すっかり良くなっていたが、王女は、またしばらくサボると言い出した。



「ファファリア様、私はもう大丈夫ですよ?」


「ダメよっ。セイラを呼びつけたときに、カシスが瀕死の状態だからって、ブルーボックスの人が話してたじゃない。瀕死の状態から、わずか4〜5日後に学校に復帰するなんて、おかしいでしょ」


「あぁ、隣国の人が代理をされてましたね」


「でしょ? それに、私は3年生の制服の色は、あまり好きじゃないの。2年生は長く居座るわよ」


(あー、そうか)


 王女が急いで試験を受けていたのは、終焉で学校に通えなくなる前に卒業したかったからだと気づいたカシスは、急ぐ必要がなくなったのだと理解した。


「ファファリア様、ですがセイラさんの授業は受けなくていいのですか? 確か、1年間の非常勤講師だと……」


「ハッ! 忘れていたわ! むむ……悩ましいわね。ちょっと考えるわっ」


 腕を組み、眉間にシワを寄せる王女も、カシスの目には、とても可愛らしい癒し系に映っていた。




 ◇◆◇◆◇



「カシスさん、回復おめでとう!」


「ありがとうございます」


 それから、ひと月ほど経った頃、王宮近くの鍋屋の個室で、カシスの回復祝いという名の、終焉の先へ進めるお祝いが、セイラ主導で行われた。


 集まったメンバーには、カシスがよく知らないブルーボックスのメンバーも居た。スグリット王子も、冒険者ラークと名乗って参加している。もちろん王女は、ラークちゃんとして、男装していた。



「あら? セイラ、ラークさんは?」


「ん? ラークちゃんと、冒険者のラークくんは、ラークと知り合いかしら? って、ラークだらけね」


(確かに)


「私は、カシスの学校見学のときに、護衛で来てくれたから、知っているわ。おに……じゃなくて、冒険者のラークくんは、会ったことはないかも」


「俺も、知り合いにはラークは多いから、会ってるかもしれないけどな」


 スグリット王子がそう答えると、セイラは、ラークが来ない理由に気づいた。隠し事がバレるためだ。


 ラークは複数の身分証を使い分けている。弟にはプラチナカードのラークとして、交易都市クースにスグリット王子が出掛けたときに、何度も会っている。一方で、妹にはゴールドカードのラークとして会っていた。


 セイラが、この場にスグリット王子が来ることを伝えると、ラークは、適当な理由でごまかしておいてくれと言って、欠席することを選択したのだった。



「ラークさんは、来ないのかしら? カシスに、ちゃんと言いなさいって、説教しようと思っていたのに。危機予知能力でもあるの?」


 王女は、かわいい膨れっ面をしている。


「ラークは、来れたら来るって言ってたわよ。ちょっと忙しそうにしてるわね。初冬の休日って、冒険者は忙しい時期だからかな」


「冬の準備を始めるための休日よね? 王都では、特に何の準備も必要ないけど、寒い国だと、冒険者のミッションは増えそうね」


 王女がそう話すと、スグリット王子も、口を開く。


「そのラークは、Aランク冒険者なんだよな? Sランク以上だとそういう依頼は受けないから、確かにAランク冒険者は、忙しい時期だな」


 セイラの誘導に、仲良し兄妹は簡単にハマっていた。


 一方でカシスは、集まった人に一人ずつお礼を言って回っている。そんな彼女の姿に、セイラは目を細めていた。




 ◇◆◇◆◇



 それから、あっという間に季節が進んた。


 冬は寒いため、王女は外出を控えていた。国王が、身体の弱い王女を心配したこともあるが、禁じられてはいない。


 初冬の休日の少し前に、学校に復帰したとき、カシスの友達だというイザベルが、やたらと王女に話しかけてきたことが、ウザかったのかもしれない。


 王女やカシスの新たな映像を盗撮できなくなったことで、様々な情報記事は、最後の石を見つけた新規転生者捜しで、多くのゴシップ記事を量産している。



 カシスは、学校をサボっている間は、たまに商人ギルドのミッションを受け、酒場ベリーズの昼間の仕事に行っていた。ゴールドカードにランクアップするために必要となる商人ギルドの経験値を、事前に稼いでおくといいと、酒場ベリーズの店長から言われたためだ。


 そして、カシスが酒場ベリーズの仕事をしているときは、いつもラークが昼食を食べに来ていた。


 カシスは、ラークとの連絡手段がないのに、彼が来ることを不思議に思っていた。ラークには大商人サンサンの頃の人脈があるのかと予想していた様子。


 しかし、ラークがカシスの予定を知るのは簡単だった。別に監視しているわけではないが、カシスは王女に事前に予定を話しているため、自然と彼の耳に入ってくる。




 ◇◇◇



 春になっても、すっかりサボり癖がついた王女は、毎日、マイペースに穏やかに過ごしていた。


「ファファリア様、そろそろ復帰する方が良くないですか?」


「ん〜? まだ寒いじゃない。来月からでいいわよ。それに、こないだ大勢の使用人を雇ったでしょ? 私の私室に入る者がいたら、嫌だもの」


(なるほど)


「かしこまりました。では、また夕食のときに」


「ええ、わかったわ。あっ、出掛けるなら、かわいい服を着て行きなさいよ?」


(かわいい服?)


 カシスが首を傾げると、王女は慌てて自分の口を押さえている。何かを知っていて、カシスには隠しているのだろう。




「カシス・ガッシュさん、この後、第二王子が極秘裏にお会いしたいとのことです。お時間は大丈夫ですね?」


「えっ? 仮面王子がなぜ……」


 朝の仕事が終わり、カシスが服を着替えようと移動すると、執事長が、彼女専用の執事室の前で待っていた。



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