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開会式が終わった後にグループ分けが発表され、参加者はスタッフさんに誘導されて移動をしていく。
この会場でも予選を行うので一部は居残りだ。
……移動していくのを見た限りでは、おれの知っている人は全員移動しちゃったっぽい。
見たかったぁ! ヴァルムントくんやヘルトくんの戦ってるところ見たかったよぉ!
かっこよーく華麗に戦う姿とか見たいじゃん!
綺麗に攻撃を避けて反撃する様とかさぁ……!!
寂しいな~と思いながらも、どういう人が参加しているのか見るのは楽しいのでいいとする。
どういう人が本戦に勝ち上がっていくのか知りたいじゃん!
それにあんまし覚えてないとはいえ、まだおれが出会ってないゲームのキャラを見ることができるかもしれないし……。
いるって分かっているのに、出会えないんだよねぇ。
おれがあんまり城から出ないからってのはある。
でも警備のこととか考えたら、気軽に城の外に出たいだなんて言えない。
そういう意味でも楽しみであったんだよな〜。
会場自体は広く、区切れば試合数は沢山こなすことができる。
なのにそれをしなかったのは、監督する人数の関係だ。
自分が見てる試合以外の場所から、ポーンって武器飛んできたりしても対応なかなかしにくいじゃん。
だから日数が多めになったって訳。
ま、祭りは長い方が楽しめるって言うし……。
その分運営の人が大変なんだけどな!!
おれやお兄様も見ているだけとはいえ、ここにずっといなくちゃいけない。
じっと見ていることオンリーは、それはそれで辛いのだ。
……勿論口には出さないよ!
準備が整い、早速第一回目の試合が始まっていく。
真ん中で試合が行われ、待機者はそれぞれ好きな場所で寛いだりしている。
脇で試合を見たり、時間になるまで別の場所に行ったりと様々だ。
「どうだ、カテリーネ? コイツは良さそうだな〜ってのはいるか?」
「お兄様、気が早いです。まだ始まったばかりですよ?」
「あー、いや、事前に気になるやつがいないかなってさ!」
戦ってない人を判断とかできないんですけど!
お兄様、浮かれすぎよ……。
るんるんしながら手摺りに腕を乗せて会場を眺めるお兄様に倣って、おれも寄って見てみる。
今戦っている人達は、兵士さんと傭兵っぽい人だ。
互いに剣を交わしつつ、兵士さんが優勢で戦いは進んでいっている。
とはいえ……、うーん。特に『これ』って言えるものはない。
単純に戦闘に関して詳しくないからだろうなぁ。
「お兄様には今戦われている方々はどう見えますか?」
「ん? そうだなぁ。ボーガード……、兵士の方な。アイツの右からする攻撃は重いんだが、左からの攻撃は軽いのが問題だな。対して相手はそれを理解しているからか、左から攻撃させようとしている。隙を作ろうとしているんだ」
はえー、全然分からなかった……。
お兄様に言われたことを踏まえて見ると、確かにボーガードさんに左攻撃を誘発させようとしている。
ボーガードさんもなされるがままに左攻撃をするしかなくなっていた。
「だがな、ボーガードも自身の左側への攻撃が甘いことは理解している。……来るぞ」
お兄様の言葉に合わせて注視をしていたのに、一瞬で相手の剣が吹き飛ばされていってしまった。
そして剣に気を取られた傭兵の首に、ボーガードさんの剣が寸止めで突きつけられる。
審判によって勝負ありと判断され、ボーガードさんの勝利が確定した。
「何が起こったのか分かりませんでした……」
「あれはな、左に振ったと同時に剣をくるっとさせてから、右に振って剣を吹き飛ばしたんだ。右に攻撃できないと思わせていたのと、死角でやってたから分からないのも当然だ」
……その説明受けても分からん!
お兄様の説明が下手なのか、おれの理解力が乏しいのかも分からん……。
笑って誤魔化しつつ、次の試合が始まるまで他の人へと目を向けていく。
沢山武器を持っていたりだとか、やたらにカラフルな服を着ていたりだとか、歴戦の猛者って雰囲気の人がいたりだとかで見るのは楽しい。
すげーゲームキャラっぽいんだけど、違うんだよなぁ。
そうやってあちらこちらを見ていたら、なんだかすごく『見られている』感じがしてきた。
おれは皇女だしお兄様もいるし、見られてるってのは当たり前だ。
なのに妙な感じがしてキョロキョロと辺りを見たんだけれども、その視線の元が一向に見つからない。
やがてなくなった視線に首を傾げながらも、そろそろ第二試合が始まるとのことで、顔を中央へと向けていく。
「ゴコールおやぶーん! 頑張ってくださーい!!」
観客席から何人かが応援の声を飛ばしていて、いかにも山賊って感じの人間が腕まくりしながら前に出てくる。
どうやら今回出る選手みたいだ。斧でっか。
そして相手となる人は緑色のマントを着用した剣士で、濃紺の髪の毛にスラッとした体格をしていた。
……ん? んん?
すご〜く引っかかるものがあって首を傾げている内に、審判が試合の始まりを告げていく。
「始めっ!」
ゴコールはニタニタしながら、勢いよく相手に斧を振りかぶっていく。
あの勢いだと吹き飛ばされるんじゃ……、と思っていたのに、相対する剣士は細い剣で簡単に防いでいた。
多分あの剣、レイピアだよな?
ゴコールは止められたことも構わず再び大きく振りかぶり、剣士を切り裂いてしまうんじゃないかと思うほどの勢いで向かっていく。
おれが顔を顰めた瞬間、剣士は一気に体を落としてゴコールの足に蹴りを入れたのである。
「おわっ」
一気に体勢を崩したゴコールは目標を見失ったことも相まって斧を遠くへと飛ばしてしまい、地面に伏した状態となる。
素早く起きあがろうとしたものの、その前に剣士がゴコールへと剣を突きつけていた。
「勝負あり!」
「お、おやぶーーーん!!」
体術ありなんだ? とかそういう疑問があったりしたけど、それよりもずーっと記憶に引っかかってしょうがないこの違和感をどうにかしたく、おれはずっと剣士のことを見つめていた。
ふうと息をついた剣士は、軽く剣を振ってから鞘に納めた後に何故かおれ達の方に顔を向けてくる。
「あ……」
「カテリーネ? どうかしたか?」
「い、いえ! なんでもございません」
な、あ、あ、あ! あーーーーー!!
格好違うし年齢も微妙に違うから分かんなかった!!
分かんなかったけど顔見たら分かったわ!!
2主人公じゃんコイツーーーー!!!




