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その力の源は

帝国に帰る最中で、護衛の1人であるアラス視点の話



 その強さは、一体どこから来るのだろうか。



 ◆



 ゲンブルク王国での式典が終了し、ようやく俺ら兵士の護衛仕事は折り返しを迎えている。

 王国内の仕事は辿り着くまでと比べるとすげえ楽だった。

 だってよー。野宿しなくていいし、食料もいい物を食えるんだわ。

 きちんとしたベッドだってある。四六時中警戒することもない。

 だから正直な話としては、もう少し滞在したかった。 

 ま、仕事だから仕方ねえんだけどよ。


 現在はゲンブルク国を抜け、自国領のそこそこ大きな街まで来ていた。

 今日はさる貴族の屋敷に宿泊。

 屋敷内で荷物の確認が終わってからは一日中休みだということで、カテリーネ様を護衛してるヤツ以外は休憩になったんだ。

 最初はみんな、街で適当にぶらぶらしよーぜってなっていた。

 息抜きしねえと気持ちが沈んじまうからよ。

 金を持ったかどうか所持品を見ていると、他のヤツから呼びかけられる。


「アラスー! 行くぞ」

「おお、今行くー」


 玄関まで歩きつつどこに行くかとか相談していると、別の場所で荷物を確認していたラハイアー達も屋敷から出ようとしているのとかち合った。


「よぉ、ラハイアー。お前らも出かけんのか?」

「はいー、そうなんですよー。アラスさん達もですか?」

「おー。なんなら一緒に行くか?」

「勿論ですー、お誘い嬉しいですー! ねえみんな」

「だな」


 そうして俺達はラハイアー達も交えて街へと出かけて行った。


 ……最初はなぁ、解放軍のやつらにはいい気がしなかったんだよなぁ。

 だってよ、俺らの生活を脅かそうとしてる連中だぜ?

 そら先帝のせいで苦しんでた部分はあったさ。

 けど俺らはディートリッヒ様やヴァルムント様がなんとかしてくれるって信じてたんだ。

 なのに未遂とはいえ討伐だのなんだのに行きやがったし、ディートリッヒ様を言いくるめてお上に入ってきやがったしよ。

 んで帝都に住んでた連中や他の街のヤツらから仕事を奪っていこうとするんだぜ? 許せる訳ないだろ。


 でもなんつーか、こうやって仕事を一緒にしていくとさ、ラハイアーを筆頭に悪いやつじゃねえってのが分かってきてよ。

 だからそんな敵視しなくてもいいんじゃねーかって、仲良くするようになったんだわ。

 帰ったらな〜、もーちょい解放軍のやつらにも優しくする方がいいよなぁ……。


 全員で街に繰り出したはいいものの、結局は各々好きな場所に散っていった。

 俺は飲みに行こうと思ってたんだがなんとなく気分じゃなくなって、1人で旅のツマミになりそうなものを買いに行く。

 ちゃんと食べ物は配られてはいるんだが、それはそれだ。

 色々な場所を巡って適当に好みの保存食を購入し、屋敷へと戻っていく。

 ちいとだけ買ったのをつまみつつ、少しだけ寝るかと思っていた矢先の話だ。

 剣と剣が打ち合っている音が訓練場となってる場所の方から聞こえてきて、気になった俺は足をそちらへと向けて歩き出した。



「次ッ!」

「失礼します!」


 なーんで休みなのに、ヴァルムント様達は訓練をしてんだ……。

 さっきまでヴァルムント様は違うヤツと打ち合いをしていらしたっぽいのに、今度は休みらしいゲオフと打ち合いを始めている。

 俺らと一緒に出かけた何人かも、一緒に見学したり参加したりしていた。

 俺も釣られて見学しているやつのところに交じっていく。


「お前ら、休みなのになんでここに来てんだ?」

「そういうアラスだってそうじゃねーか」

「そりゃそうだ」


 頭をかきながら打ち合いをしているヴァルムント様達を見る。

 相手しているゲオフは、ヴァルムント様には及ばないものの相当な実力者だ。

 魔物を退けたりした時にその実力を思い知った。

 なおゲオフ曰く、「自分は戦いに狂った者だった」らしい。

 それを圧倒的武力でいなし、ゲオフを落ち着かせたのがヴァルムント様なんだと誇らしげにゲオフが語っていた。

 だからゲオフが一生懸命に喰らいついても、ヴァルムント様に敵わないのは当然ではあるんだが……。


「なぁ。……ヴァルムント様、強すぎじゃねーか?」

「やっぱアラスもそう思うよな?」


 自国の将軍に上り詰めた人間だ。強いのは当たり前ではあんだがな。

 なんつーか、逸脱してるような気がしてんだよ。

 ゲオフも強いから多少なりとも一矢報いることはできるはずだ。

 なのに、その隙がなさすぎるんだよなぁ。

 ヴァルムント様とゲオフはそれなりに付き合いが長いから、互いの癖とか知ってるだろうけどさ。

 にしても……。

 俺が考え込んでいると、カテリーネ様がカールと侍女を連れて様子を見に来ていた。

 戦っていた2人は戦闘をやめ、俺らも含めて全員カテリーネ様に向かって礼をする。


「どうぞ、そのまま続けて下さい」


 目を細くして微笑まれたカテリーネ様の顔は神秘的で美しく、毎度毎度心臓に悪い。

 しかもヴァルムント様がいるとなると色が入るもんだから余計にってやつだ。

 ヴァルムント様はカテリーネ様と二言三言会話を交わし、互いに微笑みあってから再び戦いを始めていく。

 そうして花開く笑顔になったカテリーネ様と更に力をみなぎらせたヴァルムント様を見つつ、隣のヤツがこう言ってきた。


「愛の力ってやつで強くなったんじゃねーの?」

「愛の力ってやつかぁ……」


 俺には無縁すぎて眩しすぎるんだけどな。

 でっかいため息をついて、首を横に振った。

 ま、ヴァルムント様が幸せそうならいいんだわ。


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