ソレは憑いている
感想・リアクション嬉しい…嬉しい…。
本物カテリーネの話です。
友人視点。
他番外編もいつか書くかと思います。
オレは、あいつのことを少し怖い存在だと思っている。
「誠、途中まで一緒に帰ろうか」
「……おー」
放課後。
高校に入学してから間もないオレはまだ部活動に入っておらず、そのまま帰宅をしている。
一緒に帰っているヤツは、中学ん時にたまたま席が前後だったということで仲良くなった。
黒川竜也。
オレの友人だ。
容姿は普通。
だからイケメンって顔じゃないんだけど、雰囲気がすごいというか、呑まれるっていうか……。
『雰囲気イケメン』って言葉じゃくくれないものがあって、……ミステリアスってやつ?
とにかく、そういうのがすごい女子にウケてる。
頭いいし運動神経も抜群だし、美術や家庭科や音楽だってなんだってできる男ってのもあるだろうけどさ。
イケメンじゃないのが、かえって効いてるっぽい……?
イケメンだと高嶺の華~みたいな感じあるけど、手が届きそう感って言えばいいのか?
……顔が普通だからって届くとは思えねーけど。
男子だって竜也の凄さに圧倒されていて、簡単に逆らったりしない。
なんつーか、圧倒的っていうか、支配者然としてるっていうか。
争いごとが起こりそうになっても、竜也の一声で静まったりするし。
先生達だって竜也に頼りっきりだ。
かといって本人は別に支配しようだとかそんなことは思ってないらしく、もう少し普通に接してほしいって言ってる。
いや、無理だろ。
「竜也、お前今日は何の塾だっけ?」
「ピアノ。その後に学習塾だよ」
「ホントよくやるよな~」
中学の頃から、竜也は時間という時間を学習に費やしている。
ふつーの男子だったらそこまでやらんし、やりたがらないだろってことまでとにかく探求していた。
とはいえ多少は加減してるみたいで、オレや他のヤツと遊ぶ時間がないってことはない。
まー、大体竜也は保護者的立ち位置なんだけどさ。
遊びに口出しはしないんだけど、やべーラインになったら止めてくれる存在だ。
「でさ、竜也はやりたいこと見つかったのか?」
「まだだね。まだ、答えは見つけていない。でも楽しいよ、色々な事を知るのって」
よくわかんねーけど、竜也は『なりたいと思ったものになる為』に様々な物事への勉強を欠かしていない。
なんか、本人いわく『夢』ってものがないそうだ。
その夢がいつかできた時の為に、いつでもその道にいけるよう、どんなことにも手を出すことに決めているそうな。
よくわかんね~。オレも今特にこれになりたいとかはねーけど、そこまでするもんか?
知るのが楽しいって感覚は分からないでもないけど、オレが今を楽しみたいから色んな所に遊びに行くし、ゲームだってしてえ。
まだ高校1年なんだし、3年になってから考えればいいんじゃねえの……?
なんだかなーって思いながら竜也を見た瞬間だった。
竜也の隣に、黒くて大きな、赤い眼をした『何か』が見えた気がした。
ゾワッとした感覚が体中を駆け巡る。
見ちゃいけないものを見た、心臓が一瞬で凍ったかと思うほど、ヤバい感覚だった。
悪寒に体を震わせると、竜也が首を傾げてオレを見てくる。
「どうかした?」
「……い、いや、ん~……。……わ、笑うなよ? お前の後ろになんか黒いのが見えた気がしてさ……」
俺でも変なこと言ったな~って苦笑いしながら言うと、竜也は驚いた顔をしてから満面の笑みを浮かべた。
「前々から思ってたけれど、誠って名前の通りだね」
「なにがだよ。お前いきなりこえーわ」
「見神誠。……うん、素晴らしい名前だと俺は思うよ」
やけにニコニコとしていて気持ち悪い。
なんかたまーにこういうトコあるんだよな、コイツ。
うへえとしながら歩いていると、分かれ道で竜也が立ち止まった。
「じゃあ、俺は塾があるからここで」
「おう、また明日な」
「誠も気を付けて帰ってね」
竜也は軽く微笑んで手を振ってくる。
怖いには怖いんだけど、悪いヤツではないんだよなぁ……。
基本静かだから過ごしやすいし、大人っぽいけどさ、将来のことについて悩みまくってるし。
オレは「おー」と片手を上げて返事をし、家への帰り道を歩いていくのだった。
「……黒龍様、やはり貴方は神なのですね。わたくしだけの、神様……」




