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26話


 野次の飛び交う非常にあほらしい乱闘が始まってから数分後、俺は疲れで立っていられなくなった。ルチェッテとジネーヴラと、近寄ってきたラドじいさんに抱えられながら介抱される結果となる。

 そうしてディートリッヒがくたくたになってしまった俺に気が付き、すぐに槍を下げたことでようやく乱闘が終了した。

 ヴァルムントはディートリッヒには攻撃を避けるか受け流すかの2択だけを徹底して行っており、ヘルトくんには容赦なく反撃をしていたのだけれど、途中から2人が連携しだして苦心していたみたいだ。

 お可哀そうに……。


 ディートリッヒは文字通りビューンと飛んできて俺の心配をし始めた。

 やっと攻防が終わってヴァルムントはホッとしつつも、遠くからヘルトくんと同じように俺の様子を窺ってきている。

 大分変なことになったけれど、無事に終わってよかった……ってことでいいんだよね!?


「……か、カテリーネ。大丈夫か……?」

「だい、じょうぶ……です。おにい、さま」


 頑張って笑顔を作ったけど、本当は結構きっつい。

 ああ~顔が火照ってきたし頭もガンガンし始めた……。

 うーん、これは発熱してきてないか? 病状現れるの早すぎない?

 あからさまに体調不良が顔に出ていたのか、ディートリッヒが慌てて周囲に指示を出し始めた。


「大丈夫じゃないだろう! ひとまず俺が使ってる寝床が一番マシだろうから、そこを──」


 沢山喋ってるんだけど、何を言ってても頭の中に入ってこなくなってきた。

 目を開けているのが結構きつくなってきたし、俺もう寝ていいか?

 なんかお兄ちゃまが騒いでるけど許してくれ~。

 おやすみ〜……。



 ◆



 案の定、俺が眠りから覚めた時には身体中が熱くて汗っぽくなっていた。

 完全に熱出てます、はい。

 無理が祟ってますねえ、お客様〜? ……はぁ。

 緊張の糸が切れたんだから「ですよね〜」ってやつだ。

 体調がそこそこ安定するまで、すぐ近くにある帝国軍のディートリッヒが使ってたテントで休んでから、帝都にガッタンゴットン運ばれることになった。

 あ、俺の為にラドじいさんとルチェッテにジネーヴラ、護衛にゲオフさんカールさんが残ってくれて、ゴタゴタの処理やらなんやらが大量にあるからと、それ以外の大半の人間は先に帝都に行っている。

 今後のこととか国についてとか、様々なことを話し合いしたり会議したり指示したりと、やることが山ほどあるからだ。

 ここの片付けとか警備とかやらなきゃいけないことがあるから、兵士もそこそこ残ってはいるんだけどね。

 ラドじいさんが言うにはディートリッヒはかなり未練がましそうにしていたそうだけど、全然記憶にないから意識が朦朧としてる時にあったんだな……。


 申し訳ないけど女子2人にお世話をしてもらっていて、そこそこ体調が回復してきたから数日後帝都に行こうか〜なんて話をしていた時のことだ。

 ジネーヴラがなんでか目をキョロキョロとさせながら、俺に尋ねてきた。


「ど、どっちから……、こっ、告白してたんですか?」


 ……ん? 何の話だ?

 2人は目を輝かせながら、ドキドキワクワクとした様子で俺を見ている。

 心当たりがなさすぎるんだけど、君達は一体何を期待しているんだ……。

 俺がわずかに首を傾げると、ルチェッテが腕をブンブン縦に振りながら声をあげた。


「将軍と想い合ってたんですよね!? でもお役目があって諦めて、でもやっぱり想いを告げたくって、あ、あんなに情熱的な告白をカテリーネさんから……!!」


 なななななななななんでそんな話になってるんだ!?

 いやいやいやいや違うからな!? そんなんじゃないからな!?

 あれは告白とかそんな生ぬるいものじゃなくて、ただの養えという紐宣言だからな!?

 2人共キャーキャーと興奮しながら俺の回答を待っている。

 ひ、否定しないと……。つーかヴァルムントとの変な誤解増えまくってないか!?

 確かに誤解は俺からさせたけど! 俺は金銭とかの責任をとってほしかっただけなのにぃ。


「違うのです。わたくしは巫女としての役割を見失ってしまったが故に、どう生きれば良いのか分からなくなってしまったのです。ですから、黒龍様を倒されたヴァルムント様に責任をとっていただこうと……」

「でっ、でも、そ、そこで、将軍を頼るってことはそういうことなんじゃ……!」

「将軍だって、ここを去る時にカテリーネさんの様子を見に来てたんですよ!?」


 ジネーヴラがルチェッテの服を強く掴みながら主張し、ルチェッテはグッと拳を握りながら主張してくる。

 どうしてそうなる!? やった本人に責任をとってもらおうとしてるだけじゃん!!

 そ、そりゃヴァルムントだって、一応皇子の妹だから様子見たりはするんじゃねーの!?

 うお〜ん、女子分かんねえ……!!

 俺も今は女子だけど、女子だけどさ~~~……。

 村では巫女! ってやってたし、だいたい同じくらいの女の子はいなかったし、村の女性からは孫みたいな扱いしかされてなかったから全然分からん。


 その後も頑張って誤解を解こうとしたけど、いいようにとられて解決しないまま話は終わった。

 俺自身も終わった……。



 大量のクッションと共に馬車に乗せられて帝都に辿り着き、俺は母親が使っていたらしい宮を使うことになった。

 いいんか……? 俺、全然皇女? の自覚も何もないんだが。


 ちなみに俺のことを見てくれる医者が、解放軍本拠地にいるはずのブラッツ先生になっていた。

 他にも色々理由はあるが、一番長い間俺を担当して容態を理解しているのと、俺が安心するだろうということが一番大きかったらしい。

 俺のせいで来るだなんて申し訳ねえ……。と思っていたら勝手に抜け出し、体が弱いのに無理をしたことについて軽く怒られた。

 自分が一番体弱々なことは分かってますってえ! びええ。

 本当はもっと長くお説教したかったそうだが、俺の体調に影響が出ないようにと短く抑えたのだとも言われてしまった。

 ご、ごめんなさい、俺が悪かったです……。


 でも、俺が行ったからこそ人死が出なかったのだから、貴方には医者としても一個人としても感謝をしているとも言われた。

 俺は単純に、俺がやるべきことをしただけだからなあ。

 結果的にな話ではあるんだけど、沢山人が死ぬようなことにならなくて良かったとは思う。普通に気分悪いし。


 なお、俺の代わりにコッテリ怒られたのはラドじいさんとゲオフさんカールさんだった。

 ゲオフさんとカールさんが引き続き護衛をしてくれていて、一緒にいる時にカールさんが教えてくれたのだ。

 ラドじいさんはよく俺のところに来てくれるけど、特に何にも言ってなかったんだけどな。

 俺のせいなのにすまん……。


 そしてここ最近、一番俺の頭を悩ませていることがある。

 ランダムな時間だけれど、絶対一日一回俺のところに訪れてくる人物のことだ。


「カテリーネ、今大丈夫か? ……お兄ちゃん入るぞ?」


 ニッコニコの笑顔で、ディートリッヒが俺の部屋に入ってきた。


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