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21話


 結構強気な道程で馬車はガタガタゴトゴトしながら先を進んでおり、交代して馬車の中に入ってきたゲオフさんから間もなく到着するだろうと言われた。


 到着するまでの間、状況を確認しよう。


 俺の勝利条件は……、勝利条件って言っていいのか?

 まあいいや、とにかくディートリッヒを生かすことが俺にとっての勝利だ。


 ただ面倒なことにディートリッヒも、その前にヘルトくん達が戦うことになっているヴァルムントもすこぶる頑固だ。

 男の意地ってやつと、帝国の者としての責務ってやつがあるから降参もしない。

 まー分かるよ? たとえ不利な状況だったとしても、上に立つ者としての責任を持ってくれるのは正しいとは思う。

 民の不満を解消する先ってどうしても必要なものだし?

 実際それで勢いが収まったっちゃあ収まったんだけどさ……。

 でもな、ゲーム続編であるトラシク2を考えると正しいとはいえなかったんだよな。

 結果論にはなるんだろうし、そもそも続編作るって想定してなかったからディートリッヒ達は死んだのかもしれないけど。


 帝国という枠組みが崩壊してから1~2年後が舞台になっているのがトライベン シックザール2だ。

 様々な暴挙が横行していたとはいえ、国として管理する役目を担っていたことは間違いない。

 それが一気になくなり、元解放軍の指示に従わないところもでてきたりして、団結が瓦解していったのだ。

 共通の敵がなくなったから当然仲間意識もなくなっていく。


 元々帝都にあった組織は皇帝や皇子がいないならばと好き勝手するようになったし、それぞれの町や村は己の利益だけを求めるようになったり、隣国に襲われるようになったり取引がなしになったりで、折角帝国を倒したのに!? な~んて状況になった。

 帝国っていう後ろ盾はなんだかんだ強かったのよ〜。

 とにかく地獄やん……という状況をなんとかする為に、2主人公がまとめ上げる為に立ち上がっていく。ってのが2の始まりだ。


 ヘルトくんたちも頑張ってはいたんだけどね……。

 ヘルトくんは若いってことで侮られがちだった。

 君たちさぁ、圧政を終わらせる為に頑張った英雄に対してその態度ってホンマ!

 人間って難しいね。

 恐怖! 闇深セベリアノもな~んか2にはおらんし。

 1の後日談で『どこかへ去っていった……』とか載せてたせいなんだろうけど。


 これらを踏まえると、ディートリッヒが死ぬと色々やべーってことになる。

 ディートリッヒ自体は民や貴族にも、自分が率いていた兵達にも慕われてた方だった。

 ディートリッヒさえ王になれば……、って耐えてたところもあったからな。

 でも耐えられない人々よって解放軍が出来上がったってワケ。世の中は無情!

 だからディートリッヒが生きていれば、2みたいな地獄は多少なりとも軽減されるんじゃね?


 記憶は色々曖昧だけど、2はいいゲームだったし感動した覚えもある。

 ゲーム部分も好きでめちゃくちゃやりこんだなぁ……、ってそこはいいんだよ。

 俺は今ここに生きていて、ディートリッヒにも生きてもらわなきゃいけない。

 原作崩壊ってやつになるんだろうけど、俺は俺の為に、役割の為にやり遂げるって決めたから。すまんな。


 とにかく! 国の為、俺の為、ディートリッヒには生き残ってほしいんだが、いった通り頑固だ。

 どうにかしなきゃいけないんだが、どう説得するかが鍵ってことなんだけれども……。


 ディートリッヒは『カテリーネ』のことを生かしたいと思っていた。

 色々不明な点はあるけど、多分これは間違いないと思う。

 隣国との戦いの最中で、重大な戦力であるヴァルムントを寄越してまで阻止したんだし?

 そんな妹からの説得なら……、折れ……るのか? 不安しかねえぜ……。

 だから! ヴァルムントくんにも責任とって一緒に説得してもらいましょうね~って俺は思ったんだよ。

 そのヴァルムントくんも頑固 of 頑固なんですけどね~っ!?


 俺自身の持っている手札は色んな意味で碌なもんがない。

 それでも、この手札でどうにかするしかないんだよな。

 俺自身頭いい方じゃないけど、ここは頭をこねくり回して考えに考えないと終わってしまう。

 固定観念ってやつがどーにも取っ払えないんよ……。

 多角的思考ってやつ? 俺それが欲しいんだけど、どこに行っても買えないの! 悲しい!


 なので俺くん! 頑張って必死に考えました!

 俺自身の羞恥心とか、今後とか、ごちゃっと沢山不安はあるけども!

 今ここで踏ん張ってやってやらねえと駄目だから!

 ヴァルムントは責任感あるだろうし、親友のディートリッヒに死んで欲しくはなかっただろうし!

 ヴァルムントと2人がかりでディートリッヒにかかれば、いけるんじゃなかろうか!? 知らんけど!

 ディートリッヒとヴァルムントに仕えてた兵達も、ゲオフさんやカールさんも2人に死んで欲しくないって思ってるだろうから、そういう流れになったら加勢してくれるんじゃないかな!?

 もうどうにでもな〜れ! ってやつだ。

 俺はやるしかねえんだよ。



 馬車が揺れる音とは別に、人が沢山いる時に聞こえてくるザワザワっとした音が聞こえてくるようになった。

 段々と馬車は速度を落としていき、比例するように人の声も大きくなっていく。

 結構近づいたところで馬車は止まってゲオフさんが先立って降り、ラドじいさんは俺を抱えて馬車から降りた。

 カールさんは馬を労ってから降り、こちらについてくる。


 昼下がりのちょっと先にある光景は、ディートリッヒ達が拠点としている場所の入り口付近でにらみ合っている解放軍と少数の帝国軍の面々だ。

 帝国軍の人は大体中にいるっぽい?

 互いになんかしら言い合っているけど、手出しはしてないのが幸いというべきなのかなんなのか。

 ヘルトくんやヴァルムントの姿が見えないから、もう既に戦いが始まっているのかもしれない。

 ……ってあかんやん!! コラコラコラコラーっ!

 俺が来る前に終わってんじゃねーぞ!!


「ラドおじさま……!」

「ああ、分かっておる。ゲオフとカール、話を通してくれ」


 2人は頷いてから帝国軍側に走っていき、ラドじいさんは俺に衝撃が来ないようにしながら走って解放軍側へといく。


「ラド様、何故こちらに!? 待機されているはずでは」

「いいから通してくれ。わしらは行かねばならぬ」


 解放軍の兵達はラドじいさんがここにいることに驚き、そんで俺を見てすっげー困惑してる。

 そりゃそうだよな……。なんで戦場にこんな病弱そうな少女を連れてきてるんだって思うのが普通だもん。


「ええっと、ではそちらの方を我々で預かりますので……」

「この子がいかんでどうする!!」


 おわーっ、じいさん声が大きいよぉ……。一番近いのは俺よ?

 なんか変な言い合いに発展しそうだから、ラドじいさんの腕を叩いて降ろしてもらう。

 解放軍の相手はラドじいさんに任せるぜ!

 つーことで俺はある呪いを唱えながら、そそくさと入り口へと走っていく。

 ……すげーノロノロだけどこれでも走ってる! 走ってるからな!

 病弱儚げ元生贄オッドアイ実は皇子の妹な属性大盛り美少女がお通りよ~! 通しなさ~い!!


 帝国の人達はゲオフさん達の説明を受けたからか、困惑しながらも俺を止めることはない。

 助かる~。後で笑顔のサービスしてあげるからさ!!

 ……ごめん今超適当なこと言った。


 すげーちょっとした距離なのにゼイゼイしながら中に入っていくと、中央でヴァルムントとヘルトくん達が熾烈な戦いってやつを繰り広げている。

 ヘルトくんのメンバーはルチェッテ、ナッハバール、セベリアノ、ジネーヴラ、名前忘れたノリノリのうっざい赤髪の剣士だった。

 ゲームだったのと、ヴァルムント本人が望んだこともあって1対6になってるけど、それはそれとしてどーなん?

 だから途中で帝国兵達が加勢に入ってきて、解放軍との混戦になっちゃうんだけども。


 俺が中に入ってきたことによって、帝国軍の人がギョッとした目で俺を見て止めようとしてきたのを、俺より断然早く走ってきたゲオフさんとカールさんによって止められる。

 ありがとう……それしか言う言葉がみつからない。

 でもちょこ〜っと裏切ることになる。

 ごめんね!! 必要なことだから許してね!!


「り、リーネ姉さん!?」

「……カテリーネ様!?」


 戦ってた面々も俺に気がつき、物凄い動揺している。

 俺は髪の毛バッサバッサさせてるせいで髪の毛食っちゃってるし、呪い唱えながらなせいで息もべらぼうにあがっちゃってるからあんま見て欲しくないんだけどな!

 それでも俺はっ! やり遂げるっ!


 呪いによって俺の胸元は赤く光っている。


 その赤い光を、動揺してたヴァルムント目掛けて放ってやった。


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