止めるのは無理だということ
うひえー、足までおかしくなってら……。
村に戻ると流石にドッと疲れが襲ってきたので、靴だけ脱いで軽く寝た。
んで、夜に起きて風呂入りに着けてるもの脱いでいったらコレよ。
「……え?」
「カテリーネ様……!?」
足の爪先から甲まで手と同じ紫色になっているではありませんか〜!
ううう、どうして……どうして……。おれの美少女たる体がっ!
当たり前にリージーさんからは体調確認されるし、後で侍女さん達にも心配かけてしまった。
足はまぁどうにでも隠せるとはいえ、手についてはいつでも手袋必須だなあ。
普段は手袋つけたくなかったのにぃ!
公的な場くらいでしか着用しとうないよぉ!
えんえん内心で喚きながらも、これがお兄様や周囲の評判に響いたらまずいのでちゃんと着けるつもりだ。
怪奇! 呪われた皇女! って不気味じゃん。
いや本当に呪われてるのかどうかは置いておいてな? そう見られるのは確実だしさ。
幸いって言っていいのか、侍女さん達は怖がらないでいてくれたけど……。
リージーさん達にも言った通り、痛みも体調不良も全くない。
まーじで原因なにこれ? おてて血塗れだったせいで、タイミングが全く分からん。
ヴァルムントくんを変身させちゃった時?
もしくはあのえげつない吐き気の時……は、綺麗な手のままだったからなあ。
吐き気でどうにかなってても、流石に色が変わってたら分かるわ。
後でルチェッテや魔術に詳しそうな兵士さんに聞いてみないと……。
そうして遅い夕食を食べ、ベッドを椅子にしながら部屋にルチェッテと魔術師である兵士さんを呼んで診てもらったのだが。
「……似た症状を知らなくって、わたしには分からないです。力になれなくてごめんなさい……」
「申し訳ございません。私にも解明し難い現象です。帝都に戻れば私よりも詳しい者がおりますので、その時に再びお力になれればと思います」
すごい申し訳なさそうに謝られてしまった……。
この症状は皇族云々からだろうしさぁ、知らないのは仕方ないよ〜。
特にルチェッテが疲れも相まって落ち込みすぎているっぽいので、努めて笑顔で対応をした。
「真剣に診ていただいたのです、感謝の気持ちしかありません。今後もわたくしの力になっていただけたら嬉しいです」
「う、うう、カテリーネさぁあん……! か、カテリーネさんが一番不安なのにぃ……っ! わ、わたしぃ……」
ポロポロ涙を流し始めたルチェッテにびっくりして背中をさすってあげようと思ったのだが、触られたとはいえこの手でしていいのかという考えがよぎり、中途半端なところで手が止まってしまった。
それを見ていたルチェッテがもっと泣きながらおれに抱きついてくる。
「わたしは怖くないですっ! わたしが、わたしが絶対に治してみせるんだから〜っ!!」
結果的にルチェッテをもっと泣かせてしまった。
ち、ちが、お、おれはそんなつもりでは……!!
あわあわしながら抱きしめ返し、ルチェッテが落ち着くまで背中をさすってあげるのだった。
◆
ルチェッテ達が退室し、おれの寝る準備を侍女さん達が整えて退出していく。
おれは一回寝てたのもあって中々眠れず、ベッドの上で毛布を膝にかけた状態で体育座りをしていたら、同じく寝る準備のできたヴァルムントが入ってきた。
「失礼いたします」
どうにも今まで兵士さん達と色々と話し合いとか諸々をしまくってたんだとか。
そりゃぁそうだよね……。
あの赤くてデカい魔術師だったりエイデクゥだったりヴァルムント自身のことだったりおれのことだったりと、いくら話しても足りないのが簡単に想像できる。
戦いも話し合いもしたヴァルムントが一番お疲れのはずなのに、いたっていつも通りな様子に見えた。
おれの前だから虚勢張ってたりする? それならやめてほしいなぁ。
近づいてきたヴァルムントに首を傾げながら質問を飛ばす。
「ヴァルムント様、お疲れではございませんか?」
「問題ございません、お気遣いいただきありがとうございます。私のことよりも、カテリーネ様のご体調が心配です」
「わたくしは元気です。先程一度眠りましたので、眠れないくらいには……」
ほんのり微笑んで元気だよ〜アピールをしておいた。
……てか、これから足も手同じ症状出ちゃってたよ〜って話さなきゃいけないんだったわ。
足についてはおれからヴァルムントくんに話すって言ったとはいえ、絶対深刻な表情させるのが見えすぎててなぁ。
でも話さないといつ話すんだってことになるから、う〜んとなりつつも話を始めていく。
「ですが、ひとつお伝えしなければならないことがあるのです」
「……どうされたのですか?」
下半身にかけていた毛布をとり、手を足の方へと伸ばして視線を誘導すると、ヴァルムントの息を呑む音が耳に届いた。
「実は、足も手と同じ症状が出ていたのです。勿論、痛みはないのです!」
「カテリーネ様……。私の力が及ばず、申し訳ございません」
だからやめろっつーの! 君達のせいじゃない!
おれのせいかもしれないし、これから解明するのを頑張ればいいんだからさ!
まったくも〜! みんな責任感が強いのはいいけども〜ちょい気楽にしてほしいわ!
話でも逸らしてやればいいんか、あぁん!?
それならそうと、気になってたのがあるので早速聞いてみることにした。
「それよりもヴァルムント様、……あの、狼への変化する兆候はございますか?」
恐らくおれとヴァルムントくんを繋ぐ呪いのせいで変化したんだと思うんだが、その辺ヴァルムント側だとどうなってるの?
変身のきっかけや解除のきっかけが掴めてないと大変なのでは?
興味深々すぎるのを抑えながらも聞いてみると、ヴァルムントは一度斜め下を見て考え込んでから顔をおれに向き直して答えた。
「狼へと変化する契機は掴めておりませんが……、解除については分かりました」
ヴァルムントは更におれへと近づき、おれの左手を手にとって自身の口元へと持っていって、紫色に染まった指先に口付けをひとつ落とした。
「簡単なことだったのです。力み過ぎて複雑に考え過ぎた為に気付けなかっただけでした」
力強い眼差しでおれを見つめ続けるヴァルムントの瞳に、おれは釘付けとなって動くことができないでいると、おれの左手を両手で包みながらこう言ってきたのだ。
「貴方への最初の口付けは、私から行うべきだと思った衝動から気付けたのです」
そう言われてしまって、……ああ、もうこれはどう言ってもヴァルムントはヴァルムントだから止まらないんだなぁと、悟ることしかできないのであった。
これでこの章は終了です。
ここまで読んでいただき誠にありがとうございました!
お話がよかったと思っていただけましたら、感想やリアクション、評価などしていただけると大変励みになります!
外部サイトやTwitter(現X)での反応もとても嬉しいです!
次回はいつも通り幕間となります。




