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14話


 ま〜〜〜〜〜〜〜〜た失敗した!!

 ありえんありえんありえんありえん! クソクソクソクソクソ!!


 ……いや、そもそも俺が記憶違いしてたのがダメだったんだわ……。

 うぎぎぎぎとしながら、今日も今日とて真昼間なのにベッドの上で横たわってる。

 部屋の外には兵士が巡回するようになってるしよぉ……。

 つ、詰んでる〜〜!!


 ◆


 私、カテリーネ17歳! 黒龍の巫女をやってるの!

 黒龍の生贄として死んだはずなのに、何故か生き残っちゃった! ど〜なってるの〜!?


 ……じゃねえんだよ、おい!! おかしいだろ!!


 なーんか気がついたらめっちゃ体の節々が痛いし、絶賛大セールといわんばかりに体調不良を訴えかけてきてるし、本拠地にいる看護婦のゼリンダさんがそばにいるし、駆けつけたヘルトくんからあなたは助かったし黒龍も倒されましたよ報告されるし。


 オイオイオイオイ、なんで俺は生き残ってんの!?

 そんでもってヴァルムントの野郎、黒龍討伐しやがったな!?

 バカバカバカバカバカバカ! 黒龍倒されたら2でのヘルトくんとルチェッテのあの切ないシーンがなくなるやろがい!!

 あの日倒せていればリーネ姉さんは犠牲にならなくて済んだのに……って、黄昏る大人になったヘルトくんをルチェッテが慰めるシーンがあるんだよ。

 あのヘルトくんたまんねーのにさあ……。おいヴァルムント貴様。

 ……そもそも俺が生き残ってるからそんな話は立ち消えてるのか。俺がノイズじゃん!?

 すげー儚く散ったつもりだったのに生きてるの恥ずかしすぎるし、マジで生き恥でしかねえ……。


 しばらく俺は生き残っていた事実に気持ちが死んでた。

 魂抜けてる状態だったって言ってもいいと思う。

 そのせいで話しかけられてもイマイチ耳に入ってこなくってですねえ。

 特にラドじいさんには非常に申し訳ないとは思ってる……。真面目に心が痛い。

 でもさ、これ以上仲良くなるのもさ、申し訳ないじゃん? 俺いなくなる予定だし。

 いや〜だってさあ。本当にさ、俺はあの瞬間に死ぬ為だけに生きてたんだぜ?

 それ以降どう生きるかなんて全く考えてなかったから、あんまりこの先についてどう展開していくのか具体的に覚えてないよ……。

 好きなシーンとか、大体こんな感じってのしか覚えてない。

 そんなんだからまた失敗したんすけどね! ゔっ!


 そう。どうしようもなくなった俺は、仕方ねーので次の手を考えたんだ。


 そもそもの話なんだが、死ねなかったからと言って自殺はしない。

 俺は何かを成した結果で死にたかったの。

 今の俺の状態どんなか分かります?

 ただの穀潰し無職で、ろくに体も動かねえ! 終わってる!

 こんなん日本にいた時とほぼ変わらねえじゃねーか!


 はーいやだいやだ、そんなの許せねえ。

 絶対に俺は! 何かを成してから死ぬ!

 てなことで、すげーうろ覚えになってる原作知識を引っ張り出してきた。


 ええーっと、確か本拠地に襲撃イベントがなかったっけ?

 なんか……、どっか予想外のところから侵入して思わぬ打撃を受けるやつ。

 どういう理由だったかすっかり忘れたけど、そのせいで助力が欲しい! みたいな展開になったはず。

 うへえ、マジであんまり覚えてねえ。


 えとえとえーっと、……それを俺が見つけてやればいいんじゃね?

 魔法なら多分使えるし、襲撃犯達を俺が拘束しようとして、その結果殺されるんなら……いいんじゃないか!?

 なんか迷走してる気がしないでもないけど、今の俺にはこれしかねえ! やぁってやるぜ!!


 そんなこんなで、俺はこの部屋に来る人達の隙をついて拠点内を歩き回るようになった。

 体がイカれてるせいであんまし動き回れないから、すぐに見つかって送還されちゃうんだけどな。

 歩き回るの新鮮だからやらせてくれよ〜。


 俺が寝てる部屋は、よくラドじいさんが座ってる椅子とテーブル、看護婦のゼリンダさんが「安らぎますように〜」と置いたお花、すぐに看護できるようにと必要な医療品の入ったキャビネット、あとは着替えを収納してる棚くらいしかない。

 花以外寂しい部屋だけど、そもそも俺がそんな動けんから物増やしてもな状態なのである。

 ラドじいさんからは何か欲しいのはないかってよく聞かれるけど、マジでなんもねーし……。


 料理とか食材についての本を読むのは好きだったけど、今はそんな食べらんねーから読んでもなあってやつ。

 いや、ちゃんと食事は出てるよ!?

 村で食べるものとは色々違うし、味付けもされてるから嬉しいんだけどさ!

 他人の作ってくれる飯は美味い!!

 でも病人だからあんまり大したものはでないし、基本ローテだから飽きてきて泣く。

 折角村の外に出たのに、お菓子とかも食えねー状態だから余計に泣いた。

 いくら自業自得の結果とはいえ、俺悲しいよ……。

 

 っと、この話はおいといて。

 のろのろながらも歩き回っていた俺は、仲間キャラを見かけることができたんだよな。

 いっちばん覚えていたイットーこと、一刀斎がいた。

 こいつはゴクトー出身のキャラで、なんか人気になっちゃったから2でのメインキャラの1人なった。

 記憶喪失になったせいで侍なのに忍者を名乗ってる。なんでやねん。

 最初NPCとしてでてくるもんだから、経験値泥棒しやがるんだよな〜!! は〜なつかし。


 あとはエルフのお高く止まってるねーちゃんだとか、擬虫族のおっさんだとか、夢見る鍛治師のドワーフっ子だとか、詐欺できてない詐欺師だとか、まあ沢山いた。

 名前は忘れた。

 イットーが濃すぎるだけだから!

 後数人くらいは覚えてるから……。


 歩き回って戻されて歩き回って戻されてを繰り返しながら、俺は拠点の一角にあった庭に辿り着いて思い出した。

 この庭の像の下に隠し通路があるってことを!!

 そーだよそーだよ! ここだよ!

 現実とゲーム画面は違うから中々ピンとこなかったけど、この龍の像見て思い出したわ〜!!


 ゲームで拠点をいじる際に本拠地の銅像を変えることができるんだけど、赤い龍にできたり、ゲーム会社のマスコットのピンキーな豚に変えることができたり、ヘルトくんの銅像に変えることができたりしたんだよなあ!

 ちな、ヘルトくんの銅像に変えるとナルシストの称号が貰えたりする。

 本編考えるとそんなんじゃないのに、プレイヤーによってナルシストにされるヘルトくんかわいそ……。


 それから俺は行ける時に庭へと行った。

 部屋に戻される確率は高いけれど、今の俺にはこれしかないから頑張ったよ……。

 運動にもなるからいいじゃんほっといてくれや。

 おかげでそこそこ体力戻ってきた気がするし。


 ついでに庭にいた時、関西弁の男と苦労してそうな男がなんか話しかけてきて、どこへでも馬で連れて行ってあげるよ〜! と言ってきた。

 関西弁の人って確かアレだ、海辺で栄えてる街がそういう方言になってるって設定だった……はず。

 いざとなったらこの人達に頼ってみるのもありかもしれねえって思って、覚えておきますって言っておいた。

 その二人がよこしまなことを考えてても1人や2人、魔法でなんとかなるって。

 ……お前、俺との約束を絶対忘れるんじゃねーぞ!


 そんなこんなで行ける時には庭に行くようになってからそこそこ経った後、真夜中に事件が勃発した。

 眠ってんのになんか外がうるせーなーって思って起きたら、部屋のすぐ側で戦闘が起こってたっぽい。

 ドンパチがおさまってからラドじいさんの声が聞こえて、兵士を呼んでいるようだった。

 な、何事……って思いながら様子を伺ってたら、ラドじいさんが部屋の中に入ってくる。

 怒りで上がった息を必死で抑えようとしてるのか、深呼吸をしつつ俺へと近寄ってきた。


「……ラド、おじさま……?」

「おお、すまないカテリーネ。起こしてしまったか。……不届者がおってな。わしが成敗してやったところだ。安心して寝ておくれ」


 ラドじいさんは俺を撫でようとしたが、自分で伸ばした手を見てやめてしまった。

 うん? なに?


「……おやすみ、カテリーネ」


 ぎこちない笑顔を浮かべて、ラドじいさんは去っていってしまった。

 意味深がすぎるぞ……。

 中途半端に起こされたのもあって、俺はすぐに寝ることができた。


 で、朝に起きて気がついた。

 アレが襲撃イベントだったんじゃないの!? って!!

 あ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!

 俺のバカバカバカバカ!!

 なんっで日の昇ってる時だと思ってたの? 普通襲撃くるなら夜だよな!?

 バカなの? 死ぬの? 死にたい!

 ……あれ? いやでもゲームのイベントの時、夜じゃなかったような……?

 うごごご記憶が頼りになんねえ!!

 なんか別のゲームの記憶とでも混ざってるのか!?


 しかも襲撃イベントがあったせいで、本拠地の守りが確固たるものになってしまった。

 俺は気軽に外も出れなくなったし、お、終わりじゃ……。


 俺、これからどうすればいいんだよぉ!

 流石にこれ以上、ラドじいさんとかヘルトくんとかルチェッテとかゼリンダさんとか医者のブラッツさんとかたまにくるジネーヴラを無視するのは心が痛いんだが?

 勘弁してくれよ……。これ以上穀潰しとして迷惑かけたくないんだよ俺。


 あ〜どうしようどうしようと悩んでいる間に時は流れていき、ヘルトくん達は皇帝への最終決戦(最終決戦ではない)に挑みにいくフェーズに入ったらしい。

 ヘルトくんとルチェッテが決意満々! といった表情で俺の部屋に入ってきた。


「リーネ姉さん」

「……どう、しましたか」

「カテリーネさん。……わたしたち、頑張るから。自分の為、みんなの為……、そして、あなたの為に」

「必ず、必ず皇帝を倒してくる。リーネ姉さんを利用したこと、絶対に後悔させてみせるから! だから、だから……」


 お、俺にそんな決意言われても。全然皇帝のことなんて気にしてないし。

 でも2人とも無事に帰ってきて欲しい気持ちは本当だから、祈っておくぜ!


「……みなさまが、お二人が、無事に帰還されるよう、お祈りいたします」

「姉さん……!」


 手を伸ばして2人の手をギュッと握る。

 伸ばしきれなくて逆に2人から手を取られたのは秘密な!

 そうして2人とほとんどの主力は旅立って行き、帝都に進撃していった。

 でもなんかあったらいけないからってことで、最低限の人数はいるしラドじいさんもここにいる。

 外には相変わらず出れない。

 ひ、暇だよ〜およよ……。これからどうすれば……。


 ヘルトくん達が出て行って二週間以上が経った。

 いつも通り何もやれることがなくボケーッとしていたら、外が騒がしくなっていくのが聞こえる。

 全員戻ってきた? にしては早すぎるし、そこまで人が戻ってきてる感じはしないし。

 なんなんだーって思っているとバタバタと近づいてくる音がし、近くに待機している兵士に声掛けが入った。

 そうして入ってきたのは、ここに来てから一度も会ったことがないセベリアノだ。


「や、久しぶり〜。ちょっと失礼するね〜?」


 その入ってきたセベリアノの顔は笑顔なのに、なんか怖かった。


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