15
おれが村にいた頃、婆様の代わりとして近くの街に行ったことはある。
でもたったの数回だけだったから、あんまり周辺について覚えている訳じゃない。
だから馬車の窓からの景色を見ても、そんなに戻ってきたな〜って感じがしなかった。
なのに段々体がそわそわ……っとし始めている。
これが帰ってきた感覚ってやつなのかなー?
日本の時にこういう感覚あったっ……、け、──……。
……ん? ……何考えたっけ? まぁいっか。
村には調査と警備の為に何人かの兵士さんが駐在しているらしい。
とはいえ村の入り口に立っている訳ではないので、村の人達を必要以上に警戒させない為にラドおじさまが頭になって村へと進んでる。
そうしてよく覚えている村の入り口が見えてきて、ああ……って感慨深い気持ちが溢れかえってきた。
村から離れてそこまで経っていないはずなのに、こんな気持ちになるもんなんだなぁ。
ラドおじさまとヴァルムント達が村へと入っていくと同じく、村の横へとその他の兵士さん達が移動していく。
村に兵士さん全員は入れないからテントを立てたりする人達で、おれの乗っている馬車はそのまま村へと移動する。
先に入っていたラドおじさまとヴァルムント達は馬から降り、馬を他の兵士さんに預けてから迎えにきた駐在の兵士さん達と話をしていた。
村の人達もなんだなんだと様子を見に来ていて、ラドおじさまに話しかけている。
見慣れた光景に胸がじんわりとしていると、馬車が止まってようやく降りられる状態になった。
一度話を切り上げたヴァルムントが馬車へと近寄ってきて扉を開け、おれに手を差し出してくる。
「カテリーネ様、お手を」
「はい」
そのまま手を取って降りると、駐在の兵士さん達は目を見張っておれを見ている一方で、村の人達は笑顔を弾けとばして近寄ってきた。
「カテリーネちゃん!」
「カテリーネ様!」
「カテリーネ……!!」
「おじさま、おばさま……!」
仕方ないとはいえ村の人達は兵士さん達に近寄るのをブロックされてしまったが、おれはその代わりに精一杯の笑顔を返す。
行かせろと言ってくる村の人達に兵士さんやリージーさんとユッタ以外の侍女さん達が説明をしながらボディチェックをし、真っ先に終わったベアニーおばさまがおれに近寄ってくる。
「カテリーネちゃん!」
「ベアニーおばさま! お元気そうでなによりです」
「アタシはそりゃ元気さ! まぁまぁまぁまぁ! こんなに綺麗になって……!」
おれの頬をふにんふにんと触り始めたのを見て、隣にいるヴァルムントくんがおばさまを止めようと動きかけたのを制止する。
別に攻撃でもなんでもないから! これくらい許して!
……てか、おばさまが肉付きを確認するかのように顔を触ってるってことは、もっ、もしかして、おれって村にいた時より太ってたりする!?
おれ美少女なのに!?!? 美少女維持できてなかった!?!?
「お、おばさま、わっ、わたくしの顔に何が……」
「あのねえ、カテリーネちゃん。ここにいた時のアナタはとっても細かったのよ〜。折れちゃわないか心配でねぇ。けど今はいい食事を取れているって分かる可愛いお顔になっているじゃないかい」
良かった良かったと、おれをめいっぱい抱きしめてきたベアニーおばさまを抱きしめ返す。
おれは村にいた時、こっそりラドおじさまや村の人達から食事を多めに分けてもらったり、勝手に山からの恵みをこっそり食べたりしていた。
だからそれなりに食事は取れてると思ってたんだけど、そうじゃなかった……?
い、いや、真面目に太ってる可能性は全然あるぞ。お兄様とおれで食事好き勝手しがちだし、結構おやつだったりなんなり食べる口実多くなってるし。
周りはおれが太ってても絶対に指摘はできないからな!!
やばいやばい、ちゃんと鏡を見直さなきゃ……!
「それもこれも旦那のお陰だねえ! 一目見た時からいい男だとは思ったんだよ〜。本当にカテリーネちゃんに見合う男の人じゃないかい! 幸せになったからだねえ!」
まっ、まだ旦那じゃないって!
どどどどうして結婚もしてないのに旦那扱いしてくる人が多いのかなぁ!?
村の人達にちゃんと現状を説明したんだよね!? おれそう聞いてたんだけども!?
「おっ、おばさま、わたくし達はまだ婚約状態で……!」
「変わんない変わんない!」
変わるよぉ!
今度こそ止めろとヴァルムントくんに顔を向けたら、ヴァルムントくんは口を真一文字に結んでほんの〜り頬を赤くしていた。
コラッ! 照れるな!! まだ違うんだから否定しろっ!!
近くにいる護衛二人もリージーさんもルチェッテも目を笑わせてるんじゃありません!
ラドおじさまも頷いてそのまんまにしないでぇ!
あれ? って顔してるユッタだけが癒しだ……。
そうやってまごついている間に次の人が来て、ベアニーおばさまは一旦離れてくれた。
けど顔はニッコニコであからさまなままだ。だからまだ違うんだって!
その後も概ね似たようなやり取りが発生して、嬉しいやら恥ずかしいやらで感情がごちゃ混ぜになっていたのだった。




